日本酒ファンの皆さんこんにちは!
今回は、長野県最古の酒蔵『酒千蔵野(しゅせんくらの)』さんが醸す『幻舞』を紹介します。
以前から一度は飲んでみたいと思っていたお酒。 誰もが飲みたいと思っているお酒にも拘わらず、造りの少なさでまさに幻のお酒。
図らずも、テニス仲間の友人から3本もプレゼントしていただきました。
そんな訳で、今回は一気に3本の試飲レビューをしてみたいと思います。 さて幻の酒『幻舞』どんな味わいなんでしょうか?
『川中島 幻舞』はとても綺麗な味わい、丁寧な手作り感が伝わってくる
近代的な工場のような佇まいながら、丁寧な手仕事で醸されている
『酒千蔵野』さんがあるのは古戦場『川中島』。 鉄道ファン憧れの三大車窓と言われる『姥捨駅』から善光寺平に下ってきたところにあります。
蔵の仕込み水は安曇野からの犀川と佐久からの千曲川の伏流水で、蔵内に新しく掘った井戸から汲み上げられています。
酒米は、信州の地酒蔵らしく地元の農家さんとの契約栽培米『美山錦』『ひとごこち』などが使われています。
さて造りの方ですが洗浄は糠抜けのよいウッドソンで行われる一方、製麹は箱麹法で30Kg単位で丁寧に行われています。
また、酵母は泡なしの7号、9号、18号、そして長野酵母など5種類が使われ、これもじっくりと熟成されています。
そして特徴的なのが、仕込みタンクはすべてサーマルタンクでの小仕込み。 さらに浸漬室から製品倉庫まですべて調温コントロールがなされています。
何でも長野オリンピックで道路工事拡張のために蔵の立て直しを迫られたそうだ。 お金はかかったけど、清潔感あふれる酒蔵は丁寧な仕事をするにはピッタリだね!
まずは1本目は本醸造から、飲み飽きしないキレ良い味わい‼
まず1本目の『幻舞・本醸造』は通年販売の定番品。
酒米は地元産『美山錦』100%で、本醸造クラスながら精米歩合は59%と高精白で仕込まれています。
そのせいでしょうか、美山錦にしては淡麗な味わいでキレよく仕上がっています。
新潟酒かと思うほどの味わいはやや辛口でバランスがよくて、まったく飲み飽きしませんね。
《原料米》『美山錦』100%
《精米歩合》59%
《酵母》-
《日本酒度》+3 《酸度》1.6
《アルコール度》15度
《造り》本醸造/瓶火入れ
《お値段》720 ml 1485円
《製造》2022年10月
続いて2本目吟醸タイプは、ふくよかでとても綺麗な味わい
さて、2本目の『幻舞/吟醸』は幻舞シリーズの原点とも言えるお酒。
酒米は本醸造と同じく『美山錦』100%で、こちらの精米歩合は49%と大吟醸クラス。 透き通るような酒質ながらも、旨味がしっかりと乗っています。
さらにキレ味抜群な味わいで、和食との相性ばっちりですね。 端麗で芳醇な香りが盃をすすめてくれます。
《原料米》『美山錦』100%
《精米歩合》49%
《酵母》-
《日本酒度》+3 《酸度》1.4
《アルコール度》15度
《造り》吟醸/瓶火入れ
《お値段》720 ml 1760円
《製造》2022年10月
3本目は無濾過生の特別純米、濃淳でフルーティな味わい!
最後の3本目は無濾過生の特別純米、酒米は兵庫県加西市産山田錦100%に変わり、精米歩合は59%と純吟スペック。
やはり味わいはガラリと変化、無濾過生の醍醐味を生かした濃淳なフルーティらしさで、複雑な幅のある味わいが楽しめます。
王様らしい香りに甘味と辛みが見事に調和し、高めの酸でスッキリと引き締まった味わいに仕上がっています。
《原料米》『山田錦』100%
《精米歩合》59%
《酵母》-
《日本酒度》4.0 《酸度》1.8
《アルコール度》16度
《造り》特別純米/無濾過生原酒
《お値段》720 ml 1705円
《製造》2022年12月
なおこの特別純米山田錦は、幻舞シリーズの中では2番目に多く造られる人気酒となっています。
3本とも綺麗な仕上がりで、丁寧な仕事ぶりが感じられるね。 幻舞の素晴らしいところは、淡麗なサラッとした味わいから野太い甘旨味まで、優しい味わいで纏われているところかな・・
『川中島 幻舞』と今夜の肴
善光寺平の周辺の傾斜地は米作に向かなくて、その昔から麦や大豆などが生産されているそうです。
小麦粉は『おやき』、様々な大豆は『豆腐』や『味噌・醤油』にと、信州独自の食文化の中心をなしています。
写真では淡麗な『幻舞 吟醸』の肴が『ホッケ焼き』。 そして『幻舞 特純 無濾過生』は『イカのヌタ』に『カボチャと揚げ豆腐』となっていますが、逆でしたかね。
飲んで初めてわかりました。 出たとこ勝負の晩酌ゆえに、ご免なさい。 でも『幻舞』は後味スッキリのお酒なので、共に日本料理で間違ってはいないと思います。
『酒千蔵野』の紹介
『酒千蔵野』さんの創業は1540年(天文9年)と古く、創業480年余の日本でも7番目の老舗酒蔵です。
一部現存する旧酒蔵は1765年頃の建立と言いますから、長野オリンピックの際の道路建設で建替えられた酒蔵は、まさに蘇りの建築物と言える超近代的な景観。
でも長野オリンピックはこの酒蔵にとっては負の遺産の影響だったのか、酒蔵新設費用が重荷すぎたのでしょう。
2007年に新たな資本先をいれて、『千野酒造場』から『酒千蔵野』へと経営体制が改編されています。
さて『酒千蔵野』の屋台骨を支えるのは、先代蔵元子女の18代目杜氏を担う千野麻理子さん。
千野家は曾祖母の代から続く女系家族で、代々女性が蔵を守ってきたとか。 なので幼少の頃から蔵を継ぐ教育を受けてきたそうです。
千野さんは、東農大醸造学科から国税庁醸造試験所を経て、1992年に蔵入り。 然しながら男性社会の酒造りの現場に中々入り込めなかったそうです。
やがて前杜氏のもとで見て覚えろ式の厳しい指導で8年間修業し、2000年に長野県最初の女性杜氏に就任します。
90年代後期の修業中、新たなスターを地元から期待されて誕生した『川中島 幻舞』。『ついつい踊って舞いたくなるようなお酒』の想いが込められているそうだよ・・
すると就任翌年には関東信越新酒鑑評会金賞、そして翌々年には早くも全国新酒鑑評会金賞受賞と、華々しいデビューを飾ったのです。
その後千野さんは酒造りの個性を求め、地元農家さんとのタッグで休耕田を活用した酒米づくりを手掛けてすでに20年。 地域に寄り添った酒造りを続けています。
まとめ
長野県は、全国でも指折りの日本酒王国。 酒蔵数は新潟に次いで全国2位の72(令和3年国税庁調査)もあります。
2021年度(R3年度)の金賞受賞数は17で、福島県と同数の1位。 福島の酒蔵数は3位の58なので率では判定負けも、連続日本一の福島をヒヤリとさせました。
またワインの醸造も盛んで、こちらも山梨に次いで全国2位の62場。 まさに発酵王国ですね。
でも間違いなく日本一なのは、女性杜氏の数7名です。 長野は少子高齢化社会の影響や、小規模酒蔵が多いのでしょうか?
因みに、全国酒蔵の製造責任者の比率は代表者親族が450者(43.5%)、社員杜氏が483者(46・7%)で、杜氏制はもはや101者9.8%に過ぎません。(国税庁調べ)
様々な構造的理由で、日本の伝統文化や日本酒文化が大きく変わろうとしています。 でも女性が醸す新しい日本酒のスタイルは、きっと世界にも通じることと信じています。
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。 今回も最後までお読みいただき有難うございます。