皆さん、こんにちは!
今回は、東広島市は安芸津町の『富久長 海風土(シーフード)』を紹介します。
東広島市といえば、以前紹介した西条の亀齢酒造さんなどがあり、日本有数の酒処。
そして『富久長』を醸す今田酒造さんは、広島杜氏の郷・安芸津町にあって、その伝統の酒造りを引き継ぐ老舗酒蔵。
さて、『富久長 海風土』は一体どんな味わいなのでしょうか?
『富久長 海風土』は白ワインを思わせる透明感のある味わい
『富久長 海風土』 は低アル13度で、冷やしてワイングラスで飲もう!
蔵の仕込み水は、広島特有の超軟水。 洗米は大吟醸と同じ10キロ単位で、給水もストップウォッチ片手の限定給水だそうです。
そして仕込みは伝承された『軟水醸造法』により、きめ細かな温度管理による長期低温でゆっくりとお酒が醸されています。
そして、搾りはヤブタで鮮度を保ったまま搾られ、タイミングを見計らって無濾過瓶詰がされます。 活性炭による濾過は風味が損なわれるので行わないそうです。
《原料米》-
《精米歩合》70%
《酵母》-
《日本酒度》- 《酸度》7程度
《アルコール度》13度
《造り》白麹純米酒/原酒
《お値段》720 ml 1720円
《製造》2021年7月
このお酒の特徴は、今はやりの低アル13度の原酒。 アル度低めながら深い味わいは残されており、ワインのようにグイグイと飲めますので1日で空いてしまいます。
実は、この他にも炭酸がしっかり効いた『スパークリングタイプ』(低アル13度)もあるので、このシリーズは色々楽しめますね!
広島レモンのような溌剌とした酸味は、焼酎用の白麹でクエン酸を多くしています
今田酒造本店さんの目の前に広がる瀬戸内海。 その風土からの名産品は海産物なら『牡蠣』、そして農産物なら『レモン』。
『富久長 海風土』の開発コンセプトは、溌剌としたレモンのような酸味を持つお酒だとか。 このお酒のもう一つの特徴は、クエン酸を多くだす白麹が使われていることです。
このお酒はクエン酸で爽やかさが生み出されており、ラベルがなかったらソービニヨン・ブランかと思うほど、色も味わいも限りなく白ワインです。
そして『海風土 Blue』は季節限定バージョン。 酵母からのリンゴ酸をより多くし、定番品に比べて酸度は1.7倍あるそうです。
本当に目の覚めるようなフレッシュな酸に、透明感のある旨み。 ハーブ系の爽やかな香りと瑞々しい味わいは、もはや日本酒を超えていますね。
これまで多くの白麹で造られたお酒を飲んできたけど、一番ワインに近いお酒なのではないかな? 亜麻猫、ファイブイエローとならんで、ベストスリーかな。
広島の日本酒『富久長 海風土』と今夜の肴
この 『富久長 海風土 blue』は高い酸味がコンセプトのため、マリアージュとしては、牡蠣をはじめとする魚介類の料理や、白カビのチーズなどが合いますね。
もちろん日本酒ならではの懐の広さで、色々な料理とも合いますので、グビグビと飲んでください。
『今田酒造本店』の紹介
安芸津町は古くより杜氏の郷として知られ、酒都西条をはじめ全国の酒蔵に多くの杜氏が出かけた町。 そして吟醸酒発祥の地でもあります。
その伝統の地にある『今田酒造本店』さんは明治元年創業の老舗酒蔵。 大看板『富久長』は、明治期に『軟水醸造法』をあみだした『三浦仙三郎翁』の命名だそうです。
5代目蔵元兼杜氏の今田美穂さんは5人兄弟の長女。 封建的な田舎を捨てて東京で勤めをしていましたが、蔵元が60歳を超えたころには跡目候補の弟さんは医者となっていました。
時あたかも日本酒業界は激動の時代、バブル崩壊のあおりを受けて1994年に蔵元に帰ります。 まずは、営業に回りますが酒屋さんに相手にされません。
そこで取り組んだのが、特定名称酒は搾って直ぐに瓶詰し冷蔵庫に保管すること。 更に火入れは、搾って1週間後に行うことでした。
この全量瓶貯蔵は蔵人の反対を受けますが、試飲での効果実証や段取りなどの見直しで乗り切ったそうです。 その後は広島杜氏の名伯楽保広清孝さんから、酒造りを学びます。
伝統と技を受け継ぎながら、極寒の季節でもストイックに酒造りをしてきた今田さん。 そうして杜氏になったのは2004年、当時は全国でも稀な女性杜氏だったそうです。
今田さんは数ある地酒との差別化を図るために、広島八反系酒米のルーツ『八反草』を2004年に数年掛りで復活させ、2010年頃にようやく美酒との評価を得ます。
ついで、『富久長 海風土』の酸味を強くしたユニークな日本酒も開発。 そして日本酒ベースの純米ゆずレモン酒も産みだします。
さらに『ハイブリッド酒母』なる高温糖化酒母や、『扁平精米・原型精米』などの新技術を導入するなど、「百試千改」の精神を活かして業界に新しい風を吹き込み続けるのです。
そんな姿のドキュメンタリー映画出演が目に留まったのでしょうか。 なんと今田さんは、英国BBCの『今年の100人の女性』(2020)に選ばれたのです。
まとめ
今では日本には名だたる女性杜氏がいますが、先の受賞で名実ともに日本で一番有名な女性杜氏となった今田美穂さん。
それまでの機械に頼った酒造りを一掃し全ての作業を手作業に替えて、誰もが驚く銘酒へと変貌させてきた丁寧な酒造り。
杜氏の重要な役目は総合的な仕事の段取りだそうです。 しかしながら、目的対象は人ではなく微生物が造るものであり、そちらに合わせなければなりません。
造りだけでなく商品企画やイベントなど、様々な事柄に目配りする蔵元杜氏の仕事は、確かに女性の方が向いているかも知れませんね!
それでは皆さん、今回はこの辺で失礼します。