日本酒ファンの皆さんこんにちは!
今回は山口県は美祢市の大嶺酒造さんが醸す『Ohmine 3grain/大嶺3粒出羽燦々』を紹介します。
昨年10月山口の湯田温泉酒祭りでは、一番の溌溂とした飲み口に感動しました。
有名な観光地『秋芳洞』の近くにある『大嶺酒造』さんは、最新鋭の設備に囲まれた新蔵がオープンしたばかり。
そんな真新しい酒蔵で造られる『Ohmine 3grain/大嶺3粒出羽燦々』、一体どんな味わいなんでしょうか?
『大嶺3粒出羽燦々』は低アルでほの甘く、まろやかスッキリ味
ナント仕込み水は、飲めば長寿の泉に沸くエメラルドの名水
このお酒の仕込み水は蔵から2キロほど離れた『別府弁天池』の湧水で、日本名水百選に選ばれている伝説の泉です。
北海道で言えば『神の子池』のように透き通った色合いで、カルシュウムのみが高い数値の軟水なんだとか。
なので日本酒造りにとってはそのカルシュウムが酵母の働きを助け、低温でも発酵がスムーズに進むのだそうです。
さらにこの湧水は川を下って酒蔵の自社田にも引水され、山田錦を見事に実らせています。
《原料米》『出羽燦々』100%
《精米歩合》50%
《酵母》-
《日本酒度》- 《酸度》-
《アルコール度》15度
《造り》*純米大吟醸原酒/火入れ
《お値段》720 ml 1980円
《製造》2023年3月
さてこのお酒の酒米は、その山田錦ではなくて山形の『出羽燦々』。 山田錦や愛山に比べてキリっと淡麗に仕上がっていますね。
低アル原酒の今流の造りで、まろやかで静かに語りかけてくるアプローチは、まさにワインにはないお米の旨味の味わいです。
『Ohmine』の造りの特徴は低温発酵で仕上げる低アル14度
『Ohmine』の造りの特徴は、秋山さんの好みのフルーティな味わいを生むアルコール14度の設定。(注:この出羽燦々は15度)
そしてもう一つは、低温発酵による甘旨味の醸成。
これは先にあげたカルシューム濃度の高い軟水仕込みと相まって、じっくりと低温発酵で醸すことで絶妙な甘みバランスが醸成されています。
水がとてもいいね。ふくらみのある甘旨味が広がり、ゆるやかに酸味が上がって綺麗にきれる。 意外に芯があって、どんな料理にもいけそう!
また設備は最新のクリーンルーム工場のようにステンレスの壁や醸造器具で揃えられ、空調コントロールされています。
日本酒蔵やワイン蔵でもなく、ウインドビューはまさにクラフトブリューワリー。 一方外観のカフェの佇まいからはまるでケーキ工場のようです。
『Ohmine』の米粒マークは少ないのがより低精白!
ところで皆さん、ボトル表面に描かれているのは米粒マークのみですが、その意味はご存じでしょうか?
ファウンダーの秋山さんが考えたのは、国内市場ではなく世界市場。 なので表は米粒の数値的シンボルマークのみ。
ブランド名は日本語表記ではなくアルファベット表記で、裏面には日本語での品質表示があります。
当初は特定名称酒の表示があり、1粒は純米大吟醸、2粒は純米吟醸、3粒は純米酒をあらわしていました。
しかし2020年より、精米歩合の違いで、1粒(29%以下)、2粒(30%-49%)、3粒(50%以上)の表現に変更されていますのでご注意ください。
ウーン! このお酒は50%なので、国税庁の基準だと純米大吟醸(50%以下)になるけど、『Ohmine』分類では3粒ってこと!? トラマサは貧乏人なので3粒しか買わないのでいいけど、ややこしいね。 つまりプレミアム路線ってことかな。
『Ohmine 3grain/大嶺3粒出羽燦々』と今夜の肴
日本最大級のカルスト台地『秋吉台』や東洋屈指の大鍾乳洞『秋芳洞』がある美祢市。
そんな特異な地質構造ゆえに、特産品と言えば『梨』や『栗』そして『牛蒡』。
ちょっとお酒のつまみになりそうなものは見当たらず、ならば『味噌田楽』で、柔らかなふくらみのある『大嶺3粒出羽燦々』と合わせてみました。
『大嶺酒造』の紹介
『大嶺酒造』さんの創業は1822年(文政5年)。 桶売りが主体だった酒蔵は、経営難から1955年(昭和30年)に酒造りを休止します。
その際、蔵元さんに貸付をしていた祖父の秋山金市さんに建物と酒造免許が渡りますが、秋山家に酒造りを引き継げる人はいませんでした。
その後2010年に酒造りを復活させたのは、金市さんの孫にあたる秋山剛志さんでした。
剛志さんは1980年の山口県美祢市生まれ。 2002年に高知工科大社会システム工学科を卒業後、2004年からニューヨークはデザインラボで腕を振るっていました。
彼の地で友人と日本食とSAKEを飲みながら徐々に日本酒への想いが膨らみ、ついには故郷での酒づくりを志し2009年に帰国したのです。
トラマサも、24歳の時にクロアチア・ザグレブの民族舞踊祭に日本の代表的民謡である『越中おわら』の皆さんと参加したことがある。 欧州各国の舞踊団やクロアチアの方々と交流する中で、日本の暮らしや風土などを聞かれ、自国愛に目覚めたよ!
勿論家族は反対。 大学で学んだ『シビックプライド(市民の誇り・愛着)』を胸に、農業や地域資源を巻き込んで地元経済を活性化させる信念を貫きます。
まずは酒造りは素人ゆえ、『山頭火』で知られる近隣の金光酒造で酒造りを学びます。
海外から『SAKE』を見てきた剛志さんの日本酒造りは当初批判を受けますが、山口の酒造業界は懐深く受け入れてくれたのです。
そして2010年、誰もがあっと驚いた斬新なデザイン。 そして誰もが飲みやすい柔らかな飲み口の日本酒『Ohmine』をレリースしたのでした。
注目を集めたSAKEは3つ星レストランで提供され、2013年にはスイスで開かれたダボス会議のパーティーで各国首脳に振る舞われ、一躍世界の注目を集めます。
蔵を持たない『大嶺酒造』でしたが、男気を見せた『東洋美人』を醸す澄川酒造さんで間借りしての醸造は足掛け8年。
2018年、ボトル同様北欧ストックホルムのデザイン事務所が携わった真っ白な外観を纏って、故郷の美祢市に酒蔵が復活しました。
世界から日本を見ると、モノやコトの本質が見えてくる。 真正面からSAKEの造りもボトルも酒蔵も洗練された北欧デザインで表現したのは、先駆的と言えるね! 異端は先端だ!!
そして建物がスタイリッシュならば、ノースフェイスとコラボしたスタイリッシュな作業着も、蔵人のモチベーションを向上させています。
さらに蔵人らの働き方も週休二日制を採用し、山口のローカルから一気に世界基準へとスケールアップしたのです。
まとめ
皆さん、いかがでしたでしょうか?
ところで真新しい酒蔵の入り口には、ネオンサインで『2018 AGAINST SAKE WORLD』というメッセージがあります。 抗うような男気が迫ってきますね。
酒質やボトルなどの綿密なデザインと根源的なメッセージ、そして新しい酒文化の発信基地とでもいうような酒蔵の設え。 何もない山口の山間地で見事にやり切っています。
ひところよく言われた、農の6次産業化。 今や誰もが考える戦略ながら、地域や業界の『範囲の経済』と『規模の経済』の間で、まだ留まっているのでしょうか?
オンリーワンの世界をSAKEの世界に築いて、『AGEINST WINE WORLD』などと嘯いて、いや本気でじっくりとチャレンジして欲しいですね!
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。 今回も最後までお読みいただき有難うございます。