日本酒ファンの皆さんこんにちは!
今回は長崎県は平戸島の『飛鸞 にこまる QUEEN 無濾過生原酒』を紹介します。
前に平戸島最西端のお酒『福田』を紹介しましたが、今回の『飛鸞』は日本で最初に西欧文化が入ってきた平戸にある『森酒造場』さんが醸しています。
さて、一体どんな味わいなんでしょうか?
『飛鸞 にこまる QUEEN 無濾過生原酒』は、ナント精米歩合が25%
地元平戸島の土地の個性を表現する世界遺産の棚田米で酒造り
『森酒造場』さんの仕込み水は、蔵から1キロほど離れたところの最教寺の山懐の湧き水を使用しています。
最教寺は、弘法大師が中国から帰国後護摩を修したといわれる『西の高野山』とも呼ばれるお寺で、平戸の山の中腹にあります。
ご利益があるのか創業当時から枯れたことがないそうで、硬度7の軟水はまろやかな甘口のお酒を生み出しています。
《原料米》麹米平戸産『山田錦』、掛米平戸産『にこまる』
《精米歩合》麹米60%、掛米25%
《酵母》-
《日本酒度》- 《酸度》-
《アルコール度》14度
《造り》無濾過生原酒
《お値段》720 ml 2500円
《製造》2023年2月
酒米には、テロワールを意識して長崎県の食用米奨励品種の『にこまる』を掛米として使用。
しかも、世界文化遺産『長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産』に登録された春日集落の棚田で生産されています。
同じ酒米を使う定番酒『にこまる』の精米歩合が65%なのに対して、こちら『にこまるQUEEN 』はナント25%。
以前、精米歩合をテーマにした企画で30%まで磨きこんだお酒が人気となり、『にこまる』になぞって25%で商品化されたそうです。
そして森酒造場さんでは、2月5日を『にこまるの日』と命名し、この日に全国一斉リリースをしているそうですよ。
生酛で無濾過原酒のつくりで、平戸のテロワールに拘る
ところで、『森酒造場』さんの造りの特徴ですが、日本古来の酒造り『生酛造り』を導入しています。 残念ながら、今年は酒蔵改修の影響で速醸酛だとか。
櫂入れなし、加水なし、濾過なしの自然に任せた酒造りは、まさに平戸のテロワールに拘った酒造りです。
搾りはすべて『槽搾り』で行われ、圧力をかけすぎず少しずつ搾られています。 よく見るとグラスには、おりがみられますね。
フレッシュ感満載の生酒はほのかな香りながら、まろやかな甘旨味に繊細な酸味が寄り添います。 14度と軽めの仕上げなので、スイスイと飲めます。
昨年日本酒フェアでのんだ未確認のお酒は、熟成感がありワイルドでミネラリティーな余韻があった。 このQweenは最初甘みを強く感じるけどスッキリ、日を置くと酸味とバランスしていい感じかな。
『飛鸞 にこまる QUEEN 無濾過生原酒』と今夜の肴
平戸は、長崎出島よりもいち早く貿易の拠点としてにぎわった港町で、古来より海と山の幸に恵まれた地。
そんな平戸で生まれた『飛鸞』には、フルーティーで軽やかな飲み口のものから深みのある風味にキレ良く爽やかなものまで、食中酒として申し分のないものが揃っています。
定番の『にこまる』ならばキレもあり、名物の『ヒラメの刺身』が合うのですが、『QUEEN』は甘口なので生ハムで合わせてみました。
『森酒造場』の紹介
『森酒造場』さんの創業は明治28年、合資で営んでいた酒蔵の廃業を機に森幸吉氏が『小松屋』で再出発。 なので、江戸期からの酒造りの歴史は途絶えています。
清酒『菊の露』、焼酎は『仙滴』の銘柄で地元に親しまれていましたが、昭和30年代に『森酒造場』へと法人化します。
造るお酒も『豊年』、そして『飛鸞』へとブランドも変遷していきました。
そして現在の当主は4代目の森幸雄氏ですが、蔵を引っ張るのは5代目専務杜氏の雄太郎氏。
雄太郎さんは、広島大学と大学院で醸造学を研究する一方、酒類総合研究所でも最先端の酒造りを学び、宮城県の銘醸蔵『佐浦』で3年間修業して27歳で帰蔵します。
その頃の蔵の造りは、杜氏が不在のため液化仕込みで造った日本酒を島内で販売する50石程度の状況だったそうです。
危機感を抱いた雄太郎さんは、早速経営改革に着手。 まずは、蔵の設備やカビだらけだった衛生面を刷新します。
そして自ら壁を塗り替え床のコンクリートを打ち直し、蔵全体の改修を実施。 さらに、古い蔵を直売店に改修し、イベントスペースも作ります。
こうして環境を整えた後はメインの酒造りですが、その造りはすでに『天才杜氏』との呼び声もあって大人気に。
今、雄太郎さんは自然を活用した酒造りのビジョンをもとに、地元米で『平戸』に貢献する酒造りに邁進しています。
5,6年前までは、なんと僅か50石程度の地元メインの造り酒屋だったというから、世の中にはまだ昔ながらの酒蔵も多いのかな・・ 要は人=後継者、金=補助金、モノ=契約米と個性ある造り、そしてIOT! まだ遅くはないよね。
まとめ
『飛鸞』の名は平戸の古い地名で、その島影が不死鳥『鸞』(らん)が飛び立つ姿に似ていた事に由来します。
遡ること1550年、平戸に初めてポルトガル船が入港します。 藩主の貿易振興政策で、教会も建立され、やがてオランダやイギリスとの貿易も始まります。
大航海時代の船乗りたちは、平戸の古い時代の呼び名をもじって『フィランド』と呼んでいたとか。
僅か数百石ながら潜伏キリシタンの世界遺産の村の棚田米で、そんな歴史を引き継ぐロマンあふれる酒造り。 大いに期待したいと思います。
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。 今回も最後までお読みいただき有難うございます。