日本酒ファンの皆さんこんにちは!
さて今回は、茨城県はつくば市の若手蔵元杜氏が作る『浦里 純米吟醸』を紹介します。
実は杜氏の浦里知可良さんは、3年前に史上最年少で南部杜氏自醸清酒鑑評会で主席となった、今注目の若手醸造家なんです。
さて『浦里 純米吟醸』、一体どんな味わいなんでしょうか?
『浦里 純米吟醸』は、オール茨城のテロワール
中硬水の仕込み水とひたち錦で、サラリとした上品な仕上がり
『西の富士、東の筑波』と称される筑波山。 その秀峰を水系とする伏流水は中硬水で、蔵井戸から汲み上げ仕込み水としています。
そして酒米は、地元の茨城県オリジナル酒米ひたち錦で、50%まで磨かれています。
実はひたち錦は超硬質米で、さっぱりとした酒質になりやすいお米。 さらに加えて昨年の猛暑で米が固く、今年の造りはかなり苦労されたそうです。
《原料米》『ひたち錦』
《精米歩合》50%
《酵母》小川酵母
《日本酒度》- 《酸度》-
《アルコール度》15度
《造り》純米吟醸/火入れ原酒
《お値段》720 ml 1750円
《製造》2023年5月
酵母は、低酸でサラリとしたお酒を生む小川酵母。 そして種麹は、業界で信頼のある地元の『丸福もやし』を使用しています。
そんなオール茨城のテロワールで醸されている『浦里純米吟醸』ですが、すっきりしているのに美味しさの余韻が残り、みずみずしくて透明感があります。
また穏やかなバナナ、メロン系の香りは心地よく、『ひたち錦』の綺麗な味のふくらみはさらりと仕上がっています。
浦里酒造店の造りは小川酵母に拘り、仕込みと貯蔵を冷蔵設備で行う
さて浦里酒造店の造りの特徴は、なんと言っても小川酵母。 水戸市の明利酒類で分離・培養された茨城縁りの酵母です。
小川酵母はバナナやメロンのような香りが特徴で、酸味が少なくまた低温でもよく発酵する吟醸酒に適した酵母です。
蔵元さんは敢えて受賞率の低い『小川酵母』を蔵の個性に据えて、それで醸した純米大吟醸で全国新酒鑑評会の金賞を3年連続で受賞しています。
そしてもう一つの特徴が、仕込みと貯蔵を冷蔵設備で行っていることです。
現蔵元の浦里浩司さんは造りたての美味しさをキープするため、1995年には低温貯蔵に加え、氷点下熟成が可能な蔵を新設しています。
あの磯自慢酒造など、当時では希少であったステンレス蔵をいち早く導入。 そして敷地内には冷蔵コンテナが10数個も並んで、さながら田圃の物流基地だね!
『浦里 純米吟醸』と今夜の肴
『浦里』は、小川酵母特有の低酸でサラリとした酒質の仕上がり。 食事の邪魔をしない穏やかな味わいなので、食中酒としてどんな料理にも合います。
夏を迎えた今夜はサバの煮物で、料理を活かすお米の旨みとキリッとしたドライなキレ味を楽しみました。
『浦里酒造店』の紹介
『浦里酒造店』さんの創業は1877年(明治10年)、400年の歴史を持つ結城酒造さんからの分家創業でした。
その昔は、恵まれた筑波山の水系の伏流水で醸す酒蔵が、近隣には数軒もあったそうです。
そして今残るのは『浦里酒造店』さんのみで、研究学園都市つくばの発展とともに酒蔵の生業も大きくなっていきます。
さて5代目蔵元浦里浩司さんは、1985年国税庁醸造試験所にて研修。 その後、受講仲間の出羽桜酒造・仲野益美社長のもとでさらに研鑽を積みます。
実は、この年はつくば万博が開催された年。 山形の吟醸酒路線に刺激を受けて蔵に戻った浩司さんは、早速吟醸酒を主体にした『霧筑波』を発売します。
これがナント、街に出来たばかりの百貨店に並び大人気となります。 売れた理由は、個性的で品質が優れた酒を造ったことでした。
そして評価は極まり、2016年のG7伊勢志摩サミットをはじめ地元茨城での国際的なイベントで振る舞い酒として採用されます。
2018年には、後継者知可良さんが蔵入り。 長年杜氏を務めてきた南部杜氏・佐々木圭八さんの引退を1年間引き止め、一緒に酒造りを行います。
知可良さんは東農大を卒業後、父と同様に出羽桜酒造で修行。 そして旭興を醸す渡邊醸造、酒類総合研究所で修行を行いました。
出羽桜では『テロワール』を学び、さらに山形吟醸王国を築いた尾関先生からは『個性』を諭され、小川酵母への想いを一層強くします。
その個性、父が自身の名前に刻んだ偉人の小川酵母で、知可良さんは見事に『南部杜氏自醸清酒鑑評会』で主席を獲ったのです。
まとめ
つくば市は関東平野の真っただ中、名峰筑波山がポツンと聳える田園地帯。 穏やかな里山の風景に加えて、近代的な都市景観も有しています。
そして地元酒『霧筑波』のラベルには地元茨城・服部正一郎画伯の作品『霧筑波』が採用され、そんな美しい筑波山の情景が描かれています。
父子2代にわたる『出羽桜酒造』さんでの修行と、オール茨城のテロワールを意識した酒づくり。
加えて南部杜氏の酒造りの技術伝承を守り、革新の酒造りに取り組む熱意は並大抵のものではありません。 しっかり応援していきたいですね。
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。 今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。