皆さん、こんにちわ!
今回は、広島県は亀齢酒造さんの『亀齢92』を紹介します。
亀齢酒造さんと言えば、西の酒都西条にあって広島でも3本の指に入る辛口の酒蔵さん。 近年は、磨き80の辛口純米が大人気ですが、なんと磨き92のお酒を作り出したのです。
それでは早速ご紹介しましょう。 亀齢酒造さんの『亀齢92』どんな味わいなのでしょうか?
『亀齢92』は92%とは思えない味わいのバランス、のど越しが抜群にイイ
円やかな軟水仕込みで、爽快なのどごしを生み出している
《原料米》広島県産『八反錦』
《精米歩合》92%
《酵母》自社酵母
《日本酒度》+4 《酸度》2.4
《アルコール度》純米無濾過生原酒、17度
《お値段》1800 ml 2970円
《製造》2021年3月
東広島市西条は、冬の寒仕込みに適した気候や地下水に恵まれ、また北部の高原台地では昼夜の寒暖差に恵まれて良質の酒米が取れます。
そんなことから西条は、灘や伏見と並んで『日本三大銘醸地』といわれています。
ところが、西条の水質は発酵が進みづらい軟水。 そこで明治期に『軟水醸造法』が開発されたことで、まろやかで芳醇な味わいの『西条酒』が生み出されたのです。
『軟水醸造法』とは時間をかけて育てた麹を使い、低温で長時間かけて発酵させる製法。 つまりミネラルの少ない水に代って、麹に栄養分を与えてもらう製法なんです。
その『亀齢』の仕込み水は、蔵近くの『万年亀井戸』から汲み上げられる龍王山の伏流水を使用。 良質な水が「亀齢」の芳醇な香りや、爽快なのどごしを支えています。
飯米と同じ磨き92%ながら、低温発酵で雑味なくクリアな味わい
『亀齢92』の酒米は、広島県産『八反錦』です。 酒米の収量が減っているためより低精白で醸すことになったお酒で、今年でまだ2年目のニューフェイス。
磨かないお米は溶けにくくて雑味が出やすいのですが、低温でゆっくり時間をかけて発酵させることで、米の旨みが上手く引き出されていますね。
じつは『亀齢酒造』さんでは、2004年に低精白酒の先駆け『亀齢辛口純米八拾』をプロデュースしていて、低精白酒はお手の物。
ところで、同じ西条の地にあるサタケから新しい精米機が発売され、米の形を残した『扁平精米』や『原形精米』が可能となりました。
この『亀齢92』の精米方法は不明ですが、新精米機ではなく古来の醸造技術に磨きをかけて、酒母を従来よりも時間を掛けて丁寧に仕上げているものと思われます。
そうして、『亀齢92』は色味が残る無濾過生原酒で仕上げられ、八反錦特有の滑らかで伸びのある米の旨みが広がり、キレのある酸ですっきりとした後口となっていますね。
低温発酵の吟醸造りにより、92%精米にもかかわらず雑味なくクリアな味わいは、昨年よりも、まろやかさが増した感じかな。
広島の日本酒『亀齢92』と今夜の肴
『亀齢92』は、広島では辛口のお酒。 といっても、無濾過生原酒で透明感のあるスッキリ味なので、何でも合うのではないでしょうか。
今夜はバイガイの煮物が辛口スッキリ味によく合い、盃がよく進みました。
亀齢酒造の紹介
酒名『亀齢』は、『鶴は千年、亀は万年』で知られる長寿のシンボルにあやかって命名されたとか。
その『亀齢』の名が全国に広まったのが大正6年(1917年)の全国清酒品評会で、『月桂冠』『賀茂鶴』とともに、日本初の名誉賞を受賞したことに始まります。
そんな歴史のある『亀齢酒造』さんでも、以前はもっぱら普通酒を作っていたそうです。 転機となったのが、20年前に香川の『丸尾本店』さんで杜氏を務めていた西垣親子を招聘したことです。
但馬杜氏の親子は、現在息子の昌弘氏に代替わりとなり、その姿勢は職人そのもの。 そして亀齢酒造さんでは、手作りで小仕込みの酒造りに切り替えていったそうです。
亀齢酒造さんの造りの特徴は2つあります。
まず原料処理を丁寧にしていること。 精米歩合60%以下ならば、米はすべて手洗いで10キロずつに小分けしています。
また洗う水の温度を9~10度に合わせて、1%の精度で米に水を吸わせているそうです。
もうひとつの特徴は麹づくりです。 『軟水醸造法』は麹造りが肝心で、酒の出来栄えを決めるとか。 亀齢酒造さんの麹室は大きく、しかも2部屋が用意されています。
突きハゼと呼ばれる吟醸麹にこだわり、出麹まで48時間の麹づくりのところを、50時間以上かけているそうです。
そして発酵は時間がかかる超低温発酵法で行われ、米の旨みがうまく引き出されています。
さらに醪を搾るときはえぐみが出ないようゆっくり丁寧に搾り、世の中の高精白とは真逆の『磨かなくてもおいしい酒』を実現しているのです。
酒税法で、純米酒に精米歩合の規定がなくなったのは2005年のこと。 精米機が無く、お米を磨く技術が無かった昔は、精米歩合90%以上。 古来の醸造法を再現しているのかな・・・ お見事!!
まとめ
広島の『亀齢』と長野の『信州亀齢』。 創業は長野・岡崎醸造のほうが早く(1665年)も、商標登録は広島の『亀齢』が先なんだとか。
でもそこは酒造業界、大旦那さんの皆さんは太っ腹なんです。 商圏や規模も違うことから、広島の亀齢酒造さんは共存を選択します。
そこで、岡崎酒造さんは『信州』を付け加えて混同を避けたのだそうです。 素晴らしい大人の皆さんの対応ではありませんか。
実は正直に申し上げますと、それでもトラマサは初買いのとき間違えてしまいました。 信州亀齢と思い、亀齢を間違えて買って、『あれ、今日はスッキリだね?』と。
でもその味わいは忘れがたく、たとえ皆さんが間違えて買ってしまっても大正解と思います。
それでは皆さん、今日はこの辺で失礼します。