皆さん、こんにちは!
今回は、秋田県は湯沢市の『福小町 特別純米 号外編』を紹介します。
湯沢といえば、以前紹介した花邑を醸す両関酒造さんなどがあり、かつては東の灘とも言われた秋田の酒処。
『福小町』を醸す木村酒造さんは、その伝統の酒造りを今も残す老舗酒蔵。
さて、『福小町 特別純米』は一体どんな味わいなのでしょうか?
『福小町 特別純米 号外編』は旨みが生きた生原酒らしい含み香がいい
『福小町 号外編』は軟水仕込らしく口当たりがとても柔らかて上品な味
少し前に紹介しました両関酒造さんの『花邑』、名水百選の力水が仕込み水として使われていましたね。
でもその近くにある『福小町』の仕込み水は、雄物川の伏流水です。 『力水』同様に軟水で、辛口の酒を意識して造っても、口当たりの柔らかい酒が出来上がるそうです。
《原料米》『吟の精・ぎんさん』
《精米歩合》55%
《酵母》K1801
《日本酒度》±0 《酸度》1.6
《アルコール度》17.5度
《造り》生原酒特別純米
《お値段》720 ml 1562円 (税込)
《製造》2021年6月
麹米は『吟の精』で酛立てとなっています。 『吟の精』は、『秋田酒こまち』が開発されるまでは、『美山錦』同様に県内で多く生産されていましたが、いまでは希少な酒米。
特性としては、麹米の生成に優れ、キレのある味わいを生み出すとか。 吟醸酒用に開発され、ふくよかな旨味と爽やかな味わいが特徴なんだそうです。
一方掛米は、一般米でありながら酒造適正に優れた新品種『ぎんさん』を使用しています。 精米特性に優れ、またアミノ酸が少なくて後味が綺麗に仕上がるそうです。
口に含むと、いかにも生原酒らしいボリューム感たっぷりの含み香、うまみたっぷりの中にさわやかさもあります。 酒米由来でしょうか、綺麗な後味です。
また酵母は純米吟醸仕様の『協会1801』で醸されています。 酢酸イソアミル系のバナナ、白桃系の香りで、『花邑』よりは少し抑えられた程よい華やかさでしょうか。
調べてみると、『黒・号外』なるものもあるそうだよ! 芳醇で深みのあるまろやかな香味が楽しめる一回火入れ。 号外と言いながら、色々出して頑張っているね!
『福小町』の造りの特徴は、秋田伝統の『寒造り』
『木村酒造』さんではあえて小さなタンクで仕込み、『品質』にこだわっています。 細かい温度管理がしやすくて、より繊細な味わいが出てくるそうです。
毎年、米の出来や気温、雪の量などが変わるために、同じ味に仕上げるは至難の業。 そのため、醪の最高温度を低く抑えて、醗酵日数を長くかける『寒造り』にこだわっているそうです。
そしてこのお酒は、もろみを圧搾した後いっさい炭素濾過されていません。 お酒本来の旨みが生きており、コクと香りに優れた豊かな味わいですね。
秋田の日本酒『福小町 特別純米』と今夜の肴
今夜は、銀鱈の焼き物。
暑い日がつづき、体がギラギラしたものを求めていますね。 冷えたお酒とギラギラの『銀鱈の焼き物』で体を癒してみました。
『木村酒造』の紹介
『木村酒造』さんは元和元年(1615)の創業。 秋田では2番目に古い400年の歴史ある酒蔵です。
豊臣秀頼の家臣で、夏の陣で討ち死にした木村重成の息子が湯沢に落ち延びて、造り酒屋を始めたとされます。
明治14年、明治天皇巡幸の際に宮内卿が当家に宿泊し、その当時の酒名『男山』に対して女性的な味わいを感じて、『福娘』と命名されたそうです。
ところが昭和に入り、秋田の酒も全国に広がって商標権問題が発生し、 当地が歌人の小野小町生誕の地であることから『娘』を『小町』に変えて、『福小町』の酒名が誕生したのです。
平成に入り、蔵は経営危機を迎えます。 そのとき、親戚筋であった由利本荘市出身の映像制作大手『東北新社』の植村伴次郎氏を頼り、1996年にグループ入りすることなります。
更にその後、2000年に東北新社系列のナショナル物産と合併、2013年5月にはナショナル物産より分社化され、100%子会社となります。
実は、1997年に日本酒の級別制度が廃止された際は、全量特定名称酒造りに変更します。 さらに、高級酒に特化したウワズミ戦略をとり、ブランド価値を高めます。
それが、IWC2012において頂点である『チャンピオン・サケ』受賞に見事結びつきます。 これを契機とばかりに分社化し、『福小町』ブランドを主力とした認知度向上を図ります。
『福小町』を世界に通じるブランドにすべく、東北新社グループの会社を通じて海外にも拡販され、いまコロナ禍にあっても輸出は好調なんだそうです。
IWC2012 チャンピオン・サケ受賞のあとも、SAKE COMPETITION 2019、Kura Master2020 、ワイングラスで美味しい日本酒アワード2021 などのコンテストで上位入賞しているね。 秋田の酒の中でも秀逸だ! もっとアピールすればいいんだがね。
まとめ
秋田県で一番小さい酒蔵と言われながら、各コンテストで高く評価されている『福小町』。 量産に走らず、『寒仕込み』や『地元酒米』にこだわり、手造りの日本酒を造り続けています。
秋田駅ビルにある酒屋さんで電車で楽しむお酒をさがしていると、純米大吟醸2本を手にした女性に『これで、大丈夫でしょうか?』と声を掛けられます。
『間違いないですよ。でも、ちょっと見てみましょう』と、少し変わったのがないか探してみます。 そして、インパクトのある手書きラベルを発見。
未だ飲んだことがなかった『福小町』は綺麗な味わいとの記憶があり、手にした説明書きに納得。 思わぬ展開に、筆者も責任購買したのがこの『福小町号外編』でした。
それにしても、親戚筋の秋田経済人の有力者に手を差し伸べてもらって、蘇った酒蔵。 その大恩を忘れず手練れを磨き、コンテストの頂点を極めて『鶴の恩返し』を見事果たしましたね!
それでは皆さん、今日はこの辺で失礼します。