皆さん、こんにちわ!
今回は山口市徳地、新谷酒造さんの『わかむすめ』を紹介します。
『わかむすめ』と言えば山口県初の女性杜氏が醸す日本酒で、前に紹介した『天美』ともども、いま都市圏で大人気となっているお酒なんです。
しかも、IWCやKURA MASTERなどの海外コンテストでは上位入賞と大躍進中なんです。
山奥の小さな酒蔵を無くすわけにはいかない、頑張るご夫婦の酒造りのストーリーを綴ります。
山口の日本酒『わかむすめ牡丹』はふくよかでフルーティ、コクがありキレ良い仕上がり
『わかむすめ牡丹』は蛍飛び交う清流の伏流水で醸される
『新谷酒造』さんの酒蔵は、山口県の中央部山口市徳地にあります。 この地は中国山地を源とする清流佐波川が傍らを流れ、その伏流水を使用しています。
よくテレビで山口市の温度が暑いって放送されていますが、あれは盆地性気象ゆえのものなんです。 ここは山口市とは言っても、旧郡部の山間地なんです。
夏には蛍が飛び交う地にあり、古より水に恵まれた稲作の適地とあって、かっては5つもの酒蔵があったそうです。
《原料米》『雄町』100%
《精米歩合》60%
《酵母》-
《日本酒度》- 《酸度》-
《アルコール度》16度
《造り》無濾過生原酒直汲み純米吟醸
《お値段》720 ml 1815円(税込)
《製造》2021年5月《出荷》2021年5月
ところで、平安末期の戦火で焼失した東大寺の再建のため、この地の山から1000本近くの大木が切りだされ、筏で佐波川を下り奈良まで運ばれたそうですね。
そんな自然豊かなこの辺りの山間地では、山田錦の酒米栽培が盛ん。 県内では、ここ山口地区は一番生産量が多いのです。
この『わかむすめ牡丹』の酒米は地元産ではなく岡山県産の雄町。 酵母のブレンド比率などを改良して、雄町らしいワイルドさを引き出しつつも、ゴージャスで気品ある仕上がりとなっています。
『わかむすめ』は小仕込み、丁寧な手作業で無濾過原酒で仕上げられる
『わかむすめ』の仕込みはとても小さくて、わずか400kgという小仕込み。 普通の蔵ならば、大吟醸や出品酒の仕込レベルです。
でも冷房設備の利いたプレハブで高品質少量生産を四季醸造で行っているので、その結果が直ぐに次の仕込に生かされるというメリットがあります。
造りは、昔ながらの丁寧な手仕事。 秒単位での洗米浸漬や0.1℃単位で調整する温度管理、搾りは槽搾りで行われており、香味を生み出す緻密な作業が行われています。
そんな造りの『わかむすめ牡丹』の味わいは、直汲み無濾過原酒のフレッシュな品の良い吟醸香、雄町らしいふくよかさとコクがありながら、キレ良い酒となっていますね。
じつは、わかむすめシリーズの商品名は十二単のかさねの色目の名前なんだそうです。 燕子花や月草、牡丹や薄花桜は季節のかさねの古色ながら、とても鮮かですね。
そして今年新たな商品が誕生しました。 美しい青磁のような色使いの『秘色(ひそく)』。 どこか、アニメの鬼滅の刃の色使いににていますね。
ラベルデザインも奥さんがされてるとのことだけど、前の白地から黒地になって、十二単のイメージがより出てきたね! 古式の文様やひらかなが日本酒のイメージとマッチして、海外でも受けると思うよ。 センス抜群!!
四季醸造ゆえに季節商品となりますが、『わかむすめ』のラインナップを紹介します。 それにしても、最近の受賞歴は見事の一言ですね。
銘柄/種別 | 酒米/磨き | 味わいの特徴 |
わかむすめ燕子花/純米大吟醸 | 山田錦/40% | 嫌みのない香りと、やわらかで上品な米の甘味に包まれ、後味は雑味がなくクリアにキレます。IWC2021純米大吟醸酒の部:リージョナルトロフィー賞 |
わかむすめ薄花桜/純米吟醸 | ヒノヒカリ60% | 香り華やかでフルーティな味わいながらしっかりと旨味。IWC2021純米吟醸酒の部:ゴールド賞 |
わかむすめ牡丹/純米吟醸 | 雄町/60% | 品の良い吟醸香、雄町らしいふくよかさ、コクがありながら非常にキレの良い酒。IWC2020純米吟醸の部:ブロンズ賞 |
わかむすめ萌木/純米吟醸 | 八反錦/60% | 新緑の息吹を感じさせるような爽やかな香りとフレッシュでジューシーな味わい。Kura Master2020純米酒の部:ゴールド賞 |
わかむすめ月草/特別純米 | 西都の雫/60% | 穏やかな香りでふくらみのある甘味、スッキリとした強めの酸が特長。Kura Master2018純米酒の部:ゴールド賞 SAKEselection2018 純米酒部門プラチナ賞 |
わかむすめ秘色/純米吟醸 | 国産米/60% | 軽やかな甘味、マイルドな旨味で、楚々として華やか。バランスの良さと、キレの良さが特長。 |
山口の日本酒『わかむすめ牡丹』と今夜の肴
山口市徳地堀は、山口や防府からは車で3、40分位。 今は高速道や県道が整備されて、走りやすくなっていますが、管理人の友人はさらに川をさかのぼった地に住んでいます。
清流佐波川、そして支流の島地川には天然アユが釣れるポイントが沢山あるそうです。
でも手元に天然鮎はなく、今夜は瀬戸内でもよく獲れる生タコの刺身で、合わせてみました。
『新谷酒造』の紹介
『新谷酒造』さんは県の中央部、山口市徳地という中間山地にあります。 初代は、1927年(昭和2年)休業蔵を買い取っての創業です。
3代目蔵元の新谷義直さんは1989年に入社。 主に営業を担当していたそうですが、2004年に蔵を継ぎます。
2006年に高齢のために杜氏が引退を表明、そして蔵人も事務方も蔵を去ることになります。 山奥の小さな酒蔵は、一気に廃業の危機を迎えたのです。
5年程杜氏と一緒に酒造りをしていた義直さんは、この地最後の造り酒屋を守り抜く道を選択。 どうするか、その答えは『四季醸造』でした。
そこで冷蔵設備を導入して、たった1人で1回400kg程度の子仕込みによる『四季醸造』を翌年にスタートします。
狙ったのは昔の和可娘の味わい。 しかしながら、失敗と挫折、試行錯誤の繰り返しで、3年後には舵を切り、新しい『わかむすめ』を目指すことになります。
一方元ナースの奥様は家計を支えるために、乳飲み子を抱えながら若女将とナースの道を歩むことになります。
2015年にようやくナースとの兼業生活に終止符を打ち、夫婦2人の酒造りの体制に移行。 ところが、四季醸造用に改装した蔵の梁が損傷、再び危機を迎えます。
絶望の淵からお2人が出した結論は、もう一度酒造りを見直して国際コンクールへチャレンジすること。
なんと、『Kura Master 2018』でゴールド、『SAKE Serection2018』では最高位プラチナ賞を受賞したのです。 再び道が開け、仕込み蔵の移設に踏み切ります。
最後の賭けにでたのが、ハマった!? いや、賭けじゃない。 やったもん勝ちでもない。 ありったけの力を振りしぼって努力してきた成果がでたんだよ!
そして18年には奥様が杜氏となり、元ナースらしい科学的な管理で酒質もメキメキ向上。
そうしてついに『Kura Master 2020』純米大吟醸酒部門でプラチナ賞、さらにIWC2021純米大吟醸酒部門ではリージョナルトロフィー受賞の快挙を達成したのです。
供給が間に合わない『わかむすめ』だけど、去年のコロナ禍のなか在庫が増えて3度目の危機だったらしい。 でも、メディアの露出で在庫も解消・・・最近HPをリニューアルしてネットショップもできたけど、商品在庫が足りないなあ・・・
まとめ
この日本酒ラベル『わかむすめ』って、とても筆に勢いがあって酒名にぴったり。 イラストや色使いがモダンで、ホント『鬼滅』っぽいですね。
これでもか、これでもかと困難に立ち向かうアニメとなぜか被ってしまうストーリーに、管理人の故郷(防府)への思いが交錯して『わや(めちゃくちゃ、もうダメの意)』になってしまいます。
この題字は『山根一生』さんという山口県出身の書道家さんのお手になるもので、朝ドラ『おちよやん』の書道指導をされていた売れっ子さんなんだとか。
それにしても、これからの酒蔵経営のキーワード『四季醸造』+『少量生産』⇒『気づきで品質改善』+『キャッシュの回転』+『SNS発信』を見事に遂行されていますね。 あとは、人材確保ですかね。
進化形の『わかむすめ』まだまだ伸びそうで、おおいに期待しています!
それでは皆さん、今日はこれで失礼します。