日本酒ファンの皆さんこんにちは!
しばらくぶりの投稿です。 もちろん、日本酒はいただいていましたよ。
さて投稿再開の第一弾は、阿波徳島は本家松浦酒造場さんの『鳴門鯛 純米超辛口 巴』です。 一体どんな味わいなんでしょうか?
『鳴門鯛 純米超辛口 巴』は、香り穏やかな軽快な口当たり
最新のLED夢酵母は、柔らかでふんわりとした米の旨味を醸す
昨春50年ぶりに徳島から高知へ旅行した際は鳴門線に乗り、蔵近くを通りました。
残念ながら鳴門海峡大橋と池田美術館で時間を取られてしまい、酒蔵訪問は叶わずでした。
旅行記はこちら。 春の四国旅1:鳴門で世界の名画を愛で、高知は鰹タタキで豪快に辛口酒できめる!
地形的に、北側には阿讃山脈があり南は四国山地。 その間を走る中央構造線上に流れる吉野川が徳島平野を作り上げています。
酒蔵のある大麻(おおあさ)地区は水量豊富な吉野川の旧流域で、仕込み水はその伏流水(軟水)を使っているそうです。
さて、酒米は徳島県オリジナルの『あわいちば山田錦』です。 阿波市市場町の阿讃山脈の南側斜面で栽培されており、心白が大きく良質の麹ができると評判の酒米です。
農家さん、従業員だけでなく地域の皆さんと一緒に、田植えや刈入れイベントを開催。『酒蔵が地域にとって必要な存在』との蔵元の想いがこもっているかな・・・
《原料米》『あわいちば山田錦』100%
《精米歩合》70%
《酵母》LED夢酵母12422
《日本酒度》+12.0 《酸度》1.5
《アルコール度》15度
《造り》 火入れ純米酒
《お値段》720 ml 1430円
《製造》2023年10月
そして酵母は、これまた徳島オリジナルの『LED夢酵母』。 この清酒酵母は、UV-LEDを照射し、香りや味の特徴を持つ優良酵母を選抜して生まれたそうです。
LED夢酵母は2015年に徳島県立工業技術センターで開発されましたが、現在はより進化した酵母も開発されて5種類があります。
この12422タイプは2022年度から使用され、カプチル酸を抑え酢酸エチルを適度に生産し、軽快で口当たりの柔らかい日本酒に仕上げることができるそうです。
まさにほんのりとした香りで、そして軽快な口当たりからふんわりと米の旨味が広がり、後口はドライにキレてますね。
火入れだけど冷してスッキリ飲める! 燗は旨味がさらに浮き上がる! 山田錦ならではの米の旨味が舌の上に柔らかくのっかり、その美味さが堪らないね‼
リニューアルした定番酒『 巴シリーズ』は最新設備導入で酒質が進化
2019年に酒蔵の大改修により新たな蔵での酒造りをスタートし、積年の課題であった蔵人の作業効率・酒質の向上に取り組まれています。
また同年に洗米機と純水装置、2020年には瓶詰ラインの改修と洗瓶機を新調されています。
これらの作業環境の改善により、酒造り作業に女性も加われるようになりました。
そして2022年6月にリニューアルされた定番酒『鳴門鯛 巴』はラベルを一新。
真ん中のカンパニーロゴマークは、渦巻く鯛を人魂といわれる巴に模し、原材料の生産者・蔵人・飲み手を表現しているそうです。
この辛口純米は通常の精米ですが、赤ラベルの純米酒や粒選り大吟醸には自家製『扁平精米』と呼ばれる技術の高い精米方法も行われています。
ふくよかな香りと巾のある米の旨味が、軽やかな酸味と調和している鳴門鯛は、高度な技術で醸されているのです。
『鳴門鯛 純米超辛口 巴』と今夜の肴
世界三大潮流に上げられる鳴門の渦潮、そこで育った鯛は『鳴門鯛』のブランド名が冠されています。
激流にもまれた身はとても歯ごたえ十分。 鳴門では、プリプリの刺身やふわふわの身が堪らない釜めしなど、まさに魚の王様の味わいが存分に楽しめます。
『鳴門鯛純米超辛口 巴』は軽快な呑み心地が食事の邪魔をしないので、さっぱりとした和食からしっかりとした味付けの料理まで相性抜群!
今夜は、徳島特産の『阿波尾鶏』ではないですが、鳥の蒸し焼きで合わせてみました。
『本家松浦酒造場』の紹介
『本家松浦酒造場』さんは、1804年創業の徳島県最古の酒蔵。 ナントご先祖は蒙古と戦った肥前の松浦党に繋がるそうです。
撫養街道に面した酒蔵には、長屋門・東酒造・仲酒造・西酒造・精米蔵などの国登録有形文化財が現存し、見事に近隣の味噌蔵とも調和しています。
さてそんな歴史ある酒蔵を継ぐのは、10代目蔵元杜氏の松浦素子さん。 幼いころご両親の離婚により実家を離れ、以来酒蔵とは無縁の生活を営んでいました。
そして自立した女性を目指してIT業界に身を置き、新規事業の立ち上げや社長秘書などのキャリアを重ねたものの、40半ばにバーンアウトしてしまいました。
そんな時に偶然実兄と遭遇。 実家に帰ってくればとの言葉を受けて、兄をサポートすべく2009年4月に入社しました。
長兄の松浦一雄氏は、山梨大学の大学院を出て大手酒造会社の研究所に入所。 そこで『超音波霧化分離現象』を発見し、日本生物工学会技術賞を受賞します。
1997年に実家に戻り、同技術を酒造りに応用。 2000年に『霧造り製法』を開発して『純米酒霧造り』を発売すると、年商数千万円の大ヒットとなります。
しかし2006年の酒税法改正で25度もある商品は焼酎と同じとされる理不尽な扱いに憤り、学究肌の一雄氏はより広い分野で技術開発を目指していくことになるのです。
一方11歳年下の松浦正治氏は、東京農大を卒業後国税庁醸造研究所で4年間修業。 2000年に蔵入りし杜氏の下で製造責任者を務め、2008年には自社杜氏となります。
9代目一雄氏はこうして兄弟に酒蔵の将来を託し、2011年3月本家松浦酒造場を退社したのです。
思いがけず置き逃げのように10代目のバトンを受け継いだ素子さんですが、目指したのが『人が集まる酒蔵』。
酒蔵と醤油蔵をセットで巡る『Kura&Kura見学』や、母屋の一角を改装して店舗を造営。 そして月一度蔵の中庭で『たちきゅう』なる酒飲みイベントを仕掛けます。
徳島県の令和3醸造年度の清酒製造は、全国44都道府県の中で最小。15年前と比べて4分の1に減ってきている・・・ 県人口も少なく、リキュールや大都市圏と輸出に活路を見出そうとしている。
そして次男の正治杜氏も、『鳴門鯛 純国産 無添加純米』などの新商品を発売し、海外のコンテストで数多くの賞を獲得します。
中でも、IWC 2015では『ナルトタイ 純米 水ト米』がSAKE部門純米酒最高金賞を射止め、以降毎年のように数々の栄誉を受けています。
しかし残念なことに、日本酒需要の低迷から売り上げは低迷し有利子負債が重くのしかかり、2017年8月事業譲渡により旧蔵は清算となりました。
新会社に社名・商品ブランド・社員が引き継がれ、10代目蔵元は頑張って就業されています。 現在のオーナーは太陽光発電を行う日生開発となっています。
素子さんは、2022年より蔵元杜氏となり頑張られています。 2022~24年で酒蔵入場者を倍増させ、直売所売上は36%の増加。輸出は2018年から4年で20%増と、立派!!
まとめ
まさしく波乱万丈の日本酒物語。 幼くしてのご両親の別離、そしてご自身の家族との別れ。
そして果敢に挑み続けたその半生を振り返った時に、血を分けたご兄弟との出会いから時計の針が再び動き始めたルーツへの旅路。
逞しくもあり、そして時に優雅に彩も見せながら伝統蔵の歴史を紡ぐ様は、ご先祖様のお力なのか、あるいは日本酒の神様のお力なのでしょうか?
近くには、遠く兵庫からコウノトリが渡ってくるといいます。 日本酒の伝統文化継承に身を焦がす10代目に、福が舞い降りることを願ってやみません。
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。