日本酒ファンの皆さんこんにちは!
今回は、群馬県は中之条町の貴娘酒造さんが醸す『咲耶美 (秋あがり)』を紹介します。
このお酒は、『ひやおろし』とか『秋あがり』とかは名乗っていませんが、れっきとした咲耶美の秋酒。
さて『咲耶美 (秋あがり)』、一体どんな味わいなんでしょうか?
『咲耶美 秋あがり』は、火入れながらもフレッシュなガス感も
美山錦らしい綺麗な口当たりで、しっとり落ち着いた味わい
貴娘酒造さんは中之条の山間部にあって三国山脈からの水に恵まれ、さらに冬季の冷え込みで酒造りには適地となっています。
仕込み水は、蔵から数百メートルのところにある『ぼくぼく弁天』の湧水が使われています。
水質は柔らかくておいしい軟水で、ナント地元の方も汲みに来られるそうです。
《原料米》『美山錦』100%
《精米歩合》58%
《酵母》9号酵母
《日本酒度》+1 《酸度》1.7
《アルコール度》16度
《造り》純米吟醸/無濾過火入れ原酒
《お値段》720 ml 1540円
《製造》2023年8月
酒米は『美山錦』で、酵母は901号が使われています。 穏やかな香りの中に葡萄のような香りが感じられます。
そしてこの朱色ラベルの仕様は後述のグレーラベルと同じで、無濾過原酒の火入れバージョンなんです。
他の無濾過生原酒と違ってとても落ち着いた味わいで、穏やかな香りと口当たりで綺麗にキレていきます。
でも亀口から直接瓶詰している『咲耶美』なので、フレッシュな飲み口は失われていません。
なので栓あけ時はアルミキャップに左手を添えていないと、勢いよく天井まで打ち上げてしまいますよ。
咲耶美シリーズのラインナップ紹介
『咲耶美』の特徴は、なんと言っても微発泡感にあります。
酒米は『美山錦』を主に使用して、酵母、搾り方、搾る時期、火入れの有無などの違いにより、タイプが造り分けられています。
ラベルごとの特徴をまとめてみましたので、参考になさってください。
ブランド名 | タイプ/ラベル | 特徴 |
咲耶美 | 純米大吟醸無濾過原酒/ローマ字ピンク | 1801酵母・兵庫県産山田錦35%を使用し、フルーティーな香りと米の旨味が味わえます。関東信越鑑評会首席のお酒。 |
〃 | 純米吟醸直汲み荒ばしり/ピンク | 1801酵母・美山錦55%を使用、柔らかい甘味、程よい酸が瑞々しくあと味を引き締めてくれます。 |
〃 | 純米吟醸無濾過生原酒/ブルー | 純米吟醸ピンクの咲耶美の中取りをビン詰。甘さと爽やかさを感じさせてくれます。 |
〃 | 純米吟醸直汲み生原酒/グリーン | 14号酵母・美山錦55%を使用。品のある香しさとラベル通りの青々しくフレッシュな爽快感が特徴的です。 |
〃 | 直汲み生原酒/グレー | 9号酵母・美山錦58%を使用、穏やかな香り、清涼感、後口のキレが特徴です。 |
『咲耶美 ひやおろし』と今夜の肴
群馬県は海なし県、数えてみれば日本には8つ。 中でも群馬県は、県庁所在地が海から一番遠いんだそうです。
海鮮物は他に譲るとしても、群馬は全国有数の小麦名産地。 うどんやおっきりこみが有名なんです。
でも暑さも残る秋口なので、今回は生ハムと秋鮭で乾杯です。 『咲耶美』は口当たりがよくて飲みやすい酒質なので、和食の料理と合いやすいですね。
『貴娘酒造』の紹介
1872年(明治5年)創業の『貴娘酒造』さんがあるのは群馬県中之条町。 高山村へ続く国道145号沿いの、清らかな水と緑豊かな山間の地に蔵を構えています。
長野県上田から草津、中之条、沼田、日光までの街道は、ドイツ的自然景観を持つことから日本ロマンチック街道といわれています。
そんな自然に恵まれた酒蔵の当主は6代目蔵元の吉田和宏さん。 酒とは無縁の営業仕事に従事していたそうですが、2007年蔵入りします。
蔵の看板銘柄は、蔵名からとった『貴娘』。 地元消費は下がり酒屋も減っていく中で、県外でも通用する新ブランド開発に励むことに。
亀口から飲むフレッシュな飲み口を多くの方に届けたいという一念でした。 そんな和宏さんを助けたのは、県内の蔵元さんや技術者の仲間たちです。
そして試行錯誤を繰り返すこと7年余り、2014年に直汲みの限定流通品『咲耶美』が完成したのです。
群馬県では、日本酒の低迷と後継者不足の危機感から、2003年に『群馬清酒研究会』が立ちあげられ、その後『醸衆会』にその事業が継承されている。 蔵元や蔵人、技術者の隔たりなく、各蔵独自の作り方や麹についてオープンな意見交換や、他県のお酒を試飲研究するなど切磋琢磨している。
2019年には、初めて出品した関東信越鑑評会純米吟醸酒部門で最優秀賞(主席)を受賞。 県内外にその名を知らしめたのです。
今では義理人情にあつい群馬県人らしく、先代は県酒造組合の会長。 そして和宏さんは青年部の稲水倶楽部会長として、群馬の地酒を底上げしています。
まとめ
蔵名・代表銘柄の『貴娘』の由来は、明治の中頃に女子の誕生を祝って『誰からも愛され貴ばれる子に育ってほしい』との願いが込められているとか。
一方『咲耶美(さくやび)』の由来は、神武天皇の曾祖母に当たるコノハナノサクヤビメ(木花咲耶姫)からとったそうです。
なんでも日本神話で最も美しいと誉れ高い女神で、全国1300の浅間神社の主祭神であり、安産や酒造繁栄の神様とも言われています。
ところで群馬県と言えば温泉県。 中之条町には、四方(よんまん)の病に効くといわれる『四万温泉』や『沢渡温泉』、川底から温泉が湧く『尻焼温泉』などがあります。
深まる秋の温泉で疲れをいやし、湯上りは美しい女神の地酒をいただくのもいいですね。
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。 今回も最後までご覧いただき有難うございました。