皆さんこんにちは!
今回は、福島県浪江町の鈴木酒造店さんの『磐城壽 大漁祝 紺碧』を紹介します。
以前の鈴木酒造店さんは浪江・請戸漁港に隣接し、日本一海に近い酒蔵として有名でしたが、あの東日本大震災の津波で蔵は流失、そして原発事故。
その後山形県長井市で酒造りをしていましたが、2021年3月に故郷浪江町の道の駅なみえ内で念願の酒造り復帰を果たしました。
さて『磐城壽 大漁祝 紺碧』、一体どんな味わいなんでしょうか?
『磐城壽 大漁祝 紺碧』は滑らかな口当たりでミネラル感満載の海の男酒
『磐城壽 大漁祝 紺碧』は ミネラル感のある米の旨みとキレのある喉ごし
浪江町の新蔵で醸すお酒のコンセプトは、地元の酒米、地元の水。 このお酒の酒米は早生品種のコシヒカリで、扁平精米により綺麗な味わいがよく出ています。
今後原料米には、浪江町と福島市の契約栽培農家が栽培する原料米『夢の香』を用いていく予定なんだそうです。
また仕込み水は長井蔵の軟水と違って、こちら浪江の水は硬水。 町の上水道の取水場の水を使用しているそうです。
杯を進めますと、海の男酒よろしく辛口の味わいがじわじわと迫ってきます。 ミネラル感のある米の旨味が広がり、フィニッシュは爽やかなキレのあるのど越しです。
《原料米》浪江町産『コシヒカリ』100%
《精米歩合》55%
《酵母》-
《日本酒度》- 《酸度》-
《アルコール度》15度
《造り》純米吟醸/生
《お値段》720 ml 1650円
《製造》2021年11月
酒米のコシヒカリは、この前に紹介した山口の『貴・新嘗祭』と一緒。 お米がよく溶けるのか旨みが最初に来るね、でも海の酒らしく、2杯目以降は辛苦味が立ってくる!
新蔵は『道の駅なみえ 』で町の賑わいと、新たな『海の男酒』を醸す
鈴木酒造店さんは、いずれは浪江で酒造りとの強い思いで、第二の故郷長井の地で酒造りを続けていました。
避難した後の浪江町で2014年にようやくコメの実証栽培が始まりますと、早速その収穫米で酒造りを開始します。
そして2017年3月に避難指示が一部解除されますと、今度は米だけでなく仕込み水も浪江町の水を使った『ランドマーク』を発売します。
その後徐々に浪江の街も復興し、2020年8月に道の駅なみえがプレオープンします。
そして鈴木酒造店さんは2011年3月グランドオープンの『なみえの技・なりわい館』の醸造施設運営で、念願の浪江回帰を果たしたのです。
その新蔵は400キロタンクでの小仕込みですが、一升瓶で年2万本(200石)醸造可能な設備を有し、近代的なガラス張りの設営で外から酒造りが見学できます。
浪江町の以前の住人の帰還率が1割チョット(2021年1月現在)と遅れている。水素製造プラントが出来るなど雇用創出も企画されており、鈴木さんには新たな故郷創成で頑張ってほしいね!。
福島の日本酒『磐城壽 大漁祝 紺碧』と今夜の肴
浪江・請戸魚港では、大漁で一定以上の売り上げがあると、『磐城壽』の一升瓶が貰えたそうです。 その漁港もようやく2020年4月に再開されました。
浪江の酒と食の復興はまだまだ始まったばかり。 でも大漁旗ラベルには、やはり海の魚が似合いますね。
そんな訳で今夜は、大きめの『カレイの干物』で、米の旨みと辛口の切れ味を存分に楽しみました。
『鈴木酒造店』の紹介
『鈴木酒造店』さんは江戸期に廻船問屋を営む傍ら、1840年ごろに浪江町請戸で酒造りを始めたそうです。
その生業ゆえに立地は海の傍となり、縁起を重んじる海の男たちに寄り添う目出度い名前として『磐城壽』が重宝されたとか。
ところが10年前の東日本大震災にて酒蔵全建屋が流失し、その直後の原発事故で直線距離7㎞にある蔵は避難指示区域に指定されたのです。
酒造りの資料も流され酒造りもこれまでかと思えた矢先に、県ハイテクプラザからの吉報があります。検査で持ち帰られた酵母が残っていることが判ったのです。
そこで県内の蔵元の力を借りて、その酵母を使い僅かながら2000本のお酒を醸造して、避難中の浪江の人々を元気付けたそうです。
その後、避難先の山形県米沢で酒造りの場を探していたところ、廃業となる長井市の東洋酒造さんを紹介されます。
その地に湧きだす軟水が気に入り、譲り受け後は新たに冷蔵設備を導入して、三季醸造体制とします。 被災後僅か8か月で酒造りを再開したことで、取引も無事継続できたのです。
しかしながら、雪深い気候や水の違う山形の地で濃淳辛口の『磐城壽』の味を保つのは並大抵ではなかったそうです。
縁のない長井では地元の支援者にも恵まれて、避難してきた福島の方々ともども米作りを行い、心が癒されたそうです。
そんな中で以前造られていた『甦る』というお酒を自らの心想いを重ねながら復活し、さらに農家さんとの持続的な取組の大切さにも気づかされます。
気候や水の違う山形の地で濃淳辛口の『磐城壽』の味を保つのは大変だったろうな・・・でもそのお陰で酒質の幅が広がり、山形の取引店や全国のフアンも増えたに違いないね!
浪江を去って10年余り、今年の3月にグランドオープンした浪江町の『道の駅なみえ』の醸造施設で、念願の故郷での酒造りを果たしたのです。
まとめ
浪江での酒造り再開を祝って、大介さんのご友人の皆さんが大漁旗をプレゼントされたそうでが、この『大漁祝』ラベルはその旗を模したデザインなんだそうです。
阿武隈の山並みや川を元気よく遡上するサケや、めでたい鶴と亀が描かれて、まさに故郷に錦を飾った喜びがあふれ出ていますね!
他にも『おかえり』『機関始動』『錨を揚げろ』『もやい離せ』『プレイボール』など、故郷帰還を記念したネーミングが、全国の日本酒ファンの飲み心を擽ります。
筆者は28年くらい前に、東京多摩のイベントで若かりし大介さんにお会いしたことがあります。 大介さんのオジサンとは少年野球の指導仲間でした。
子供たちが野球の試合で勝つと『磐城壽』で祝杯をあげたのが、ほんとに昨日のように思い出されます・・・
山形長井での酒造りと故郷浪江での酒造りと大変でょうが、大介さん身体に気を付けで頑張ってください。
それでは皆さん、今回はこの辺で失礼します。