日本酒ファンの皆さんこんにちは!
今回は、北海道は大雪山系の麓、上川町で醸されている『上川大雪特別純米』を紹介します。
上川町で2017年に醸造を始めた『上川大雪酒造』さんは、休眠中の酒蔵を買収し三重から北海道に移転した酒蔵さんなんです。
僅か5年のキャリアながら、今や北の酒の代表格。 全国でも大人気のお酒なんです。
さて『上川大雪特別純米』、一体どんな味わいなんでしょうか?
『上川大雪 特別純米』は絶妙なミネラルバランスの天然水で、柔らかな仕上り
『上川大雪特別純米生原酒/吟風』はフレッシュさとふくらみのある味わい
上川町は、北海道の屋根大雪連峰のお膝元にあって、冬はマイナス20度にもなる極寒地。
仕込み水は、万年雪からの雪解け水が地中に浸透した天然水で、酒造りに理想的な約7°C、硬度22の超軟水だそうです。 それも絶妙なミネラルバランスだとか。
酒米は、隣の愛別町などの契約農家さんが栽培する『吟風(ぎんぷう)』『彗星(すいせい』『きたしずく』が使われています。
さて北海道旅行で購入した2本ですが、まずは緑丘蔵で醸された『特別純米生原酒/吟風』の紹介です。
《原料米》北海道産『吟風』
《精米歩合》60%
《酵母》-
《日本酒度》- 《酸度》-
《アルコール度》16度
《造り》特別純米/生原酒
《お値段》720 ml 1980円
《製造》2022年5月TB
造りは精米歩合60%の『吟風』、生原酒です。 製造年月の横にある表示は、産地とのこと。 ちなみに、『TB』は当別、『NP』は南幌、『AB』は愛別、『UR』は雨竜なんだそうです。
なんだか流行の産直取り寄せのようで、生産者さんへの感謝と自負が感じられますね。
さて5年目の造りは仕込みを変えて、当別町の低タンパク無農薬米『吟風』を協会6号酵母で仕込んだ無濾過生となっています。
総杜氏の川端氏が目指すのは『のまさる酒』。 香りの華やかさをおさえ、杯をどんどん重ねるような軽やかな後口です。
『八反錦』を父に持つ吟風は味のふくらみがあり、6号酵母の穏やかな香りがバランスよく表れていますね。
このお酒は侮れません。 東京タワーの足元の大料亭で『IWA』や『鍋島』などと飲み比べて見れば、勝るとも劣らない酒質! 先の全国日本酒フェアでも、印象に残った一本!
『上川大雪特別純米火入れ/彗星』は穏やかな吟醸香と後味のキレがよい
さて2本目は、『上川大雪特別純米火入れ/彗星』。 『彗星』は2006年の登場、1998年の『初雫』と2000年デビューの『吟風』の交配種で、道産の3番手となります。
先の『吟風』と比べて、火入れと言うこともあり香りも味わいも穏やかで、淡麗辛口よりの仕上がりでしょうか。
《原料米》北海道産『彗星』
《精米歩合》60%
《酵母》-
《日本酒度》- 《酸度》-
《アルコール度》16度
《造り》特別純米/火入れ
《お値段》720 ml 1980円
《製造》2022年5月I
さて造りを見てみましょう。 まさに大吟醸並みの手作業です。 10キロ単位の洗米、限定給水、手作業による放冷、小さな箱糀造りと続きます。
タンク貯蔵は行わず、濾過は最低限のフィルターのみで活性炭は使用していません。 10月から7月まで約70本の仕込みを10ヶ月続ける4季醸造を繰り返しています。
柔らかな味わいは仕込み水由来なのでしょう。 その中庸な味わいはバランス感を保って、後口は綺麗に喉をすべり落ちていきます。
上川大雪『緑丘蔵』のラインナップ紹介
『緑丘蔵』の『上川大雪』は純米酒に特化していて、酒米は北海道産『吟風』『彗星』『きたしずく』で醸されます。 超軟水で仕込む味わいは、繊細でやわらかな酒質です。
一方『碧雲蔵』の『十勝』は、日高山脈を源流とする中硬水の水を使っており、本醸造酒も加わって力強さとキレが際立つ味わいが楽しめるそうです。
間口が広がると迷いますので、今回は緑ヶ丘蔵の定番のお酒を紹介しておきます。
蔵名 | 銘柄 | 特徴 |
緑ヶ丘蔵 | 特別純米/吟風辛口 | 愛別町産吟風60%で醸し、唯一の“辛口”の名を冠する。爽やかな香り、フレッシュで瑞々しさあふれる旨味に、追いかけてくる辛味でドライにキレ上がります。 |
〃 | 特別純米/有機吟風生 | 当別町産JAS有機吟風60%、上質なオーガニック吟風の芳醇でコクのある旨味がギュッと詰まった美味しさです。 |
〃 | 特別純米/彗星 | 大定番の彗星60%を使用した特別純米酒。穏やかな香りに、柔らかなお米の旨味が感じられながらもすっきりとした後口は、まさに飲まさる食中酒。 |
〃 | 特別純米/きたしずく | 北海道産の一番新しい酒米きたしずく60%を使用。香味的には吟風と彗星の間くらいの感じ。バランスの取れた味わいが素晴らしい。 |
〃 | 純米吟醸/彗星 | 彗星50%の純米吟醸は、やや華やかで、バランスの取れた味わい。スッキリと綺麗な味わいは、春の雪解け水を思わせます。 |
ついでにもう一つ、もっぱら町おこし優先なので、売られている地域と銘柄を一覧にしておきます。 遠方の皆さんは、オンラインショップの予約販売が間違いないところですね。
地域&販売店 | 銘柄名 |
上川町&愛別町:スーパー、コンビニ | 神川 |
酒米生産地:酒店など | 雨竜彗星、名寄彗星、砂川彗星など |
道内の特約店(稀に首都圏あり) | 上川大雪、上川十勝ほか |
直売所 | 上川大雪、上川十勝ほか |
オンラインショップ | 上川大雪、上川十勝ほか |
『上川大雪特別純米』と今夜の肴
『食材の宝庫』と呼ばれる北海道。 蟹や鮭、ウニ、イカ、ホタテなどの海鮮物は季節を問わず、札幌や旭川などの大都市に集まってきます。
先の北海道旅行でも、札幌に進出した『根室はなまる』や、札幌場外市場で海鮮三昧を楽しんできました。
ところで北海道のお酒は、寒冷地での造りの影響や酒米などから、『淡麗辛口』のお酒が多いですね。
でも『上川大雪』は香りも穏やかで中庸な味わい。 食事の邪魔をせずに、グイグイ飲めます。 今日の酒のお伴は、肉厚で脂ぎった『真ホッケ』でいただきました。
『上川大雪酒造』の紹介
道内で20年ぶりの酒蔵を誕生させた塚原敏夫社長は、札幌市の出身。 1990年に小樽商科大を卒業後、証券会社や外資系金融機関などでキャリアを重ねます。
そんなキャリアの塚田さんが、なぜ酒造りなのか? 2011年に増毛町出身のシェフ・三国清三さんが進める『大雪森のガーデン』の運営に参加したのが、上川町との出会いです。
上川町は大雪山系の麓にあって、年間200万人を呼び込む道内有数の観光地も賑わいは秋まで。 人口3千人余の街は冬の働き場が少ないのです。
そこで上川町のメリットである『綺麗な水』『酒造りに適した気温』を活かして、冬にも仕事が出来る『酒造り』をできないか。
三重の酒蔵の友人と語った夢は、数年後にクラウドファンディングなどで資金を集め、休眠中の酒蔵を買収。 2016年8月に上川町に移転登記し、社名を『上川大雪酒造』としたのです。
酒造りと無縁だった塚原社長のマーケティング戦略は、ズバリ『高品質・少量生産』です。 2000ℓの小さなタンクに、手作業で丁寧な仕込みが行われます。
そして『地産地消の地域密着戦略』。 今では北海道も山田錦に頼らなくとも金賞をとれる北海道産米があり、近くの愛別、当別、砂川などの契約農家さんとタッグを組んでいます。
また少量生産ゆえに販売では地元優先を貫き、店舗販売はほとんど道内の特約店に限定。 オンライン販売は公式サイトのみと、『飲みたがり屋』を上川へと導いています。
上川町のコンビニでは地域限定酒『神川』がナント月に1000本も売れているそうだ。 地域と共にある増毛の『国稀』もそうだけど、みんな札幌辺りから買いに来てるそうだよ。
順調にスタートを切った『緑丘蔵』の成功パターンは、さらに帯広、函館、北見へと『産学連携』を絡めて地域振興のストーリーを広げています。
上川が『買収・移転』の初の試みならば、帯広は『産学連携』で大学構内に酒蔵を創設する国内初の試み。 新酒蔵を作る際はクラウドファンディングを活用、最高額を達成しています。
魅力溢れる海の街函館にも、函館高専と共同で廃校跡にラボとショップを開設し、酵母などの開発にも力を入れています。
北海道は地元に酒蔵を持たない地域が多く、道外の酒の消費比率は8割もあると言います。 果たして酒造免許の移転で酒蔵を作り、町おこしにと続く事業者が現れるか注目したいところです。
まとめ
五角形のシンプルなラベルデザインは、大雪山の『大』の文字、美しい雪、アイヌ文様をデザインモチーフに、日本酒の五味、甘・酸・辛・苦・渋を表現しているとか。
そんなハイセンスなデザインながらも、土臭く地域振興を掲げる『上川大雪酒造』。
地元での若き働き手確保が地域振興に肝要と思えば、上川町と小樽商大の連携による地元高校生の学位取得の仕組みづくりへの支援も行っています。
『地方創生』は聞き古した言葉、地域の魅力や技術の種は多彩です。 だけど成功事例はまだ一握り。 この差を決めるのは、殻を破る発想であり、人を巻き込んだ地に根差した取組み・・・
地域に暮らす皆さんの生活の安定と満足度の向上、そんな『町おこし』が『いいね!』を沢山もらえれば大成功でしょう・・・!
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。 今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。