日本酒ファンの皆さんこんにちは!
先月3年ぶりに開かれた日本酒造組合中央会主催の『日本酒フェア2022』に行ってきました。
全国からの銘酒が各県ごとのブースで、試飲及び一部購入が可能なまさに日本酒ファン待望のイベントが復活したのです。
限られた時間でしたが、ありましたよ魅惑的なお酒が! それが今回ご紹介する千葉県はいすみ市の『木戸泉アフス』です。
さて『木戸泉アフス』、一体どんな味わいなんでしょうか?
『木戸泉アフス』の酸味の強い濃厚な味わいは他にない個性
ワイン好きには是非とも飲んでほしい甘みと酸味豊かな味わい
『木戸泉酒造』さんの仕込水は、夷隅川水系の中硬水の井戸水です。 ミネラル豊富な水は高温山廃仕込みには相性抜群で、酒母・もろみが元気よく発酵するそうです。
酒米は表示されていませんが、蔵元も栽培に力を入れている地元千葉産の酒米です。
また麹は麹屋さんに無農薬の玄米を送って、昔からある何も操作されていない麹を生やしてもらっているそうです。 安全にこだわっていますね!
《原料米》千葉県産米100%
《精米歩合》65%
《酵母》-
《日本酒度》- 《酸度》-
《アルコール度》15度
《造り》火入れ原酒
《お値段》500 ml 1980円
《製造》2022年6月
独自の一段仕込みと天然・無添加で、乳酸由来の酸味が食欲をそそる
このお酒の醸造方法は、蔵棲みの乳酸菌を使用して高温で酒母を仕込む『高温山廃酛』の方法を採用しています。
酒母を、蒸し米と麹米、糖化に最適な55度前後の仕込み水を混ぜ合わせて仕込み、温度と乳酸発酵で得た乳酸が雑菌を死滅するため添加物は必要ありません。
続いて、通常は3回に分けて米麹・掛米が投入される仕込みを、一度に全て入れて仕込む『一段仕込み』という方法で仕込まれます。
これによって甘味と酸味が強調され、日本酒とは思えない味わいに仕上がっています。 しっかりしたコクとふくらみのあるボディ、乳酸由来の酸味が食欲をそそる食中酒ですね。
ちなみに酒名『アフスafs』とは、酒造り技術の確立に携わった3名の頭文字に由来しています。
Aは安達源右衛門さん:新潟県住乃井酒造の先々代社長、Fは古川董さん:初代千葉県醸造試験場、Sは荘司勇さん:3代目蔵元です。
今まで経験したことのない味わい! 白麹やワイン酵母なんかよりももっと酸っぱくて、お酒を飲まないカミさんに一口含ませた感想は『梅酢』!!
木戸泉酒造のラインナップ紹介
『木戸泉酒造』さんのお酒は熟成を前提としたコクと深みのある味わいが特徴で、ズバリ『濃淳旨口』。
特徴の一つ目が、天然の乳酸菌を使って高温で酒母を仕込む『高温山廃酛』という珍しい醸造方法。
そして2つ目は、無農薬・無化学肥料の原料米を使い、さらには製造時の添加物を一切使わない自然醸造酒をラインナップしています。
そして3つ目は、業界でも認知度の低い熟成酒・古酒に早くから着目した酒造りを進めておられることです。
ここでは、簡単に各シリーズの特徴を紹介します。
シリーズ | 特 徴 |
定番酒 | 伝統的な醸造方法である高温山廃仕込みで造られる。お米の旨味や乳酸菌の酸味、そして高温山廃仕込みならではのキレが感じられる。一番人気は『純米醍醐』。 |
アフス(afs) | 原料の仕込みを1回にまとめて行う『一段仕込み製法』で造られ、その分加水の回数が減り濃厚多酸な味わいとなる。生酒、火入れ、スパークリング、貴醸酒などがある。 |
自然栽培米 | 3代目から受け継がれる、農薬や化学肥料を一切使わずに造った100%自然醸造のお酒。『自然舞』は、やや辛口よりでキレのある味わい。 |
古酒 | 美しい琥珀色の見た目と甘味のある濃厚な味わいが特徴。1974年製造の『ヴィンテージ古酒 玉響』は1本22,000円(200ml)。 |
『木戸泉アフス』と今夜の肴
いすみ市は、温暖な気候に風光明媚で豊かな自然環境が今も残り、初夏にはゲンジホタルも飛び交います。
また海水浴や日曜朝市などは、多くの観光客で賑わいを見せます。 海や山の自然満載の食材は、そこに訪れる人を満足させています。
大原でとれる豪勢な伊勢海老もいいですが、酸味あふれる『木戸泉アフス』に合わせて、今夜は餃子で乾杯です。
『木戸泉酒造』の紹介
『木戸泉酒造』さんがあるのは、九十九里浜の南大原の港町。 『泉藤』の商号で酒造りを始めたのが1879年(明治12年)、後に『木戸泉』と改めます。
戦前の1939年、3代目荘司勇氏は27歳の若さで家業を引継ぎ、酒造業に専念することとなります。
そして高度成長期を迎えようとする時、勇氏は大きな決断をします。 それは防腐剤に頼らなくとも安全で、より長期貯蔵が可能な酒造りでした。
まず1956年に『高温山廃酛』仕込みによる酒母づくりを開発し、長期熟成に耐えうる古酒の開発に成功します。
そして67年には、より安全・安心な無農薬・無肥料の自然農法米100%で仕込んだ自然醸造酒を始めています。
さらに72年には、酸と旨味がしっかりし熟成に耐えうる酒『アフス』を発売します。 試行錯誤の末、他に類を見ない濃厚多酸酒の開発を成し遂げたのです。
さて、そんな伝統を引き継ぐのが5代目蔵元杜氏の荘司勇人さん。 先代が古酒の普及に力を入れてきたことを継承し、今は古酒の価値を高めることに専心しています。
2019年には『刻SAKE(ときさけ)協会』に加盟し、熟成酒の価値を世界に向けて発信しています。
そしてSAKEの国際化も視野に入れて外国人広報を迎え入れ、アフスの樽熟成や貴譲酒など、新たな商品展開を進めています。
『刻SAKE(ときさけ)協会』の他にも『長期熟成酒研究会』があるね。 こちらは、酒蔵さんに加えて小売店さんも参加しており、双方の蔵内で熟成を深めながら、愛飲家の登場を待ち続けているよ!
まとめ
江戸期まであった熟成酒が姿を消したのは、明治期の酒税制度が大きく影響しています。 ビールやワインは免税とする一方で、日本酒には厳しい造石税を課したのです。
つまり造った段階での課税であり、税務官吏たちの厳しい検査もありました。 酒蔵は1日でも早く酒を売り切ろうとし、何年間も貯蔵・熟成させる発想はついえたのです。
国の租税収入割合で、酒税は明治11年時点で12.3%だったのが、明治32年には地租の35.6%を上回る38.8%にまで達します。 原因はまさに、日清・日露戦争でした。
時代に翻弄される日本酒も今では倉出税となり、5年物や10年物、最近では30、40年物も見かけます。
そんな熟成酒にも貯蔵の温度などによって、色合いや味わいにも変化があるそうです。 低温熟成の場合は透明感を維持し、常温熟成は琥珀色に変化するとか。
ちなみにこの『アフス原酒』も家庭内の涼しい処で熟成可能となっていますので、毎年買い揃えて味わいと色の変化を楽しむのもいいのでは?
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。 今回も最後までお読みいただきありがとうございます。