日本酒ファンの皆さんこんにちは!
今回紹介する『花泉酒造』さんは、昨年紹介した『水鏡に浮かぶ只見川霧幻峡の渡しの絶景と会津坂下の酒蔵巡り』の只見川よりも、南に位置しています。
大雑把に言うと、花嫁行列で有名な会津祇園祭の会津田島と、雪深い只見の中間と言ったところにあります。 それでも分かりませんよね?
兎に角飲むしかありませんね! さて南会津の『七ロ万』、一体どんな味わいなんでしょうか?
『七ロ万』は夏酒らしい瑞々しくて穏やかな香りの酒
『ロマン』シリーズは、米・水・人・酵母にこだわりぬいた地酒
『花泉酒造』さんがある南会津町南郷地区は、毎年2mも雪が積もる豪雪地帯。 周囲は1500m級の山々に囲まれています。
尾瀬を源流とする伊南川が村をつらぬき、豊富な雪解け水はナラやブナの森の営みによって時間をかけて濾過されます。
仕込み水の『高清水』は、林野庁『水源の森』百選にも選ばれた名水で、その水源地の湧水を用いています。 ミネラル分が少なく、とても柔らかい水だとか。
また、酒米は地元南会津産が多く使われています。 ここ南会津は高冷地であり、夏から秋にかけての寒暖差が大きく良質の酒米が育つのです。
《原料米》麹米『会津産五百万石』(20%)掛米『会津産五百万石』(72%)『ヒメノモチ』(6%)
《精米歩合》50%
《酵母》うつくしま夢酵母
《日本酒度》- 《酸度》-
《アルコール度》16度
《造り》もち米4段仕込/純米吟醸/一回火入れ
《お値段》720 ml 1840円
《製造》2022年6月
酒米は自家精米が行われており、毎年の米の状態を確認しながら、丁寧に精米されています。 米ぬかは特産トマトや米の肥料に、そして会津牛の飼料にと無駄なく使われています。
また酵母は『うつくしま夢酵母』を使用しています。
毎年6月に発売される『七ロ万』ですが、果実の様な香りに加えて上品な甘み。 口に含むとスーッと喉に落ちていく、とても滑らかな酒質に仕上がっています。
雪深い地ゆえに、自給自足や自然との循環の考えが、酒造りによく表れているね! 人も米も水も、本物の『THE JISAKE』だね!!
『七ロ万』をはじめ全銘柄で『もち米四段仕込み』を行う
『花泉酒造』さんの造りの特徴は、全銘柄で『もち米四段仕込み』が行われています。
一般的な三段仕込みの後に、さらに蒸したもち米を熱いまま仕込む『熱掛け(あつがけ)』が、加わります。
手間やコストが掛かる『四段仕込み』を行うのは今や当蔵のみで、そのやわらかい甘みは県内外で評価が高まっています。
そんな伝承技法も、2019BYからは純米大吟醸や純米吟醸などの銘柄で、適温へ冷ましてから仕込む新しい四段仕込に進化しています。
とろりとした濃密な風味は、他とは一線を画した独特な甘口酒として存在感を増しているそうです。
『ロ万』シリーズの紹介
この『七ロ万』をはじめ『ロ万』は季節限定酒が多いシリーズなので、参考までに名称・発売時期と特徴を紹介しておきます。
名称 | 造り(もち米4段仕込) | 特徴 |
ロ万純米吟醸 | 麹:五百万石/掛米:夢の香60%、無濾過一回火入れ | 通年販売。華やかな香りと、コクがある旨味と後口のキレとの絶妙なバランスが特長です。 |
一ロ万 | 麹・掛米:五百万石/45%、無濾過原酒 | 12月発売。ロ万シリーズ の原点で、一ロで万の旨みを咲かせる味わい。 |
花見ロ万 | 麹:五百万石50%/掛米:夢の香55% | 3月発売。宴の席にぴったりな低アルコール酒で、ふわりふわりと花のごとく、ほどける味わいです。 |
だぢゅー | 麹:五百万石/掛米:夢の香55% | 4月発売。シリーズ唯一の2回火入れ。喉越しのキリッと感が冴える旨みたっぷりのやや甘口のお酒。 |
皐ロ万 | 麹・掛米:五百万石/45%、加水火入れ | 5月発売。一ロ万程の濃厚さはなくも、程良い酸が爽やかなキレを加え、バランスの良い仕上がり。全米鑑評会やフェミナリーズで受賞の評価。 |
七ロ万 | 麹・掛米:五百万石/50%、一回火入れ | 6月発売。果実のような瑞々しさと、穏やかな香り。シリーズ内では一番柔らかな味わいで飲みやすい。 |
十ロ万 | 麹:五百万石/掛米:夢の香50% | 9月発売。時を経て、丸みと奥深さの増した、秋出しのお酒。 |
『七ロ万』と今夜の肴
南会津町や下郷町などで生産される『南郷トマト』は、豪雪地帯として知られる標高が概ね350m以上の山間地で栽培され、60年を超える栽培の歴史があるとか。
酸味と甘味のバランスが良く、実が引き締まったしっかりとした食感が特徴で、福島県のトップクラスのトマトなんだそうです。
蔵人さんに夏はトマトや酒米を生産している方がいるそうですが、冷えた高原トマトに『七ロ万』のスッキリとした味わいは、グイグイ飲めそうですね。
『花泉酒造』の紹介
会社は1920年(大正9年)に『南会醸造株式会社』としてスタートするも、業績不振から1937年に倒産。 その際地元の篤志家5人で『南会醸造合名会社』として再出発しています。
戦中戦後の激動期を潜り抜け、『富田正宗』『伊那川』の銘柄を『花泉』としたのが1950年ごろ。 その後、1989年に酒名と同じ『花泉酒造合名会社』としています。
1980年から90年代にかけて、辛口の販売が好調で3000石を上回るほどの販売量を上げていますが、 ミレニアムを超えると一転、販売は半減してしまいます。
この危機を乗り越えるために立ち上がったのが現社長の星誠さんです。 星さんは高校生の時に蔵の近くに住む祖父と生活を共にし、南郷で生きていく決断をします。
当初から酒蔵は仕事場候補でしたが、自動車整備の仕事をへて4年後に、念願の蔵入りを果たします。 ところが花泉は『幻の酒』と言われるほどの人気を誇るも、それが仇となります。
ナント経営者の逸脱行為や小売店の転売などから国税の出荷停止を受け、小売店さんからも批判を頂戴する危機を迎えたのです。
星さんは社長へ直談判に臨み、1年後に経営陣に参画することになりますが、まだ28歳です。 社内の反発を受けながらも、社員の『意識改革』から取り組みます。
率先乗範を心掛け、徐々に社員の心をつかみます。 次に行ったのが『品質改革』で、この頃業界を驚かせた地元の『飛露喜』を模範とし、さらに花泉の味を磨き込んでいきます。
そして杜氏さんと試行錯誤の末、地元の酒米と福島県の開発した『うつくしま夢酵母』で醸した『ロ万』を2006年に誕生させたのです。
2013年に36歳の若さで社長に就いた星さんは、特約店販売に力を入れ、今また海外の受賞を契機に販路を海外に伸ばそうとしています。
元放送記者の女性採用など積極的な組織へのテコ入れが、今後どう花開くか楽しみ! 雪の華開く高原で、力を合わせた綺麗な酒造りかあ・・・ 女性のロマンもいいね!!
まとめ
雪深い南会津の山村の酒蔵。 ひと仕事終わった休憩の場で何気なく交わしてきた『酒造りはロマン』の言葉と、ふと目をやれば『号』の文字。
その『号』の字に『ロマン』の心が閃き、新シリーズの名称が決まったそうです。
そう言えば、看板銘柄と蔵名の『花泉』の由来は、仕込み水の水源地である高清水自然公園の『泉』にさく名花『ヒメサユリ』とか。
花泉で働く皆さんは、全員地元の南郷地区の方々。 雪解け水と花に囲まれ、穏やかな自然の中で醸す和の酒『ロ万』。 酒を愛し自然を愛する人々の手で、丁寧に造られています。
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。 今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。