日本酒フアンの皆さんこんにちは!
今回は福井県鯖江市にある加藤吉平商店さんの『梵 ささ雪』を紹介します。
鯖江と言えば眼鏡フレームが有名ですが、もう一つ地元の人が誇る『梵』は、多くの政府主催の晩さん会や国際イベントで乾杯酒として振舞われてきました。
加藤吉平商店さんは、日本酒としては初めての『100カ国輸出蔵』となり、看板商品の『梵』は国内外で世界の要人に振舞われるSAKEとなっています。
さて『梵 ささ雪』、一体どんな味わいなんでしょうか?
『梵 ささ雪』は気品のある香りと、ふんわりとした甘口の味わい
酒米は、最高峰の兵庫県産特A地区産山田錦で醸されている
このお酒の仕込み水には、白山山地を源流とする伏流水が地下180mから汲み上げて使われています。 水質は軟水で、酵母を活性化させるミネラルを多く含んでいるそうです。
また酵母は蔵内自社酵母で、全てのお酒に使われています。
《原料米》兵庫県産特A『山田錦』100%
《精米歩合》50%
《酵母》蔵内自社酵母
《日本酒度》- 《酸度》-
《アルコール度》15度
《造り》薄にごり活性生/純米大吟醸
《お値段》720 ml 1870円
《製造》2021年12月
酒米は、贅沢にも兵庫県産特A地区産山田錦100%。 なんとこの蔵の酒米は、他には『福井産五百万石』があるのみで、日本の最高峰の酒米しか使われていません。
そして精米歩合は50%と大吟醸クラスなのですが、この蔵ではまだ磨きが少ない部類なんです。 何故なら『梵』の平均精米歩合は34%なんですから。
『梵 ささ雪』は、瓶内2次発酵・微発泡のスパークリング日本酒
そして造りは、珍しい『薄にごり活性/無濾過生』で仕上げられ、シュワシュワの微発泡酒なんです。 酸が強めなので、アル度は15度に抑えられて飲みやすいです。
実は加藤吉平商店さんには、同じ山田錦で究極の20%磨きをかけた『梵 プレミアムスパークリング』と言う商品があります。
フランス製シャンパン瓶に封じ込め、約1ヶ月間以上瓶内二次発酵させた、究極のお酒です。
瓶内2次発酵は閉じ込められるガス量が不定なので、冷蔵保存して直前に振らないことに注意しないと、お酒の吹き出しは避けられません。 油断大敵です。
世界の乾杯酒、世界に通用する酒を目指して、『AWA酒協会』が2016年に立ち上げられた。2次発酵で透明、シャンパンと同じガス圧を持つことを規定している。 AWA酒は、シャンパンに対抗して、うすにごり酒ではダメらしいね! 世界進出の旗頭『獺祭』『梵』などは加盟していない。
とにかく口の中でプチプチと弾ける感覚は心地良くて、優しい甘口の味わいは何杯もいけます。 むしろ、後口に少し渋みがでて、シャンパンのような甘ったるさはありません。
甘味と酸のバランスが良くて、まろやかで深みのある味わいです。 飲み込んだ後は、良い香りのお米の風味が口の中に広がりますね。
『TOKYO SAKE FESTIVAL2021』の飲み比べでも、一際豊饒な味わいが印象的でした。 他の銘柄のうすにごりに比べると、味わいが濃い目でしょうか?
『梵』は、『無添加の純米酒』『国内トップの精米歩合』『氷温熟成』に拘る
蔵元の加藤団秀さんは一級建築士の資格を保有されており、新設の酒蔵設計に加えて様々な設備も独自開発されています。
2011年に三階建ての2万石の貯蔵が可能な氷温貯蔵庫が、そして14年には精米蔵が完成。 さらに2017年には、5階建ての4季醸造が可能な完全冷却の『天空蔵』が稼働しています。
今また隣地の1万坪に生産能力5倍の新工場が計画されており、需要旺盛な海外に向けての増産体制が進められています。
そんな設備の増強で心配になるのはやはり醸造体制への取組ですが、オリジナルの気泡を使った洗米機やもろみの対流を制御できる仕込みタンクなど、自社開発した機器が並んでいます。
拘りは、2003年以来の『純米酒造り』、平均精米歩合は34%と国内トップクラス。 そして0度からマイナス8度の『氷温熟成』です。
中でも特徴的なのは『1年以上氷温熟成させる』ことで、長いもので5年熟成されています。 その味わいはクリアで円やかな酒質に、さらに層をかさねた深い味わいがあることでしょうか。
新しい酒蔵では、BOSEスピーカーと振動版を設置して、モーツァルトやバッハを聞かせて発酵・熟成を促しているらしい。 醪を櫂棒でなく、タンクの水温差による対流や音の揺らぎで酒を醸す効果やいかに・・・
福井の日本酒『梵 ささ雪』と今夜の肴
銘酒『梵』は、無添加の純米酒、氷温熟成、そして磨きに重きを置いて丁寧に醸されています。
その凝縮された旨みは、濃厚な味付けの西洋料理にも合いそうですね。 ハレの席で乾杯酒としてもよく合いそうです。
今回は大きな赤エビと合わせてみました。 その濃厚なミソは、『梵ささ雪』の濃淳な味わいとよくマッチしてましたよ。
『加藤吉平商店』の紹介
『加藤吉平商店』さんは、江戸末期の創業で160年余の歴史ある酒蔵さんです。 創業当初の銘柄は『越の井』。 越の国の清らかな井戸から醸す酒の意味だったそうです。
そして昭和の始めに北陸の酒類品評会にて、最高位の『梵』が4年連続で最優秀賞を受賞します。
それを契機に『梵』は昭和天皇即位の式で採用されるや、数々の政府主催の式典や世界の要人が集まる『ハレの席』に使用される事になります。
高度経済成長期の1963年(昭和38年)、銘柄は全て『梵』に統一されます。 3年後には正式に商標登録され、これを契機に一層知名度を高めることになります。
加藤団秀(あつひで)さんは、1976年(昭和51年)東京の大学に入学するも間もなく先代が急逝。 やむなく大学を中退し、滝野川の醸造研究所で一から酒造りを学びます。
大阪万博を頂点とした戦後経済成長も終焉し時代は低成長へと移り、やがて『地酒ブーム』『吟醸酒ブーム』などの時を重ねていきます。
そんな時代にあって、団秀さんはひたすら本物の味を求め酒米や自社酵母、さらには製法にもこだわり、徐々に純米酒への比率を高めていきます。
その後1998年カナダ・トロントの国際酒祭りで『梵・氷山』が第1位グランプリを受賞したのを皮切りに、全米日本酒歓評会やIWCなどの品評会で次々と受賞を重ねていきます。
こうして海外販売の道が開けて、代理店の開拓や蔵元自ら出向いての直接営業によって、 2019年3月には日本酒製造会社として初めて輸出先が100カ国を超えました。
酒蔵が目指す経営革新策として、まずは外需拡大の『国際化(輸出拡大)』にいち早く取り組んきている。 積極的な海外の品評会出品戦略は当たって、獺祭の背中を追っているけど、比べて国内での人気は今ひとつ。 このお酒など昨今の発泡系の酒人気にあやかりところだが・・・
まとめ
梵(ぼん)はサンスクリット語で『けがれなき清浄』『真理をつく』の意味なんだとか。 英語表記は『誕生』『創造』を意味する『BORN』としています。
先代蔵元のネーミングは、日本酒の将来像『世界のSAKE』を予見されていたかのようです。
ところで日本酒蔵の海外進出には、国内外の生産設備増強や流通体制の整備、商社・代理店の開拓と教育など多岐の対策が求められています。
そして輸出先の商標登録などリーガルコストも多額に及びます。 工場などの直接投資なら、さらに巨額投資となる可能性があります。
やはり海外進出には、相応の企業体力(人、設備、資金)が必要なようですね。
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。