爽やかな香りに上品な味わいの『十四代 龍の落とし子大極生』は、正に日本酒の芸術品!

十四代 龍の落とし子大極生

日本酒フアンの皆さんこんにちは!

今回は、山形の銘酒『十四代 龍の落とし子 大極生』を紹介します。

十四代といえば、お酒をよく知らない人でも一度は聞いたことがある名前。 そしてお店で飾ってあるのは空瓶とか・・・

まさに『幻の酒』元祖であり、今もプレミアム酒の横綱と言っていいでしょう。 

さて、2年前の『十四代 吟撰』に続いての『十四代 龍の落とし子 大極生』、一体どんな味わいなんでしょうか?

以前の紹介記事はこちらです。

山形の日本酒『十四代吟撰』はフレッシュな吟醸香とスッキリ爽快な喉越し
高木酒造が醸す『十四代 吟撰 生詰』は、香りと旨み、そしてキレの良さと絶妙なバランスコントロールが秀逸。 改革者として、時に伝道者として、常にうまい酒を求め続けているその飽くなき姿勢は、日本酒の、いや日本文化の伝承者としてとても誇らしい。
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『十四代 龍の落とし子 大極生』は十四代らしく香り華やかも、爽やかな味わい

高木酒造開発の酒米『龍の落とし子』は『酒未来』と兄弟

十四代を醸す高木酒造さんは、月山の手前にある葉山の麓。 この山は1462mと標高があり、蔵の近くを流れる富並川の源をなしています。

今年は里の積雪も1メートルを超えるそうですが、山の豊富な雪解け水がつくる伏流水は百年の時を経て名水『桜清水』として、汲み上げられています。

高木酒造さんでは、この名水を醸造だけでなく蔵内の様々な作業に使っています。


《原料米》掛米『龍の落とし子』80%、

《精米歩合》35%

《酵母》-

《日本酒度》- 《酸度》-

《アルコール度》16度

《造り》純米大吟醸生

《お値段》720 ml  5500円  

《製造》2021年12月

『龍の落とし子』は、高木酒造『十四代』目の高木辰五郎氏が18年の歳月をかけて交配・育種を重ねて生み出された酒米です。

ラベルを読めば、父系が山田錦と金門錦を掛け合わせた『山酒4号』で、母系はたかね錦に改良を加えた『美山錦』となっています。

前回紹介した『奈良萬』など交流のある蔵に『酒未来』が供給されていますが、『龍の落とし子』の系統は父母が逆になっています。

でも『龍の落とし子』は、高木酒造さんのみで醸される門外不出の酒米。 ですから、十四代でも最高ランクの『龍泉』などに使われています。

十四代 龍の落とし子大極生

さて、こちら『龍の落とし子大極上生』は冬季限定の新酒の生酒で、2018年12月に初登場しました。 生酒なんですが酸味は抑えられているのか、とても上品な喉ごしです。

十四代で使われる酒米の中では香りは控えめ、でもそこは十四代。 華やかさは変わらずとも、他の酒米の『旨口』に比べて、こちらは『淡麗甘口』の後口スッキリの軽快な味わいです

トラマサ
トラマサ

720mlの箱入りは、年末の贈答用に合わせているのかな? 最初は生酒なのに箱入りで少し驚いたが、3ヶ月の賞味期限が表示されている

 『十四代 龍の落とし子大極生』感想と評価
  • 十四代らしい華やかな香りは健在も、後味はスッキリした味わいで抜群のバランス感があります。   爽酒旨口タイプ
  • 720ml 5500円は、希少米の33%精米で、ましてや十四代でありながらの奇跡の定価購入。 もう無いかな。  
  • 総合評点 8.8  ※あくまでも私個人の感想です。

十四代のラインナップは多彩! 大極上って、どんなクラスのお酒? 

十四代のラインナップは大吟醸クラス、吟醸クラス、本醸造と20種類以上と多くあり、またホームページもないので混乱しそうになります。

たまに見かけても、抱き合わせ販売であったり、プレミアム価格であったりします。 特約店の抽選などによる定価購入がベストなので、是非チャレンジしてみてください

そこで、十四代の主なラインナップの造りと酒米について以下にまとめてみましたので、参考になさってください。

トラマサ
トラマサ

それにしても独特のネーミング、ストーリーがありそうですね。 大吟醸は造りが『純米大吟醸』、吟醸は『純米吟醸』。つまり、特定名称ではなく造りのクラスを表している。 『大極上』の意味は、大吟醸クラスの意味らしい。 造りも味わいも年々進化して、飲み人を留めないのは流石、アーティストだね。

クラス  銘柄 造り/酒米/精米歩合  特 徴 
大吟醸龍泉純米大吟醸/山田錦/35%十四代の最高峰、雫取り斗瓶囲の純米大吟醸は、とても豊かな華やかな香りで、甘みとのバランスが絶妙。SAKE COMPETITION2019純米大吟醸部門で見事第1位。
龍月  〃山田錦で十四代らしいフルーティで薫り高い銘酒に仕上げた最高峰の一つ。SAKE COMPETITION2015純米大吟醸部門で第4位
七垂二十貫純米大吟醸/愛山/40%高木酒造伝統の製法、七垂二十貫で醸したお酒。洋梨のような香りとキレを存分に楽しめる。SAKE COMPETITION 2015純米大吟醸部門で第3位
吟醸中取り純米吟醸 播州山田錦純米吟醸/山田錦/50%『十四代』の代表的な中取りシリーズ、華やかな香りかつフルーティー、口の中でジューシーな甘味が広がる。SAKE COMPETITION2019純米吟醸部門で『播州愛山』が9位。
中取り純米 無濾過/角新純米酒/55%磨き本丸を一層みずみずしくした感じの純米造り。生詰めと、角新(生酒)は12月中旬ごろに販売。
吟撰吟醸酒/50%磨き十四代の中では、軽快な飲み口の部類で夏季限定。兵庫特A地区とあるが酒米を明示していない。
本醸造秘伝玉返し 本丸 /角新特別本醸造/55%磨き自社粕取り焼酎を添加アルコールに使用し。十四代の定番酒で、素晴らしい立ち香に甘味と辛味のバランス抜群のお酒。角新(生酒)タイプもあり。

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山形の銘酒『十四代 龍の落とし子大極生』と今夜の肴

今年の冬はどこも極寒のようで、山形の内陸にある村山市あたりも1メートルの積雪深と、雪が多そうですね。

美味しいお酒造りには最適なんでしょうが、その酒造りの前に蔵人さんも通勤が大変そうです。

さて、今年のお正月は『十四代龍の落とし子』で幕開けでした。 駅伝を見ながら、かるーくお猪口ですいすい・・・

紅白の蒲鉾、だて巻きにハム、そして黒豆など、華やかな香りを纏いながらもスッキリした味わいは、おせち料理にピッタリでしたね。

この後お雑煮もいただきながら、特別な時を演出してくれた十四代、いいお正月でした

『十四代 龍の落とし子』とお節料理

『高木酒造』の紹介

『高木酒造』15代目高木顕統氏が、世に『十四代』を送り出して早28年の月日が流れます。 山田錦を柱に据え多彩な酒米を用いて、ひたすら精緻な酒質設計に心を砕いているかのようです。

今や日本酒のエポックメーキングとなった『十四代』は、『蔵元杜氏』『芳醇旨口(フルーティ)』なるトレンドを生み出しました。

顕統氏は、大学3年の時初めて美味い酒に出会ったと言います。 それは『醪の香り』がする山田錦でつくった『寫楽』(元東山酒造)というお酒だったとか。

その後流通業界で2年勤めた後、高齢の杜氏の引退により蔵元に呼び戻されます。 ところが酒蔵経営につくはずが、先代から言われたのは酒造りの陣頭指揮でした。

この頃はまだ蔵元は経営、酒造りは杜氏と蔵人の分業制が当たり前。 後に『蔵元杜氏』と呼ばれる、若き蔵元醸造責任者と蔵人による酒造りが始まったのです。 

十四代本丸と吟撰

さて、苦心惨憺の末造り上げた酒の名は『十四代』。 流通時代から温めていた名前で、激戦地東京で勝負に出ます

顕統氏はここで、卸を中抜きして直接東京の地酒販売店『鈴傳』や『小山商店』、そして銘酒居酒屋『串駒』などに持ち込みます。 

フレッシュな生酒を飲み手に届けるために、冷蔵管理が出来る酒販店や飲食店を厳選、自ら出向いて販路を開拓し、見事に酒販店の店主らに認められたのでした。

そしてプライシングは、2000~3000円のゾーン。 まずは『中取り 純米 無濾過』の生酒でそのプロセスを打ち出したネーミングで、飲み心を擽ります。

さらなる決め手は、一年中販売できる火入れ酒『 本丸 秘伝玉返し 特別本醸造』です。 本醸造なのに、吟醸香が素晴らしくしかも雑味がない洗練された味わいで勝負します。

しかも一升瓶で2.000円を切る値段は、価格破壊そのものでした。 そう、今流の経営用語で言えば『ブルーオーシャン戦略』、まさに競争のない新領域を切り開いた瞬間でした。

このようにして、従来の『淡麗辛口』でない『芳醇甘口・フルーティ』の時代が開かれたのです。

*参考資料・出典 『日本酒の愉しみ』(文春文庫1996)

 『高木酒造』の概要
  • 1615年創業の四百年を超える老舗酒蔵で、地元ブランドは朝日鷹。 高木顕統氏は2016年に十五代目として蔵元を継承し、今も陣頭指揮を執る。
  • 社訓は『聲無きを聞き、像無きを視る』。 時代とともに変化する技術や製法、人々の好み、飲み方などに注力。
  • 香りと旨み、そしてキレの良さと絶妙なバランスコントロールが秀逸
  • 全国新酒鑑評会は、平成15年以降金賞を外したのは、17年と21年の2回のみ。お見事の一言です。
  • SAKE COMPETITION:2019ではスーパープレミアム部門で『十四代 龍泉』が1位。純米吟醸部門で『中取り十四代愛山』が9位。 毎年上位入賞歴を誇る。
  • 酒造見学は不可。 

まとめ

経験のない若者でも、旨い酒は情熱があればこそ造れる! そんな姿勢は多くの若手蔵元を刺激し、自らの酒造りへと向かわせました。

先月紹介した『東洋美人』を醸す澄川宜史さんは、東京農大3年次に顕統氏のもとで精魂傾けた酒造りの精神に触れ、見事に酒蔵を再生し大ブレイクをしています。

酒造り400年の『高木酒造』さん、その十五代の系譜が縦糸なら、当代顕統氏が卒業した東京農大OBの蔵元ネットワークは横糸でしょうか。

聞けば、日本酒の蔵元(約1600)の8割が東京農大の卒業生だといいます。

ちなみに日本酒造杜氏組合連合会によれば、2020年の杜氏総数は710名。 30年前の1990年は、1764名ですから、6割も減少しています。 杜氏の高齢化、専業農家の減少は世の流れ・・・ 

酒米の確保や人手(造り手)確保、様々な課題を抱えた日本酒業界ですが、東京農大OBの益々の獅子奮迅の活躍に期待したいところですね。

それでは皆さん、今回はこれで失礼します。

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