山形の日本酒『○嘉大山Yoshi』は貴醸酒のような濃淳な味わい

『○嘉大山Yoshi』

日本酒フアンの皆さんこんにちは!

山形県鶴岡市の大山地区といえば、その昔は東北の小灘と呼ばれた銘醸地。

毎年冬には地区を上げて盛大な酒祭りが行われるのですが、ここ2年はコロナ禍で実施されていません。

でもそんな環境下にあっても試験醸造を繰り返し、そして誕生したのがこのお酒『〇嘉大山』なんです。 

さて、一体どんな味わいなんでしょうか?

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『○嘉大山Yoshi』はカラメルのような甘みも低アルでスッキリ仕上がっている

仕込み水を少なくした超高濃度仕込が濃淳な甘旨み生む

このお酒の仕込み水は、月山山麓から流れ出てくる赤川の中硬水が使われています。

そして酒米は山形産米の『はえぬき』で、精米歩合は60%です。 加藤嘉八郎酒造さんでは、なんと精米機7台で丁寧に自社精米されています。

トラマサ
トラマサ

『はえぬき』は1993年登録の山形県開発の食用米。 今は甘旨みの『つや姫』が主流ですが、はえぬきはそれに比べてスッキリ味。 『大山』は辛口・食中酒ゆえに多用しているのかな?

 

さらに特徴的なのがお米と仕込み水の割合で、なんと『米10石:水8.8石』と超高濃度な仕込なんです。 濃い甘さを酵母が造る『酸』でマスキングした製法ですね。

最近のお酒は米の溶け過ぎを最小限にするため、米10石:水12石が一般的。 蔵の代表酒『大山十水』は『米10石:水10石』なので、さらにそれを上回っています。 


《原料米》『はえぬき』

《精米歩合》60%

《酵母》YK0107酵母

《日本酒度》- 《酸度》-

《アルコール度》15度

《造り》新酒・無濾過生原酒

《お値段》720 ml  1760円  

《製造》2022年2月

酵母は、清酒用酵母とワイン用酵母を組合わせた山形酵母の『YK0107酵母』が使われています。 高い吟醸香に酸も強くでて、低アルの仕上げが出来るそうです。

濃厚な深みのある香りと、果物を連想させるフルーティーな香り。 そして口に含みますと濃淳な甘旨みが広がり、後口は優しい余韻が広がります

トラマサ
トラマサ

この『○嘉大山Yoshi』はタンクの下方部分を抜き取った低アル。 そして上方部分は高アルタイプの『Taka』で構成されるらしい。 最初は、ブレンド酒か貴醸酒かと思った。 言うなれば、ワインというよりも『高級ブランデー』の味わいかな・・・

 

『○嘉大山Yoshi』は試験醸造酒シリーズ『Quest4-Ohyama』から生まれた

裏書の説明を読み続けますと、同じタンクの醪を日を分けて搾り、味わいの異なるお酒を造り出したとか。

なんでも、『時間差搾り』をするTFJ(単一仕込複酒精醸造)方式を生み出すことに成功したのだそうです。

『○嘉大山Yoshi』

『加藤嘉八郎酒造』さんの大看板『大山』は、ズバリ辛口酒。 筆者は40年以上庄内訪問で飲み続けてきましたが、変化は余り感じませんでした。

新酒開発を担う醸造責任者の加藤嘉隆氏が、『Quest4-Ohyama』と銘打って第1弾から第5弾にわたって試験醸造に挑み、そして完成したのがこのお酒なのです

そして新生ブランド名を『〇嘉大山』と命名。 自身の名前を分けて15度無濾過原酒を『Yoshi』、そして18度無濾過原酒を『Taka』としてリリースしたのです。

 『○嘉大山Yoshi』感想と評価
  • 驚きの高濃度8.8水仕込は、濃淳濃厚な甘旨みとフルーティな香りを生み出している。
  • 『Yoshi』は低アルなので、後口はスッキリしていて飲みやすい。 濃淳旨口タイプ
  • 720ml  1760円 食用米とはいえ3割増しの酒米を使いながらすごく頑張っています。 
  • 総合評点 8.5  ※あくまでも私個人の感想です。
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山形県鶴岡の『○嘉大山Yoshi』と今夜の肴

山形県庄内地方は、北は鳥海山、東に月山、南には朝日連峰が連なり、そして最上川や赤川が悠々と流れる日本有数の穀倉地帯です。

また鶴岡市は東北で一番広い面積を有し、変化に富んだ地形とその豊かな自然から、多くの農産物や山菜、魚介類など旬の恵みを授かっています。

そんなところから平成26年12月、鶴岡の食文化がユネスコより高く評価され、鶴岡市は国内で初めて『ユネスコ食文化創造都市』に認定されています

食の都・庄内の春の訪れを告げるのは、筍料理『孟宗汁』。 でも庄内からの取り寄せが叶わないので、近場の筍を揚げ豆腐と一緒に煮込んでお酒のお伴としました。

筍の煮物

『加藤嘉八郎酒造』の紹介

豊かな雪解け水と肥沃な平野からの米、そして寒冷な気候。 酒造りの条件がそろった庄内鶴岡は、徳川の幕臣酒井家の城下町です。

その城下町から少し離れた大山は、江戸幕府直轄の天領として酒造りで栄えた地。 『大山酒』は『庄内米』と共に北前船で運ばれていったそうです。

明治期の大火で多くの蔵元が消失した銘醸地大山ですが、それでも多くの東北の銘醸家がお手本にしたとか。 そんな酒文化を残す酒蔵も今は4蔵となってしまいました。 

さて『加藤嘉八郎酒造』さんは、1872年(明治5年)の創業。 蔵元加藤家の先祖は加藤清正に連なる家系で、分家しての創業だそうです。

トラマサ
トラマサ

清正公の嫡男忠弘の子女から分家を重ねていって、加藤姓の酒蔵はいくつもあったそうだ。 今残っている4蔵のうち『栄光富士』をつくる富士酒造もその家系。 なんだかN〇Kの番組みたいだな・・・

大山 十水

造りの特徴は、細かな手作業と機械化の切り分けで、麹造りの温度や湿度の管理、酒母モロミの温度管理などを機械化しています。

その一つは麹菌のゆりかごである製麹装置『KOS』を自社開発し、温度と湿度をコントロールしながら麹を造っています。

さらには醪のゆりかごである攪拌装置付きの『OSタンク』により、継続時間および強弱・速度を自動制御しています。 こちらも自社開発です。

これらの装置は、浦霞、白龍、蓬莱仙、春鹿などにも導入されるなど、その性能の優秀さは折り紙付きとなっていますね。

トラマサ
トラマサ

OSタンクは、当時の社長が自然な発酵対流を作るため、多大な資金を掛けて底を丸くしたものを開発。 何でも底部を球体にする技術が日本になくて、ヨーロッパで造ったそうだよ。 大したもんです! 

酒造りの思想は、『よい酒は、麹菌や酵母菌などの微生物に快適な環境を与えてこそできる。微生物と人が対話するための道具が機械である』なんだとか。

つまり、人より機械の方が優れていることは機械に任せるとの考えですね。 その証拠に、6トン仕込のサーマルタンクで仕込んだ大吟醸で、過去に2回も鑑評会金賞を受賞しています。

自前の自動機械と細かな手作業の組み合わせで、一昨年来からの試験醸造を経て生まれた新生『〇嘉大山』。 これからさらに、一皮も二皮も剥けようとしています。

 『加藤嘉八郎酒造』の概要
  • 1872年(明治5年)に創業、社長は加藤有造氏。 醸造責任者は加藤嘉隆氏。 造りは5000石。
  • キャッチフレーズは『酒は大山 愛の酒』。 菌たちのためいきに耳をすませ、人と酒、人と人の『調和』を醸すような酒造りを行う。
  • 主要銘柄は『大山』『十水』で、キレの良い淡麗辛口を主体に40種類の多彩なラインナップを誇る。
  • IWC2013 2016 2018純米酒部門SILVERメダル受賞。 Kuramaster2017純米酒部門金賞受賞。
  • 全国燗酒コンテスト2020最高金賞受賞。 ワイングラスでおいしい日本酒アワード2018最高金賞受賞。 ISC2021純米部門トロフィー受賞。
  • 全国新酒鑑評会R2年、H28年金賞受賞。
  • 酒蔵見学不可。

まとめ

江戸期からの銘醸地は灘、伏見、西条、秋田湯沢などに限られてきます。 この大山地区は小さな村ながら、酒蔵通りが昔の栄華を残しているでしょうか。

実は『加藤嘉八郎酒造』さんは酒蔵見学は不可で、この大山地区では『渡會本店』の1カ所のみ。 折角の銘醸地が、観光資源として生かされていない気がします。

でも大山の近くには、夕陽の綺麗な『湯の浜温泉』と豊富な湧出を誇る『湯田川温泉』があります。 湯田川には、郷土が生んだ時代小説家『藤沢周平』氏が逗留した旅館もありますね。

下級武士や庶民の哀歓を描いてきた藤沢氏が著わした、城下町風情を残す鶴岡。 そんな小説の舞台を散策して、浪漫にひたるのもいいのではないでしょうか!

それでは皆さん、今回はこれで失礼します。

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