新潟の日本酒『上輪新田』はミネラル感溢れる豊饒な味わい

上輪新田2020

日本酒フアンの皆さんこんにちは!

今回は新潟県柏崎・阿部酒造さんの『上輪新田』を紹介します。

以前に純米酒『あべ』を紹介していますが、今回の『圃場シリーズ・上輪新田』は、海沿いの田圃で育てられた酒米で醸されたもの。

いま新潟のお酒は個性派ぞろい。 もちろん淡麗辛口の昔ながらの傾向はあるものの、若手醸造家はお米の味わいを引き出す造りに挑んでいます。

さて『上輪新田』、一体どんな味わいなんでしょうか?

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『上輪新田2020』は海からのミネラルをたっぷり受けた豊饒な味わい

海風に倒れない短稈の酒米『楽風舞』は、軽快な味わいを生んでいる

『上輪新田』は柏崎海岸まで1kmもないところ。 風が強く吹き海水からの影響を強く受けるため、田んぼにはミネラルが多く含まれています。

風抜けの良いこの地に植え付けられた酒米は『楽風舞』。 契約農家の上杉さんと蔵元の話し合いで決まったそうです。


《原料米》柏崎産米100%『楽風舞』

《精米歩合》-

《酵母》-

《日本酒度》- 《酸度》-

《アルコール度》15度

《造り》純米生酛造り・火入れ

《お値段》720 ml  1850円  

《製造》2021年7月 《購入》2022年5月

『楽風舞』は2011年の育成品種。 短稈の良食味品種である『どんとこい』と酒米品種『五百万石』を交配した後代から育成された酒造用品種です。

ちょっと変わっているのが清酒と泡盛両方に使えるそうで、清酒は淡麗に仕上がるとか。

丈は短くて倒伏しにくいので栽培しやすく、五百万石よりも精米耐性がいいそうです。 まさにこの地にピッタリの酒米ですね。

さて、造りは生酛造りの火入れ。 定番の『あべ』同様に溌剌とした酸味があふれています。勿論米の旨みとうまく調和しています。

やはり海の近くの酒米なのかミネラル感が感じられ、最後に苦味も少しあって心地よいキレ味です。

トラマサ
トラマサ

6代目阿部裕太さんのツイッターを見てみると、上輪新田2020は確かに2021年7月の出荷。 行きつけの酒店で買ったのは2022年5月!? 2020は酒米が硬かったのでどこかで熟成されていたのかな、酒質は豊饒そのもの!!

経年変化が楽しめる契約農家さんとの米作り・酒づくりが素晴らしい!

6代目製造責任者の阿部裕太さんの酒造りは、『リストランテの最初から最後まで』。 つまり、食前、食中、そして食後のタイミングで楽しめるお酒を用意すること。

商品ラインは、米の旨みと酸味を感じる定番の『あべシリーズ』は原酒で展開。 そして進化を加速する『スターシリーズ』は、低アル、クエン酸風味、甘口貴醸酒、発泡酒を揃えます

そしてこの『圃場シリーズ』は、地元柏崎に『興味を持ってもらう』・『地域の活性化』・『景観を守る』狙いがあるそうです。

そんな想いでつくるお酒のコンセプトは、『特定圃場の米100%』『レシピの固定・生酛・原酒』『精米歩合・アル度は年で変動』なんだとか。

圃場シリーズのラインナップは以下の通りですが、来年(2022BY)以降の酒米はすべて『越淡麗』となるそうです。

 銘柄  生産地域・特徴
上輪新田契約農家の上杉氏がつくる海辺近くの上輪新田地区の『楽風舞』で醸されます。米山からの水が田んぼに流れ込み、海産物に合う酒質をねらっています。
安田鳥越契約農家の矢島氏がつくる酒蔵近くの安田地区と鳥越地区の『越淡麗』で醸されます。仕込み水は安田地区の湧水を使用。
赤田契約農家の水品氏が隣の刈羽村、典型的な田園地帯・赤田地区でつくる『五百万石』で醸されます。
野田上輪の上杉氏がつくる柏崎市最奥部の盆地・雪深い野田地区の『越淡麗』で醸されます。
『圃場シリーズ』の概要

上輪新田2020
トラマサ
トラマサ

『会津娘・穣シリーズ』もそうだけど、ひとつの田んぼからひとつの商品をつくる『圃場限定』こそが真のテロワール。 生育地の地理、地勢、そしてその年の気候等の違いをもっと伝えて欲しい!!

 『上輪新田2020』感想と評価
  • フルーティな香りに少しのガス感があり、旨みと酸味を感じてスッキリと流れていきます。 いつもながら抜群のライスワインです。  淳酒旨口タイプ
  • 720ml  1850円は、酒米のコストを考えれば十分納得のお値段です。 
  • 総合評点 8.6  ※あくまでも私個人の感想です。

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『上輪新田2020』と今夜の肴

柏崎から直江津方面の信越本線に乗れば、まさに日本海の絶景が広がります。 鯨波、青海川など鉄道ファンならずとも、青々とした海をみればお酒が進むというもの

そんな絶景の地の棚田で醸された『上輪新田2020』は酸味豊かな豊饒な味わい。

今回は、鯖の文化干しの焼き物と美味しくいただきました。

鯖の焼き物

『阿部酒造』の紹介

阿部酒造6代目の阿部裕太さんが蔵に入社したのは2015年。 例によって滝野川で研修を積み、内杜氏の父上のもとで本格的に酒造りを始めます。

実は蔵に入る1年前に裕太さんは自身の会社を起し、阿部酒造の営業を引き受けて成果を出して、父に蔵入りの承諾を貰います。

5代目の父上はすでに廃業を決意していたのですが、裕太さんの覚悟の改革申入れを受けてのことでした。

さらに裕太さんは地元柏崎の酒造会社さんから酒造技術を学び、地元酒販店や新潟の酒販店さんの応援の元で酒造りに邁進してきました。

そんな修業をする中で、ベンチマークしたのはあの新政酒造さん。 特に若者だけの意欲的な酒造り、そして県産米に特化した酒造りを参考にしたとか。

裕太さんは『ぐるなび』でマーケティングや営業を体験してきた経験から、ワイン業界の経営スタイルにも注目し、特にブランディングには人一倍気を遣っています

トラマサ
トラマサ

平かなのブランド名『あべ』は、飲食店や海外を意識したもの! そしてテロワールを意識した『圃場シリーズ』は、個人向けに土臭さを出して飲み手の心を惹きつけている!

『阿部酒造』さんの酒造りの生命線は全量槽しぼり。 古い設備を徐々に更新しながらも、若い蔵人と発酵を楽しみながら、力を合わせて挑戦を続けています。

そして天下の米どころ『新潟』にあって、酒米造りに協力してもらう契約農家さんとの強い絆づくりがあってこそでしょう。

あべ

 阿部酒造の概要
  • 1804年柏崎市で創業。 「内杜氏」という蔵元自らが酒造りを行うシステム。 蔵人6名と行う小仕込みで年間250石程度の造り。 醸造責任者は阿部裕太氏。
  • 手間暇を惜しまない品質重視の酒造り、全量を槽でしぼる。米の旨みと酸味の酒質が特徴。 造りのモットーは『発酵をたのしむこと』。
  • 代表銘柄は『あべ』。そしてワインのような酸味と旨味の『スターシリーズ』や『圃場シリーズ』。
  • コンテストの出品予定はなく、自分達が目指す酒質の求道をする方針。
  • 酒造見学は不可。

まとめ

上輪新田は、新潟県柏崎市は西の端『米山』にあります。 『米山さんから雲が出た』と民謡にも歌われる霊峰米山は、上越と中越の境にある山。 

『今に夕立がくるやら ピッカラシャンカラ』とうたわれ、海からの風が米山に当たって雲がかかり、そして夕立は田圃を大いに潤したことでしょう

その『上輪新田』のラベルは、新潟の抜けるような青い空のもと、田圃の緑の稲穂は吹き抜ける潮風にたなびいているのでしょうか?

ストリートビューで棚田の風景を見れば、黄金の秋色が目に浮かびます。 そして藁の匂いが残る景色は、やがて白いベールに包まれるのでしょうか・・・

それでは皆さん、今回はこれで失礼します。 今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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