皆さん、こんにちわ!
今回は、岐阜県は杉原酒造さんの『射美 特別純米 並行福発酵連鎖』を紹介します。
杉原酒造さんと言えば、『日本一小さな酒蔵』を標榜する酒蔵さんで、それゆえに醸すお酒の流通は少なく幻の日本酒となっています。
それでは早速ご紹介しましょう。 岐阜の『射美 特別純米 並行福発酵連鎖』どんな味わいなのでしょうか?
『射美 特別純米 並行福発酵連鎖』は香りよく、芳醇な甘みと旨み
杉原酒造の醸すお酒は、全て蔵オリジナル酒米の『揖斐の誉れ』
杉原酒造さんは岐阜県揖斐郡大野町にあり、近くの清流揖斐川の伏流水を使用しています。 洗米ではマイクロ濾過したものを、仕込み水はさらに炭素濾過しているものを使用しているそうです。
また酵母は蔵付き、蔵独自の酒米でいわゆるテロワールを表現してます。
《原料米》『揖斐の誉れ』
《精米歩合》60%
《酵母》自社酵母
《日本酒度》-6.0 《酸度》2.1
《アルコール度》特別純米無濾過生、16度
《お値段》720 ml 1,826円
《製造》2021年3月
杉原酒造さんの酒造りの特徴は2つあります。 ひとつ目は、全てのお酒をこだわりのオリジナル酒米のみで醸していることです。
5代目杉原慶樹さんは、岐阜県農業試験場の高橋宏基さんと地元の篤農家松久日出成さんとでタッグを組み、2004年から10年の歳月をかけてオリジナル品種を開発してきました。
冷涼な飛騨地方と違って夏は高温が続く美濃平野。 美酒を地元の水と酒米でとの信念のもとに、試行錯誤を続けた末、ようやく美濃に合った酒米が誕生します。
その酒米『揖斐の誉』は山田錦と愛知県の若水との交配種で、さらに改良が続けられ2019年にようやく岐阜県の酒造好適米として認定されたのです。
『揖斐の誉』はとても心白が大きいんだそうです。 つまりより多くのでんぷんで、多くのアルコールと二酸化炭素を生み出します。
この酒米で、射美の酒質はしっかりした甘味の深み、奥行感がよく出ていますね。 以前はそんなでもなかったのですが、最近は味の深み、旨みが乗ってきています。
よくみると酒米には、『AMS18』などの派生種があり、年々進化した酒米で醸されているみたいだ。
『射美』は手間暇かけた丁寧な酒造りで、しぼりたての風味を生かす
杉原酒造さんのもう一つの特徴は、手間をかけた酒造りの工程です。
『酒母(もと)』造りは2つに分けて造り、時期をずらして投入しているとか。 なんでもこれで酵母を活性化して、複雑な甘みを引き出しているそうです。
それから搾りの工程では、ヤブタの槽搾りや袋吊りといった昔ながらの手法で、丁寧に搾りを行っています。
独自の技術とオリジナル酒米で、見事にテロワールを表現されていますね。
岐阜の日本酒『射美 特別純米 並行福発酵連鎖』と今夜の肴
本当は、綺麗な揖斐川で育ったアユの写真を載せたかったのですが、あいにく所蔵がありません。 そんな訳で鯖の味噌煮で、射美の濃淳な味わいに合わせてみました。
杉原酒造の紹介
杉原酒造さんの近く、樽見鉄道の終着駅には日本三大桜の『薄墨桜』があります。 その途中駅の谷汲口駅は、桜に囲まれた撮り鉄マニアの聖地。
ことしも無事に咲いたのでしょうか? 山口の作家、宇野千代さんの『淡墨の桜』では、妖艶で薄幸の主人公と台風で死にかかった老桜を蘇生させることに奔走したダブルストーリーが展開・・・
さて話をもどして、杉原酒造さんを1年追いかけた大垣ケーブルテレビの番組「日本一小さな酒蔵」。 そしてその番組が2012年日本ケーブル大賞を受賞すると、たちまちに有名酒蔵となります。
番組では、小さいながらも酒造りにかける5代目杉原慶樹さんの思いと、それを応援する酒米開発とその育成栽培に心血をそそぐ人々が鮮明に映し出されています。
慶樹さんの父上庄司さんの時代、大手酒造メーカーの契約打ち切りや需要低迷から、酒蔵の造りは3分の1になったそうです。 そして酒蔵を支えるために雑貨店を始めます。
慶樹さんは大学卒業後、青年海外協力隊に応募し3年間異国の地で社会貢献をすることに。 そこで改めて日本の文化、とりわけ日本酒文化に気付かされ、家業の酒蔵を継ぐことを決意します。
いろんな酒蔵ストーリーを探し訪ねてきたけれど、国内の修行ではなく海外で日本の特徴ある文化に気付かされる・・・ いいじゃないですか! トラマサも20代に海外に行って、日本の伝統文化、守るべきことに気付かされたっけ。
慶樹さんは2003年に帰国、そして而今を醸す大西さんらと共に酒造りを学びます。
蔵元は、まさか酒造りを始めるとは考えず設備の更新等手を加えていません。 まずは酒蔵の改修から着手、慶樹さんは自らの手で麹室の壁などを張り替えています。
その一方、慶樹さんは地元志向の酒造りに欠かせない酒米開発にようやく成功して、2009年に『射美』は誕生するのです。
それから何度も東京の酒販店にお酒を持ち込みながら酒質を磨き、ふんわりとした甘い香りと、たっぷりとした旨さが漸く認められたのが、あの受賞映像でした。
トラマサがその酒販店で進められて買ったのは数年前。 数ある銘酒の中では普通かなと言う印象だった。 でも今回はエクセレント、味が乗って進化している!!
まとめ
世界でもまれな、千年以上に及ぶ日本酒の『並行復発酵』の製法をリスペクトし、その麹と酵母を能面で表現したのがこのお酒のラベル。
実は昨年慶樹さんが、造りの忙しい合間を見て『日美展』に応募するために描いたんだそうです。 よく見ると、能面の周りには麹米と胞子、滴る酒の雫などが描かれています。
そして、射美を育んでくれた地元の田植え風景や清流、鳥居などが見えますね。 このお酒のラベルには、射美と言う日本酒の神羅万象が描かれています。
家族経営の小さな酒蔵さんで、家族を優しく見つめてる慶樹さんは、お母さんやお子さんのエピソードを裏書に満載。 射美のお酒もそんな風な思いで醸されているに違いありません。
それでは皆さん、今回はこの辺で失礼します。