日本酒フアンの皆さんこんにちは!
春たけなわの奈良県を旅行し、残念ながら酒蔵見学はコロナ禍にあって叶わなかったのですが、今の奈良酒をリードする『風の森』と最近ブレイク中の『KURAMOTO』をゲットしてきました。
さて今回は、まず油長酒造さんの『風の森 秋津穂657』と『風の森 ALPHA1』を紹介します。
実は昨年、角館と弘前の花見酒紀行で秋田駅前の『永楽』さんで3杯の利き酒セットを頂いたのですが、味がよく分からなったので今回再挑戦です。
さて今回の『風の森』、一体どんな味わいなんでしょうか?
なお昨年の酒旅の紹介記事はこちらです。
『風の森』のこだわりの味わいは、生酒ゆえに時間軸の変化で2度楽しめる
造りは7号系酵母+長期低温発酵で醸し、無濾過無加水生酒で仕上げる
日本酒発祥の地・奈良にあって、『油長酒造』さんでは伝統の銘柄『鷹長』で奈良の寺院が確立した奈良酒の伝統技術『菩提酛』を継承しています。
一方こちらの『風の森』では、現代の技術を取り入れて今までにはない魅力を創造し、新たな伝統を作り上げるのだそうです。
さて造りの特徴の一つ目は、醪の長期低温発酵。 独自設計の低温タンクで発酵の速度を緩やかにし、透明感がありながらも深い味わいを醸し出しています。
そして2つ目の特徴は、低精白米を用いてお米の持つ個性を生かし、立体感のある味わいを表現しています。
低精白米は溶けにくいため強い麹を使ったり、ウルトラファインバブル水による洗米をすることで糠の洗浄性を高めて、発酵のコントロールを行っています。
3つ目は、穏やかな香気を生む7号系酵母のみを使用。 強力な発酵力と豊富な有機酸を産出し、風の森の果実感溢れる酸味と香気を形成しているそうです。
4つ目は、無濾過・無加水・生酒に特化していることです。 火落菌などの検査や酸化を防ぐ瓶詰方法を採用し、クリーンルームでの極低温管理が徹底されています。
最後の5つ目は、造りの体制は4季醸造で行われています。 これらにより生酒による豊かで滑らかな質感、時間の経過による繊細な味の変化が楽しめるのです。
『風の森 秋津穂657』は地元の飯米を使いながらハイレベルな酒質
仕込水は、深井戸100mからの葛城山系の深層地下水を使用しています。 硬度250の超硬水は、鉄分・マンガンを含まない酒造りに最適な水質なんだそうです。
さて酒米は地元の飯米『秋津穂』。 1998年『風の森』は、森の風峠の棚田で栽培された『秋津穂』から、どれだけ旨い酒が造れるかというところから始まっています。
『秋津穂』は、『ヤマビコ』と『日本晴れ』を掛け合わせた品種で、透明感のある酒質に仕上がるそうです。
『油長酒造』さんでは、奈良県の中山間地30軒の契約農家さんに生産してもらっているとか。
ところで『657』とは、65%精米+7号酵母のこと。 『807』や『507』もその解で紐解いて下さいね。
《原料米》奈良県産『秋津穂』100%
《精米歩合》65%
《酵母》自社製7号酵母
《日本酒度》- 《酸度》-
《アルコール度》16度
《造り》無濾過無加水生酒
《お値段》720 ml 1320円
《製造》2022年3月
さて開栓は慎重にゆっくりと行います。 爽やかな香りと、味わいはほんのり甘く透明感のある飲み口。 ラムネやマスカットのようなニュアンスでジューシーな味わいです。
盃を進めますと、キメ細かい酸が効いた飲み口に甘味がふくらみ、次第にほのかな苦味を含むようになり、温まると優しく柔らかい甘味に酸が切れていきます。
65%精米の純米酒らしい膨らみのある甘旨みや酸が感じられ、キレの苦味も利いて抜群のバランスですね。
なんでも蔵元さんは大吟醸、吟醸のカテゴリーでなくて、お酒を自分好みの味覚から探してほしいそうだ。80%精米でも味わい深いお酒を造る自信があるんだね。 そんな訳で精米歩合+酵母としたんだって!
『風の森 ALPHA1次章への扉』は飲みやすく新しい飲み手を呼び込む
『ALPHA』シリーズは、H25BYからカテゴライズされた独創的な技術で従来の日本酒の枠を超える新しいタイプのチャレンジ酒です。
例えれば、『低アルコール』『高精白』『火入れ酒』『氷結採り』『燗酒』『ブレンドセット』『樽酒』『玄米酒』と8種類ものお酒がラインナップされています。
『風の森』は酒米と磨きの違いを表現してますが、こちら『ALPHA』シリーズは様々な酒質が見れますね。
そんな中で『ALPHA1次章への扉』は元々はアルコール度14度でしたが、R2BYからは12度にリニューアルされています。
爽やかな香りにラムネのようなキメ細やかな微発泡感があり、瑞々しくて軽やかな味わいです。 開栓時に気を許すと、天井に穴が開きそうになります。
お酒の味わい求める向きには12度なので、ちょっと頼りないかもしれませんが、清楚でリッチな味わいはワインに負けていません。
《原料米》奈良県産『秋津穂』100%
《精米歩合》70%
《酵母》自社7号系酵母
《日本酒度》- 《酸度》-
《アルコール度》12度
《造り》無濾過無加水生酒
《お値段》720 ml 1430円
《製造》2022年3月
タイプ8までの中で、1、5と8はコスパがいいけど、他は高精米タイプなのでチョット高いかな。 でも、一度は1~8まで通しで利き酒してみたいね! ところで秋田の酒場で3杯飲んだのは一体何だったんだろう?
奈良の日本酒『風の森』と今夜の肴
奈良県は海なし県。 地元のグルメと言えばほぼ『柿の葉寿司』の一択でしょうか。 県内どこへ行っても、柿の葉寿司の店舗が目立ちますね。
残念ながら今回の旅行は、奈良をキャンセルして京都で2連泊しました。 でも、吉野山の桜の中で、ちゃんと柿の葉寿司をいただいてきましたよ。
京都の酒飲みのお伴は『和久傳』の鯛の黒酢ずしと、えびの天ぷらとカレイの西京焼き。そして『風の森 ALPHA1』の発泡感のある爽やかな酸味の味わいを楽しみました。
そして今夜の家飲みは、奈良『大和鳥』の代わりに『若鳥のパリパリ揚げ』でしっかりとした味わいの『森の風 秋津穂657』と合わせていただきました。
『油長酒造』の紹介
奈良県御所市の『油長(ゆうちょう)酒造』さんは、もとは大和平野の菜種で製油業を営み、油屋長兵衛と名乗っていたそうです。
そして1719年(享保四年)に酒造業に転じて以来、三百年近く酒造り一筋に生きてきました。 その技術力と生産能力は高く、その造りはかっては一万石に及んだそうです。
日本酒の需要が低下する一方の90年代後半、先代の父上はその活路を見出すべく新ブランドを立ち上げます。
蔵のほど近くの『風の森峠』は水稲栽培発祥の地ともいわれ、搾りたてのお酒を飲んでほしいとの想いから、1998年『風の森』が発売されます。
そして先代は早くも2001年に全量純米化を果たし、今時の『無濾過原酒生酒』『純米』ブームの先駆けとなっています。
さて現蔵元の山本嘉彦さんは1981年生まれ。 関西大学工学部で微生物学を履修後、阪急百貨店に勤務します。
その後2008年に家業に入り、父と共に『風の森』を育ててきました。 2014年に代表取締役となり、そして創業300周年を機に13代目山本長兵衛を襲名します。
この酒蔵さんは技術屋の血筋なのでしょうか。 先代は古い文献を参考に『笊籬(いかき)採り』を進化させ、無加圧で酸化させずに酒を採ることに成功します。
一方嘉彦さんは、『風の森ALPHA』シリーズを立ち上げ低アル酒や高精白酒、さらには特殊な耐圧タンク内で氷温で搾らずに分離する『氷結採り』という手法を編み出します。
『油長酒造』さんは、奈良ならではの伝統の製法『菩提酛』を再現したばかりか、時代にマッチしたお酒造りの技術の進化と徹底した品質管理を目指しています。
まとめ
酒名の『風の森』は、『油長酒造』さんの蔵がある御所市の風の森峠に由来します。 そこには、古事記や日本書紀にも記述がある風の神が祭られている杜があります。
年がら年中吹く峠風の中で、棚田で育てられる酒米『秋津穂』はその倒伏性を備えてきたのでしょうか。
このお酒を立ち上げた理由は、何といっても地元の方に搾りたての美味しいお酒を飲んで貰いたいとの先代の思いからだそうです。
1990年代の淡麗辛口の時代に『無濾過・無加水・生酒』を世に出す発想と覚悟は、なかなかできるものではありません。
酒蔵の設備投資や様々な醸造技術の開発など、『油長酒造』さんの技術革新への取組みとその真摯な酒造りには、本当に頭が下がる思いです!
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。 最後までお読みいただきありがとうございます。