熊本の花の香『産土 2021山田錦』は瑞々しい果実のような味わい

花の香 産土 山田錦

日本酒フアンの皆さんこんにちは!

今回は、熊本県は花香酒造の『産土(うぶすな)2021山田錦』を紹介します。

この産土(うぶすな)は、熊本県外の特約店向け(14店舗)に従来の『花の香』に代えて、新規投入されたブランドなんです。 

その第一弾の『エフェルヴェセント』は、瓶内二次発酵/生酒/3年熟成の仕様ながら、シャンパンのような味わいとデザインで大人気を博しています。

さて第二弾となる『産土 2021山田錦』、一体どんな味わいなんでしょうか?

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『産土 2021山田錦』は、土着の発想で醸す発泡性の甘旨みが弾ける

阿蘇の火砕流堆積層が生む『岩清水』が、味わい深い酒を作り上げている

このお酒の仕込み水は、蔵内の井戸に湧き出る地下水。 それは僅かにとろみを感じる中硬水(87mg/L)で、代々守り続けてきた元神社の井戸水なんだそうです。

歴史をさかのぼること約9万年前の阿蘇の大噴火が、なんと40キロも離れた和水町の古代地層群の窪地に火砕流となって流れ込み、和水町の台地形成しました。

そして、噴火後の大地の地下に礫層などの帯水層が形成され、地下水が湧き出る仕組みになっています。 


《原料米》菊池川流域産『山田錦』

《精米歩合》精米歩合 55%

《酵母》熊本9号酵母

《日本酒度》- 《酸度》-

《アルコール度》13度

《造り》 生酛造り/生酒

《お値段》720 ml  1970円  

《製造》2022年1月

さて蔵のある和水町近辺は、2000年に及ぶ米づくり農業の文化が伝承されてきた歴史があり、文化庁の「日本遺産」として認定されています。

このお酒の酒米は地元和水町産の山田錦。 精米歩合は非公開ながら55%、特徴的なのは、アル度13度/生原酒の仕様と、今時のスペックで挑戦しています。 

トラマサ
トラマサ

実は昨年同じスペックで火入れながら、『別誂え産土』の名前でリリースされている。 なんと『澤屋まつもと守破離』を醸していた松本日出彦氏とのコラボ商品だ! 常に進化を遂げる神田氏らしい取り組みだね。

そして、『開栓時は栓を抑えながらゆっくり開けること』との事前情報を聞いていたのですが失念。 ビニールキャップを外すやいなや、速攻で祝砲がなりました。 

思った以上に炭酸の威力は強いですね。 それが味わいにも影響しているようです。 9号酵母の華やかな香り、味わいは生酛造りの柔らかさが感じられます

トラマサ
トラマサ

甘さは以前の花の香より抑えられているものの、ガス圧に押されて味のりが甘い泡酒かな。 むしろ味わいは夏向けで、個人的には花の香のラインが好み。 他の酒米でどんな仕様となるのか、評価はもう少し先か?

『産土』は『花の香』に替わる特約店向けの新規ブランド

『産土』の意味は、古語で産まれた土地、土地の神々を表したもの。 大地の恩恵やモノを産み出す母体の事なんだそうです。

言葉を変えれば、土着の生産風土により唯一無二の日本酒を醸すということ。 ワインで言うところの『テロワール』をそう表現したそうです。

花の香酒造さんが提唱する『産土』の要素は、『水』『米』『導(醸す)』『環境』。 天然の菌と微生物を導き、『土着の生育風土』 で醸すお酒なんだそうです。

『産土』ブランドは、これまでの花の香全国特約店69店を解散し、14の特約店に絞り込んでの展開です。 そしてこれまでの『花の香』ブランドは、地元熊本での販売となります。

産土 山田錦

産土』ブランドの発売第1弾目は、2018BYの瓶内二次発酵/生酒/3年熟成の日本酒です。 そして第2弾の『2021山田錦』も低アル発泡酒です。 

蔵元の神田さんは、日本酒を世界で定着させるため2016年12月にブルゴーニュに修行に向かい、瓶内2次発酵タイプの発泡日本酒『花火』を開発しています。

その頃から、ワインに習った『テロワール』思想の定着化、発泡系の日本酒を世界に向ける戦略が練られていたのでしょうか。

今後このシリーズの構成は地元の自然米『穂増』が2月発売で、その後はまだ発表されていません。

戦略的には、国内のコロナ禍の需要減で一旦の販売網縮小にも見えますが、ちょっと個性が弱かった『花の』から、壮大な熊本版テロワール『産土』への再出発なのかもしれません。

トラマサ
トラマサ

花の香酒造さんでは『産土(うぶすな)』とし、新政酒造さんではカラーズシリーズに『産土(アース)』の名称を用いている。 読み方を変えているので、商標登録上は受けて貰えたのかな?

 『産土 山田錦』の感想と評価
  • みずみずしい香り、アルコール度13度と非常に軽快で優しい飲み口。 ガス感ある酸味が強いものの心地よい甘旨味は、女性や初心者向けか。  淳酒旨口タイプ
  • 720ml  1970円。 味わいやお洒落なデザインから価格満足度はまずまずだが、さて酒飲みがついてくるかどうか?
  • 総合評点 8.3  ※あくまでも私個人の感想です。

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熊本の日本酒『産土(うぶすな)山田錦』と今夜の肴

熊本の農畜産物は、とても有名なブランド品がドッサリ。 中でも『馬刺し』は有名ですね。 

昨年、例の『ふるさと納税』で馬刺しを取り寄せたところ、いざ食べようと袋を見ればカナダ産!? 

見落としの責任はこちらですが、熊本って際どいことがありますね。 『ふるさと納税≠国産』を肝に銘じておくべきでした・・・

実は、日本で流通している『馬刺し』の7割は輸入品なんだそうです。 高い輸入率なので、産地確認は必須です。

馬刺しは信頼のおける店で買うか、国産を謳う専門のネット販売店を探しましょう。

会津産(国産)の馬刺し

『花の香酒造』の紹介

『花の香酒造』さんの前身は『神田酒造』。 1902年(明治35年)の創業で、神社所有の神田を譲り受けてお米を作り、神社から湧き出る岩清水で酒造りを始めたと言われます。

この地区唯一の造り酒屋も、日本酒需要低減の荒波を受けて、神田清隆さんが高校二年の時に先代は自己破産を申請、後に取り下げますが苦境は続きます。

清隆さんはやむなく高校を中退。 その後建設系などの仕事をへて、飲食店を経営しますが、残念ながら手を広げ過ぎて失敗します。

その間、家業は焼酎ブームで一時は売上げも伸ばしますが、借金は数億円にも膨らんでいました。 蔵を継いでいたお姉さんは追い込まれ、清隆さんは2011年に蔵の継承を決意します。

ところが蔵の酒造りの実態は『桶買い』で、酒米の仕入れもままならない状況にありました。 数年後、吟醸ブームの火付け役『旭酒造』のテレビ番組を目にし、早速面談を申込みます。 

『経営ノウハウ』を聞出すつもりが、桜井社長は返す刀で『酒造りのロジック』の学びを勧めます。 そして、2か月間の修行で学んだのは『小仕込みの手作業』でした。

自社ブランドを磨くことを学んだ清隆さんは、『全量自社で作る』ことを目標に、酒造りを再開します。

初年度は7000本を絞って、2か月で完売。 そこで2年目は、旭酒造の設備更新で不要となった設備を譲り受けて、前年の6倍を仕込みます。

その後熊本地震で被災するも、その復興支援で名が売れます。 そして、早くも国際コンクールで受賞を果たしたのです。 そうして、3年で造りは10倍となります

一方、酒造りと並行して取り組むのが地元での米作り。 2015年より契約農家さんと山田錦の栽培を始め、2020年では20軒の農家さんと自社で45ヘクタールも栽培しています。

さらに力を入れているのが、自社水田で栽培をする『穂増(ほませ)』という江戸時代の品種。 蔵では2019年から無農薬・無肥料で育て、生酛造りでの日本酒造りにチャレンジしています。

まさに地元の水と米に拘り、微生物などの世界が醸す『産土』の思想のもとでの酒造り、独自ブランドの強化に邁進しています。

 『花の香酒造』の概要
  • 1902年創業。神田酒造として誕生しましたが、1992年花の香酒造に名称変更。 6代目蔵元神田清隆氏(44歳)が製造責任者を兼任。社員16名。 
  • 造るのは全量純米酒で、酒米は令和1BYから全量地元・和水町産を使用。 90%精米や生酛造り、木桶仕込みの酒にも挑む。 
  • 2021BYより地元は『花の香』、全国流通を『産土』ブランドとする。
  • ワイングラスでおいしい日本酒アワード2019で3つの最高金賞を受賞。
  • 2017Kura Masterで審査員特別賞(準優勝)を受賞。 2017仙台日本酒サミット第1位。
  • 地元では毎年蔵開きを開催。酒蔵見学は有料。

まとめ

和水町にある『花の香酒造』は、丘陵地に囲まれた盆地と周囲の田園に流れる川沿いにあります。 その美しい地形は阿蘇山が生んだ自然の産物。

でも2016年の熊本地震や2020年の熊本豪雨では、酒蔵前に流れる川壁が大きくえぐられ、その傷跡は今もなお残っています。 

そんな大きな自然の脅威にさらされながら、今またコロナ禍で大きな試練を受け続けていますが、自然の摂理に逆らわない不撓不屈の心

そんな神田清隆さんの熱情は、酒造りを学ばせて貰った桜井社長よろしく今度はお返しとばかりに、酒造りの場を失った松本日出彦さんにも温かい手を差し伸べています。

意気に感じる酒業界の風潮なのか、懐の大きい話はとても気持ちがいいですね! 

さて新ブランド『産土』は、国内の販路を絞ってのスタート。 それは高付加価値戦略と海外の拡販への布石なのでしょうか。 今後の展開に注目です!

それでは皆さん、今回はこれで失礼します。

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