宮城の日本酒『伯楽星 特別純米』はスッキリ後口でお代わり必須!

伯楽星 特別純米

日本酒ファンの皆さんこんにちは!

今回は、宮城県の人気蔵『新澤酒造店』さんが醸す『伯楽星』を紹介します。

この『伯楽星』は、8月の仙台結婚式の際に購入してきたものです。 東京では取扱店が少なく、わが聖地にもありません。

そんな『新澤酒造店』さんが醸すお酒は近年様々な酒コンテストで上位入賞を果たし、IWC2022では『サケ・ブルーワー・オブ・ザ・イヤー』に選ばれる快挙を成し遂げています

さて『伯楽星』は、一体どんな味わいなんでしょうか?

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『伯楽星 特別純米』は、『人』『もの(水・米)』で磨きこまれている

大震災被災を福に転じて、良質の天然水に恵まれ酒が生き返る

『新澤酒造店』さんの酒蔵は、もともとは大崎市三本木にありましたが、先の東北大震災で酒蔵は全壊。 現在は、蔵王山ろくの川崎町に移転しています。

その移転の訳は、良質で豊富な天然水が使用できることにありました。 近年のお酒の評価が高まったのは、この仕込み水にも理由があります


《原料米》『山田錦』

《精米歩合》60%

《酵母》-

《日本酒度》+4 《酸度》1.7

《アルコール度》16度

《造り》1回火入れ

《お値段》720 ml  1430円  

《製造》2022年8月

さて酒米は『山田錦』60%精米です。 

裏書には、冷で爽やかな酸が生きてくるような造り(酸度1.7)とあり、確かにシャープな口当たりで、山田錦のやさしい旨味がほのかに感じられますね。

トラマサ
トラマサ

おっと、裏書の上部には点字が。 蔵元の若き頃の思い、病院で知りあった目の不自由な女性を励ますための、自身が造り上げた酒名の点字が入っているね・・・

契約栽培米の自社検品と丁寧な自家精米で、綺麗な味わいが整えられている

ところで『新澤醸造店』さんでは、酒米は全て地元の農家さんとの契約栽培だそうです。 しかしながら品質には、不安定さが付きまといます。

そこで女性の専任品質担当者をおき、両者立ち合いで等級検査の上適正価格で買い入れとしました。 農家出身の担当者のコミュニケーション力も上々で、コメの品質が向上したとか。

また、精米はすべて自家精米をされています。

実は、以前酒業界でお米の偽装事件が起きた際、自社の精米委託米を検査したところ、3割ほど違うお米が混じっていたそうです。

もちろん裁判沙汰となり、2008年に自社精米に切り替え、2015年にはダイヤモンド精米機を導入。 現在は最先端の扁平精米機2台が入り、合計6台が稼働しています

高価な扁平精米機導入は、品質の底上げを図るためとはいえ大胆な投資。 そこは他社からの精米依頼を請け負うことで、投資コストの回収が図られていますね。

トラマサ
トラマサ

山あり谷ありの経営だけど、矢継ぎ早の設備投資の経営判断はさすが! さらにすごいのは精米部門を分社化し、社員にも持ち株化をさせている。 やるね!

改善力にも優れる若い蔵人の丁寧な仕事ぶりは、味わいにも出てきているのでしょうか。 上品で酒の五味のバランスが良く、心地よい後味です。

何杯でも飲める『究極の食中酒』の味を、フレッシュローテーションで守る

このお酒のコンセプトは、糖分の多い日本酒が増えている中で、すっきりとした酒質で主張しすぎず、料理の味や香りを引き立てること

なるほど、日本料理の極みである『引き算』よろしく料理と合わせるのではなく、料理の味を引きだすような脇役のように寄り添っているのでしょう。

でもこのお酒が登場した20年前はまだ食中酒という概念もなく、インパクトがないとかで支持されません。

そこで新澤さんは、瓶詰め後の日数と保管温度をかけ合わせた数字を品質管理の目安として、全国の酒販店さんを訪ねて時間の経過したお酒を新品と交換するサービスをしています

お店や家で飲む際のクオリティを上げるための『フレッシュローテーション』は、繊細な香りと甘さを控えた味わいの『伯楽星』を『究極の食中酒』にするための戦術だったのです。

トラマサ
トラマサ

なんか味わいを利いているうちに、スイスイと無くなってしまった。 前後に旨味の強いお酒を飲んでいると印象が薄くなって味を忘れてしまいそうだ。 『愛宕の松』のほうが味を出しているので、酒飲みのお方はそちらがよろしいかな?

ほのかな香りと、飲み飽きしない力強さを秘めながら心地よい後味でまとめ、飲ませ上手な究極の食中酒となっていますね。

 『伯楽星 特別純米』感想と評価
  • 上品で酒の五味のバランスが良く取れた、飲ませ上手な究極の食中酒。 甘みや香りを抑え、酸味のあるスッキリとした味わいは素晴らしいです。 爽酒旨口タイプ
  • 720ml  1430円は、酒米のコストを考えれば十分納得のお値段です。 
  • 総合評点 8.5  ※あくまでも私個人の感想です。

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『伯楽星 特別純米』と今夜の肴

宮城県の名物といえば『蠣』。 松島の新鮮な蠣の旬は、10月から3月までなので、時期が外れるとやはり三陸のお魚でしょうか。 

生カキ

そんな訳なので、もう一つの宮城の名産といえば『マグロ』で決まりです。 

生マグロ・頭や頬の希少部位

三陸沖では、秋口から冬場(9月〜12月)にかけてマグロが漁獲され、特にメバチマグロは『鮮度』『色つや』『脂のり』『うまみ』が抜群のブランド品。

市場で買って、『カップ酒』でぐびぐびやるのもいいですね。

『新澤醸造店』の紹介

『新澤醸造店』さんは1873年(明治6年)の創業、約150年の歴史があります。

さて5代目蔵元社長の新澤巌夫さんは1975年生まれで、東京農大醸造科を卒業。 実家の経営は苦しくアルバイトをしながらも、利き酒選手権優勝などで感性に磨きをかけます

卒業後はすぐに酒蔵に戻り蔵の再建に取り組みますが、経験値も資金も不足。 他の蔵を訪ねては小さな仕込みで検証を重ねていきます。

帰蔵3年目に杜氏となり、売れている酒を徹底研究し求められている酒は何かを問い詰めます。 出した答えは逆張りの、飲み疲れしない三杯目『究極の食中酒』でした。

既存銘柄の『愛宕の松』は不味いレッテルだったとか。 なので新ブランドの『伯楽星』を誕生させます。 

時の流行りは無濾過生原酒の全盛期で『濃淳甘口』。 抗えど、酒販店さんや飲食店さんは食いついてくれません。

ようやく2003年の『Dancyu/隠れた日本の銘酒』で3位に選ばれます。 1位は永山貴博氏が醸す『』でした。 

そこで認められた『伯楽星』は、2005年にJALのエグゼクティブクラス搭載、2010年にはサッカーW杯のオフィシャル日本酒と、順調に経営に寄与していきます。

トラマサ
トラマサ

JALのHPを見ると、2022ファーストクラスに搭載されている。 ずっとの継続銘柄は銘酒の誉れ、見事だね。 『わずか8席だけの空の上のレストラン』なんだって! 

ところがそこに東日本大震災が起き、酒蔵は全壊判定を受け商品も失います。 絶望的な状況の中にあっても酒造りを継続し、全国からの51人の蔵元や杜氏の応援で乗り切ります。

余震も続く中で酒蔵の『再建』か『休業』か新澤さんは悩みますが、そこに新築間もない好条件の休眠蔵がある話が伝わり、『移転』を決断します。

なんと震災からわずか8ヶ月余りの11月には新蔵への移転・製造再開を実現しますが、問題は人。 結局、最後に残ったのは社長と専務、製造社員の3人だけでした。

機械は移動したものの、温度や湿度、蔵にすみつく微生物、作る人も変われば味も変わってしまいます。 新しい蔵人を迎い入れ、試行錯誤の日々が始まります。

そんな状況でも、感覚に頼っていた部分は分析器を整え、冷蔵設備や瓶詰めラインを刷新。 若い人には勉強してもらいながら酒質の改善向上を目指します。

そうして酒造りの復活劇を決めたのは、2016年『SAKE COMPETITION』の純米酒部門世界一です。 

もうこうなれば復活劇ではなく堂々たる横綱相撲ですが、新澤さんはまだまだ上を目指して、人材育成や定着化に力を入れています。 

トラマサ
トラマサ

特筆すべき利き酒能力をもつ渡部七海さんを、わずか入社3年目(22歳)で杜氏(製造責任者)に抜擢するなど、女性たちが多く活躍する。 完全に実力主義だね!

年俸制の週休2日、有休取得は当たり前。 自由出勤制も設け、時給4000円以上の人もいます。 寮は個室・風呂はジャグジー付き。 車両購入には100万円の補助金まで。

女性が多いとはいえ、こんな労働環境は見たことありません。 若者を積極的に採用し育てる厚生労働省認定の『ユースエール認定企業』となっています

まさに『人』『モノ(設備、商品)』『Iot』と近代的な経営スタイルでブラッシュアップされた酒が、2022IWCで『サケ・ブルーワー・オブ・ザ・イヤー』と頂点を極めました

 『新澤醸造店』の概要
  • 1873年(明治6年)に創業、約150年の歴史。 大崎市三本木の蔵は東日本大震災で全壊し、事務所を残して川崎町へ酒蔵を移転。 5代蔵元杜氏の新澤巌夫氏は東京農大卒。 社員数41名。 
  • 22歳で杜氏となった渡部七海さんを初め、女性従業員は全体の60%以上、女性管理職の割合は50%とジェンダーレスの組織運営。 品質で恩返しをキーワードに、広告宣伝費や営業などは一切行わない。 直営店のみの取り扱い。
  • 目指す酒は、糖度が低く食事とともに何杯でも飲める『究極の食中酒』。『愛宕の松』『伯楽星』の2大ブランドと、世界最高精米『零響』など実に幅広いラインナップがある。
  • IWC2022では『Sake Brewer of the year』、別仕込み本醸造・愛宕の松が『Great Value Champion Sake』。伯楽星純米吟醸が純米吟醸部門 金賞。2022 フェミナリーズ世界ワインコンクール 純米吟醸酒部門 金賞。 2022 Kura Master 純米大吟醸部門 プラチナ賞受賞。他残響・零響も受賞多数。
  • 大崎市本社に直営店舗あり。

まとめ

『伯楽星』の名前の由来は、川崎市三本木に残る『伯楽が大切に育てていた名馬が天に昇った』という伝説から命名されたとか。

伯楽とは馬の目利きをする人のこと。 若い女性杜氏の登用かと、ここまでは誰もが想像する話ですが、どうも違う気がします。 目利きよりも手綱さばきかと。

酒造りで言えば、酒が飲まれゆく道筋を読んで醪を仕込み、ここぞというときに搾りをかけて旨味を閉じ込め、飲み時を悟り酒をレリースする名杜氏か・・

あるいはよき酒米を調達し、酒蔵の内外を整え蔵人の心技を育み、そして酒造りの生業を末永く継承する名蔵元か・・

名伯楽の手綱さばきとは、様々な試行と失敗を繰り返しながらも数多くの困難と壁を乗り越え、自身を鼓舞してきた『不屈の精神』そのものではないでしょうか。

それでは皆さん、今回はこれで失礼します。 今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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