日本酒ファンの皆さんこんにちは!
今回は長崎県壱岐の『よこやま 純米吟醸 SILVER 超辛7 』を紹介します。
壱岐と言えば麦焼酎。 そうなんです、このお酒を醸す『重家(おもや)酒造』さんは、なんと28年ぶりに焼酎文化の壱岐島に日本酒を復活させた酒蔵さんなんです。
さて『よこやま 純米吟醸 SILVER 超辛7』、一体どんな味わいなんでしょうか?
『よこやま 純米吟醸 SILVER 超辛7』は爽やかな旨味とキレの良さが特徴
特等米山田錦の香り華やかさと、そして辛みの中に甘旨みが残る
壱岐島は南北17キロ東西14キロほどの大きさで、島の8割は標高100m以下の低地です。 そんな地形なため、酒蔵復活にあたっては仕込み水を求めて20カ所を回ったとか。
そしてようやく巡り合えたのがこの地にわく井戸水。 なんでも水を多く必要とするアスパラガスが栽培されていたので閃いたそうです。
水質を調べると日本酒に最適な軟水。 紫外線殺菌で完全に無菌状態にし、蔵内でさらにもう一度殺菌されており、排水も浄化槽を通すなど相当細かく管理されています。
《原料米》特等『山田錦』100%
《精米歩合》麹米50%、掛米55%
《酵母》協会7号酵母
《日本酒度》- 《酸度》-
《アルコール度》16度
《造り》純米吟醸生
《お値段》720 ml 1705円
《製造》2021年12月
さて『よこやま』シリーズの酒米は、山田錦。 そしてR3醸造年度は、すべての仕込が驚きの『特等山田錦』なんだそうです。
5年前から取り組んでいる酒米栽培ですが、なんと5年目にして特等米が出来たとか。 それにしても値段据え置きの大判振舞いは、嬉しい限りですね。
海を挟んだ向かいには九州産山田錦の一大産地『糸島』があります。 気候の似た壱岐では山田錦の栽培も進められていて、島オリジナルの酒米も育成中なんだそうです。
その山田錦らしい厚みのある味わいが出ているのでしょうか、このお酒は結構なボリューム感があります。
『SILVER』シリーズは5種類の酵母を使い分けた芳醇旨口の酒が多い
ところで、横山フアンの皆さまはよくご存じだと思いますが、 SILVER(純米吟醸)シリーズにはよく見ると数字が付されています。
これ実は、酵母の種類なんです。 『7』は7号酵母、そして難解なのが『189』『1810』『1814』。 18号酵母のお酒と9号酵母、10号酵母、そして14号酵母のお酒をブレンドしたものなんです。
この『7超辛』は協会7号酵母のみが使われており、特徴であるイソアル系の華やかな香りも、落ち着いています。
杜氏によれば『純米吟醸よこやま SILVER』は、香りは立ち香よりも含み香を重視し、ふくらみと甘みのあとに酸できれるような酒質をイメージしているとのことです。
生酒の爽やかで透明感のある香りがあり、フレッシュな酸と上品な含み香。 そしてスッキリとした旨味のあとに適度な苦味で、より後口が引き締められています。
バランスの取れた生酒ならではの豊かな風味、ボリュームのある味わいだね! 基本が甘めなので、超辛といっても辛さの中に奥深い甘旨味が浮かび上がる感じかな。
長崎壱岐の日本酒『よこやま 純米吟醸 SILVER 7超辛』と今夜の肴
玄界灘に浮かぶ壱岐島は、身の引き締まったケンサキイカやブリなどがとれるお魚天国。 そして、サザエや、弾力と濃厚な旨味のアワビなど多彩な海鮮が楽しめます。
対岸の呼子のケンサキイカは最近不漁続きで、半島の国の乱獲だけではなく日本海西部の著しい水温上昇が原因で、流入する対馬海流が弱まって、結果的に太平洋側に流れているそうです。
そのせいか、宮城県沖や八戸沖ではケンサキイカが多く獲れるようになり、反対にスルメイカがサッパリ獲れなくなっています。
いやな先行不安が頭をよぎりますが、兎に角も美味しくてボリュームのある旨辛のお酒には、コリコリしたイカの刺身が最高ですね!
『重家酒造』の紹介
『重家酒造』さんは、1924年(大正13年)の創業。 壱岐島には麦焼酎500年の歴史があり、明治期には17もの日本酒蔵あったそうですから後発でしょうか。
そして、市況の低迷や杜氏の高齢化により日本酒造りを1990年に中止。 当蔵を最後にして、日本酒造りが島では途絶えていました。
先代から酒蔵を継いだのは、横山雄三さんと太三さんの兄弟。 蔵を次世代に引き継ぐための新たな事業として、途絶えていた日本酒造りを復活させようと決意します。
弟の太三さんは東京農大醸造科に学びますが、専ら焼酎が専門だったそうです。 然しながら多くの蔵元や業界の方と会ううちに、清酒蔵を復活させる思いが募ります。
そして『東洋美人』を醸す澄川酒造場の澄川社長のもとで、2014年から5年間修行を行うことになります。
読者の皆さんもご存知のように、澄川酒造場さんは2013年に未曾有の豪雨被害で酒蔵が浸水流失。 全国からの多くの支援で、酒蔵を再建されています。
そんな不屈の精神でお酒を醸す澄川社長のもとで、太三さんは一つひとつの工程を丁寧にこなしていく緻密な造りのノウハウを学び取ります。
太三さんは泊まり込みで杜氏となって日本酒を製造、『横山五十』が完成。 そして2作目の『純米大吟醸横山50』が『九州S1グランプリ』で見事準優勝を果たします。
一方、日本酒復活には設備を新設する必要がありました。 莫大な建設資金もそうでしたが、水の確保が大変だったそうです。 仕込み水の確保が一段落した後はようやく酒蔵の設計です。
蔵の広さやタンクをコンパクトにし製造規模は1000石。 蔵内5℃以下の完全冷蔵と、分析機器や最新醸造設備を活用した最適な醸造環境を整備します。
そうして2018年5月、重家酒造さんの日本酒蔵『横山蔵』は壱岐島に28年ぶりに復活したのです。
まとめ
壱岐にはもともと日本酒文化があったものの、16世紀頃に大陸から蒸留技術が伝わり、麦焼酎が造られるようになったそうです。
そうした経緯から壱岐は『麦焼酎発祥の地』と言われており、500年以上の伝統の技を継承する7つの蔵元があります。
そんな麦焼酎一択であった島に、重家酒造さんの日本酒蔵が再建されたのに続いて、最近クラフトビールを醸す酒蔵さんが復活したそうです。
エメラルドに輝く青い海と白い砂浜、そして断崖絶壁のまさに絶景の島『壱岐』。 ウニやイカ、鰤などの絶品グルメと日本酒、焼酎、ビールの飲み歩きにいき(壱岐)たいですね!
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。