日本酒フアンの皆さんこんにちは!
今回は、怒涛渦巻く日本海は佐渡の天領盃酒造さんの『天領盃 雅楽代(うたしろ)~日和』を紹介します。
天領盃酒造さんと言えば、弱冠24歳で事業承継で蔵元を継ぎ、全くの素人ながら未知なる酒造りを始めた酒蔵さん。
まずは継業による『全国最年少蔵元』として注目を集めていますが、はや今期で4年目となる作り。
さて新たに起こしたブランド『雅楽代~日和』、一体どんな味わいなんでしょうか?
『天領盃 雅楽代~日和』は穏やかな吟醸香と甘みを抑えた綺麗な味わい
大佐渡の山に降る雪解け水は蛍舞う清流、米の旨みをしっかり残している
佐渡最高峰の『金北山』、その昔の金山採掘を由来とする山に降る雪は、40年の歳月をかけて天然水となり、綺麗な軟水を生み出しています。
そして蔵の仕込み水は蛍が舞うほどの清流。 豊かな自然が生む水は米の旨みをしっかりと残して、円やかで優しい味わいの酒質を生んでいます。
《原料米》『越淡麗』100%
《精米歩合》-
《酵母》-
《日本酒度》- 《酸度》-
《アルコール度》13度
《造り》生原酒
《お値段》1800 ml 3410円
《製造》2021年12月
天領盃酒造さんでは、全量を自家精米し、米の出来具合を確認しながら精米時間を調整しているとのこと。 そんなせいか精米割合は表示されていません。
特徴的なのは、生原酒のアル度13。 修行先の広島・相原酒造さんが醸す低アル酒に刺激を受けたのでしょうか。 今期で2回目の造りながら、米の味わいをよく残しています。
朱鷺が暮らす田圃で作る『越淡麗』、口当たり円やかで膨らみがある
佐渡と言えば思い出すのが『朱鷺』。 日本の朱鷺は途絶えたものの中国から贈られた朱鷺を人工ふ化で増やし、今では野生の個体数は484羽となっています。(2021/9佐渡自然保護官事務所調査)
朱鷺と共生するためには、『生きものを育む農法』が求められます。 減農薬・減化学肥料を5割以上とし、なおかつ畦の草刈りや江などにより、魚・昆虫・カエルなどが育つ環境を造ります。
そんな環境でつくった佐渡産酒米使用率は、なんと9割。 このお酒の酒米は新潟県オリジナルの新品種『越淡麗』で、契約栽培ながら蔵元自らも田植えや刈り取りを手伝っています。
五百万石と比較すると、越淡麗は40%以上の高度精白ができ、醪に溶けやすくて麹菌が住み着きやすいそうです。
父に『五百万石』母に『山田錦』の交配種で、口当たりがまろやかで、ふくらみがありつつも淡麗ですっきりとした味わいがあります。
新潟佐渡の日本酒『雅楽代~日和』と今夜の肴
佐渡は、様々な海産物の宝庫。 冬ならば、『寒ぶり』『鮑』『牡蠣』『南蛮海老』『カニ』と、枚挙にいとまがありません。
最近は、海水温度や海流回路の変化で、秋の北海道や先週は山口萩沖でも例年にない『鰤』の豊漁とかで、獲れる産地や季節も変わってきていますね。
冬のぶりは脂がのって、刺身やしゃぶしゃぶ、焼き物など何でもお酒によく合います。
また『雅楽代~日和』はぬる燗でいただくと、いっそう米の膨らみと旨みが感じられ堪りませんね!
『天領盃酒造』の紹介
『天領盃酒造』さんの前身は、1983年(昭和58年)に合併してできた『佐渡銘醸』。 バブル前のコンピューター制御の機械化投資が裏目に出たのか、2008年に倒産。
その後、愛知と鹿児島の大手酒造会社のもとで『天領盃酒造』として経営再建されますが、累計1億円の赤字を抱え再び窮地に陥ってました。
売りに出された会社に手を挙げたのが、弱冠24歳(継承時)の加登仙一さん。 元証券会社の営業マンです。
加登さんは大学2年時の海外留学で、仲間との酒談議の中で日本文化の象徴であるSAKEに対して無関心・無知を曝け出されます。
そして心に火が付いた加登さんは日本に帰国し、日本酒のことを調べるうちにその魅力に憑りつかれ、とうとう日本酒造りを目指す道を志向することになります。
初めての海外留学で、思い知らされる日本の文化と暮らし。トラマサも24歳でクロアチアの舞踊祭に行ったとき、各国の人々からしつこく聞かれた。 解るなー。 でもその後は変な西洋かぶれが治って、今じゃ日本酒・日本モノにはまってしまった!
さて酒造りを志向するも、ここに大きな壁『酒造免許』が立ちはだかります。 日本は許認可の業種が多く、とりわけ徴税業種である日本酒製造の新規免許は、国税庁が認めていません。
起業家精神に富む加登さんは、一旦は証券会社に進みながら独立のためのノウハウを学びます。 そして取引先の経営者から、自ら酒蔵を起すよりも買取りの方が早道と諭されます。
加登さんは早速案件をピックアップし、候補となったのが『天領盃酒造』でした。 財務分析をすれば、無駄な経費削減と需要の伸びている純米酒をラインに加えることで、再生可能とふみます。
そして旧オーナーへの買取り意思表明や、粘り強い金融機関への買収資金の借入交渉をへて、なんと半年間でまったく独力でM&Aに成功したのです。
成功のポイントは何といっても、銀行を動かした加登さんの『日本酒を造りたい』という情熱(本気度)でしょうか。 企業家精神のなかで一番大切なものですね!
そして、もう一つは『離島・佐渡』への交付金。 2017年施行の『有人国境離島振興法』は、人々の島の営みを維持し、領海やEEZの拠点として有人離島が維持され続けることを狙っています。
事業計画見直しでは、有人離島が維持され続けるポイントを盛り込んで、銀行借入単独でなく交付金と組合わせたスキームによって、貸し借り双方のリスク軽減がうまく出来たのです。
まさにミレニアム世代。 ぶれない決断力と継続的な改善力。そして情熱的で、古い殻を破る革命的な企業家が、日本酒業界にも現れた! 地域経済の火を消さないよう金融機関も踏ん張っているね!! 双方エライ!!!
まとめ
誰もが知っている民謡『佐渡おけさ』は、熊本のハイヤ節が日本海に沿って佐渡へ伝えられ、哀愁を帯びた旋律の抗夫唄に変化したもの。
『ハー佐渡へ 佐渡へと 草木もなびくヨ 佐渡は居よいか 住みよいか 佐渡と 佐渡と〜 佐渡と出雲崎ゃ 棹挿しゃ届くヨ なぜに届かぬ わが想い』 *掛声部分は省略しています
人も物も、金銀に魅せられて佐渡へ吸い寄せられていたのでしょうか? さらに遡れば争いに負けた天皇や宗教者らが流刑された島。
でも、佐渡はそんな最果ての地のイメージながら、意外や東京からは3~4時間の距離。 農林水産や観光の基幹産業の低迷などから人口流出が続くも、最近では年間100名の移住者があるそうです。
それにしても、今回は離島振興法制、朱鷺をめぐる自然保護など、多岐にわたって勉強させて貰いました。 皆さんも、離島で起業してみますか?
さて佐渡に縁もなかった青年が、お国自慢の日本酒に興味を持って、離島を逆手に取ったファイナンスとM&Aで念願の酒蔵を掴み取りました。
関東から移り住んで4年目、冬は風雪厳しい佐渡ですが酒造りには最適。 夏は高温多湿で米もよくできます。 狙った酒造りに取り組める最適な環境で、大いに旨い日本酒を磨いてほしいですね。
期待してますよ!! それでは皆さん、今回はこれで失礼します。