皆さんこんにちは!
愛媛県西条は、霊峰石鎚山系からの名水がどこかしこに湧く水の都。 その恵まれた天然水で栽培される美味しいお米。
そんな恵まれた自然環境にある『成龍(せいりょう)酒造』さんが醸す『成龍然』は、故郷をイメージした新ブランドなんです。
さて『成龍然/あきふかし』、一体どんな味わいなんでしょうか?
『成龍然/あきふかし』は落ち着いた熟成感につつまれ、軽やかで優しい
特徴1 石鎚山系の弱軟水の伏流水で仕込まれる
愛媛県西条は、全国に知られた湧水のまち。 石鎚山系の麓にあって、パイプを打ち込めば地下水が自噴することから『うちぬき』と呼ばれ、名水百選に選ばれています。
『成龍酒造』さんは西条駅あたりの自噴地帯から少し離れているものの、蔵内の50メートルの深井戸から、石鎚山系の伏流水が自噴しています。
やはり良い酒を醸すには、清冽な奥深い伏流水に拘りがあるようですね。 石鎚山地は急峻で川は短く、雨水は一気に海に行くためなのでしょうか。
酒蔵のある周布地区の地下水硬度は61(西条市HPより)ですので水質は弱軟水。 井戸は2本あって、仕込水と作業用に分けているそうです。
《原料米》愛媛西条産『松山三井』100%
《精米歩合》60%
《酵母》愛媛酵母EK-1
《日本酒度》-4 《酸度》1.6
《アルコール度》15.5度
《造り》特別純米原酒/火入れ
《お値段》720 ml 1650円
《製造》2021年9月
特徴2 酒米はなんと普通米の『松山三井』で、淡麗辛口に仕上がる
酒米は地元西条産の『松山三井』。 特にこの『成龍然』は、愛する故郷西条をテーマとしていますので、他の地区のものは使われていません。
『松山三井』は愛媛県開発の普通米で、70年もの間愛媛県の奨励品種となっています。 あのコシヒカリが昭和31年生まれなら、こちらはなんと昭和28年生まれの大ベテランなんです。
ところでこのお米が酒米に使用されるようになったのは、粒が大きくてタンパク質が少ない特徴を持っているからです。
山田錦と比べてもタンパク質が少なく吸水速度は緩やか、そして砕けにくいなどの長所から、愛媛県内外の酒蔵で使われています。
その酒質はキレのある『淡麗辛口』となる特徴があり、この『成龍然 /あきふかし』もスッキリと優しい落ち着いた飲み口に仕上がっています。
また『成龍然/あきふかし』の酵母には、『吟醸香が高くすっきりした味わい』となる愛媛オリジナルの『EK-1』が使用されています。
『EK-1』はアルコール耐性が弱く吟醸酒造りに向いており、 度数を上げて搾る純米酒や本醸造などには向かないそうです。
でもこの『EK-1』のお陰で、全国新酒品評会での愛媛県の金賞受賞が増え、それまでの2、3蔵から一気に2桁に躍進したそうですよ。
成龍ブランドは、故郷をテーマにした新ブランド
『成龍酒造』のメインブランドは皆さんよくご存じの『伊予賀儀屋』で、食との相性がテーマ。 それに対して、この『成龍然』のテーマは故郷なんだとか。
愛する故郷のありのままの自然を表現すべく、西条で穫れた米と四国山地からの仕込み水で、2020年10月に立ち上げられたブランドです。
ここ西条は、0mの海から2000メートル級の石鎚山頂までの垂直パノラマは、信州や富山のような雄大なスケールを感じさせるね! 酒質もその風景を感じさせ『スッキリ爽やか』だ!
通年販売される商品名は『The Plains』。 2つの異なる水系(中山川&加茂川)が形成する豊かな周桑平野と西条平野をイメージしたそうです。
そして2021年3月からは『四季おりおり』シリーズが発売され、この『あきふかし』はその秋バージョン。 では、その特徴をまとめてみました。
成龍然シリーズ | 特 徴 |
通年:The Plains | 地元西条で獲れたお米、水、人だけから生まれた故郷をギュッと凝縮したテロワール酒。2つの平野でとれた米と水で醸しそして融合、氷点貯蔵による熟成した爽快な仕上り。 |
春:うららか/麗 | エネルギッシュで生命力のある旨味、上品なやや甘口タイプです。 |
夏:すすかぜ/涼 | 春のうららか同様四段仕込み採用し、 15%の低アルコール原酒で、爽快な生にごり酒。 |
秋:あきふかし/穣 | 晩秋の落ち着いた物静か雰囲気をイメージした、穏やかながら深みのある旨味が特徴です。 |
冬:ぎんせかい/凛 | 凛とした静かな雪化粧を思わすかのような、真っ白なにごり酒でリリース予定。 |
また来年の秋には、今年栽培された農薬・肥料不使用の『自然栽培米』を使用した『成龍然』が発売される予定で、どんな味わいとなるか今から楽しみですね。
愛媛の日本酒『成龍然/あきふかし』と今夜の肴
愛媛県は東予、中予、そして南予と広いのですが、どの地域もグルメの王様は『鯛』。
鯛は、天然ものでも一年中取れますし、ましてや養殖も盛んな地域ですので、どこを巡っても『鯛料理』がいただけます。
鯛はまさにお魚の王様、生のお刺身でもカルパッチョでも、煮物や焼き物など色んな料理が可能ですね。
今夜は、トマトのスライスの上に透き通った鯛の身を乗せてみました。
『成龍酒造』の紹介
『成龍酒造』さんの前身『鍵屋本家』は、地元庄屋の米蔵の鍵を預かる家業。 庄屋制度廃止に伴い初代蔵元首藤鹿之助が1877年に酒造業を始めたそうです。
ところで成龍酒造さんの名前『成』には、職人さんが力を合わせて全ての人々に幸せをお届けできる蔵元になりたい、との想いが込められているとか。
そんな酒造りに携わるのは次期蔵元で長男の英知さん、次男の敏孝さん、杜氏の織田(おりた)さん。 この辺りの酒蔵同様、小規模の家族経営の酒蔵なんです。
杜氏の織田和明さんは、地元西条市の出身。 東京農業大学醸造学科を卒業後成龍酒造に蔵入り、現在は常務取締役を兼ねておられます。
次男の敏孝さんも東京農大卒業、2006年の蔵入りから織田杜氏の下で黙々と酒造りを学び、特定の銘柄を責任仕込みするなど腕を上げています。
一方、次期蔵元長男の英友さんは山口県の大学を卒業後、東京で働いたのち2006年に帰蔵。 外の空気を吸って故郷や日本酒の良さに気付かされ、今は酒蔵の運営をぐいぐい引っ張っています。
『成龍酒造』さんの100年以上続く仕込み蔵にはサーマルタンクはあるものの、空調設備がありません。 ゆえに温度管理は必須、当然ながら丁寧な手作業が続きます。
まさに地域の自然の中での酒造りが行われており、仕込時期は石鎚おろしが吹き始める12月から3月いっぱいで、4か月間は休みなしで行われます。
豊かに溢れるうちぬきの名水のもと、故郷への愛着と伝統文化の日本酒を醸すプライドを持ち、そして家族と家業を守ることの自負が彼らの胸にはあります。
まとめ
『成龍然』のラベルは、酒蔵から見える霊峰石鎚山を象ったデザインとなっています。
蔵人の皆さんが幼いころから見続けた風景と空気感が、そのシンプルな形と透明感のある落ち着いた酒質に溶け込でいるのでしょうか。
ところで『田舎暮らしの本』(2021.2月号)「2021年 住みたい田舎ベストランキング」において、愛媛西条市が全部門で全国1位に選ばれています。
筆者に、50年前に過ごした愛媛の青春時代を思い起こさせてくれた『成龍然』。 悩みにもならないようなブルーな心模様を、愛媛の自然は優しく見守ってくれました。
石鎚の山はもう紅葉を迎え、そしてまもなく霧氷と降雪の季節となります。 そして、麓の酒蔵は寒造りの季節を迎え忙しくなりそうです。
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。