新潟塩沢の日本酒『鶴齢 爽醇』は爽やかな酸味とほのかな甘み

鶴齢 特別純米/爽醇

日本酒ファンの皆さんこんにちは!

今回は、新潟県は南魚沼市の青木酒造さんが醸す『鶴齢 爽醇』を紹介します。

南魚沼と言えば、2メートルを超す日本有数の豪雪地帯。 そんな厳しい気候が、『南魚沼米』や幾多の銘酒を磨き上げてきました。 

さて『鶴齢 爽醇』、一体どんな味わいなんでしょうか?

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『鶴齢 爽醇』は、低アル火入れも雪室貯蔵効果で口当たりのいい仕上がり

巻機山の伏流水が深みのある芳醇な旨口を生んでいる

『青木酒造』さんがあるのは、上越線越後湯沢から4つ目の塩沢駅そば。

細長い南魚沼の谷に覆いかぶさるような巻機山が、豊富な伏流水を生み出しています

蔵には3本の井戸があり、仕込水に使われているのは深さ80メートルの軟水の井戸水

他の100mの井戸水は融雪用で、3本目の160mの井戸水は超軟水で、割水用なんだそうです。

さて仕込み用の軟水はミネラル豊富なため、他の新潟酒・端麗辛口とは異なる『淡麗旨口』の特徴を引きだしているのだとか。

トラマサ
トラマサ

魚沼の近くのお酒『緑川』や『たかちよ』は、端麗辛口ではなくてやはり『旨口』でコク味がある。 巻機山のミネラル水が効いているのかな・・・


《原料米》『越淡麗』

《精米歩合》55%

《酵母》-

《日本酒度》- 《酸度》-

《アルコール度》14度

《造り》火入れ/雪室貯蔵

《お値段》1800 ml  3222円  

《製造》2023年6月

一方酒米は新潟オリジナルの『越淡麗』で、当蔵の特徴である55%精米となっています。

この酒米、ナント青木酒造さんが新潟で一番多く使用しているのだそうです。 すごい拘りですね!

さて特別純米・無濾過生のシリーズにあって、この夏酒はパストライザーによる瓶火入れ。 でも急速冷却によって、フレッシュさが失われていません

またアルコール度も14度に抑えられた造りで、軽快なやや辛口の味わい。 いつもの奥行きのある芳醇な味わいは、少し控えめでしょうしょうか。

米の旨みとほのかな甘み、そして柑橘系の爽やかな酸味が調和した清涼感のある酒質に仕上がっています。

雪室貯蔵のゆっくり熟成が生むまろやかさは絶品!

さらに特徴的なのが、この地域独自の温度変化の少ない『雪室貯蔵』によるゆっくりとした熟成で、よりまろやかな旨味が生み出されています。

青木酒造:雪室貯蔵庫

さて操業300周年の2017年に建てられた雪室は貯雪量は約400トンで、日本酒の最大貯蔵量は18万リットル(1000石)。

雪で生まれた冷風をうまく循環させる風の通り道で、3つの温度帯がコントロールされています。

これによって、環境への配慮にコスト削減、さらには品質向上と、見事に付加価値の向上が実現されていますね!

トラマサ
トラマサ

鶴齢の特徴は、無濾過生による芳醇さと奥行きのあるコク味だけど、夏酒仕様に雪室と低アルで飲み易く仕上がっている。通年販売仕様にしてほしいね‼ 

 『鶴齢 爽醇』の感想と評価
  • 火入れながら、アル度14の軽快さと清涼感が愉しめるフレッシュな飲み口。 さらりとした軽快な旨みと酸で、飲み疲れしません  淡麗旨口タイプ
  • 1800ml  3222円は、酒米のコストを考えれば十分納得のお値段です。 
  • 総合評点 8.4  ※あくまでも私個人の感想です。
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『鶴齢 爽醇』と今夜の肴

青木酒造さんの『鶴齢』は、魚沼の食文化に寄り添った味わい。 つまりは雪深い地ゆえに、塩や醤油を用いた味付けにあう酒質なんだそうです。

淡麗でも押し味の米の旨味を引きだした味わいは、この地の名物『へぎそば』や『油揚げ』にあいそう!

でも入手しがたく、冬瓜の煮物と夏野菜の炒め物で、サクッと合わせてみました。

『青木酒造』の紹介

創業300年余の『青木酒造』さんは、2009年に完成した『三国街道塩沢宿/牧之通り』の美しい町並みの一角にあります

伝統的な雪国建築を活かしたその見事な街並みは、2011年に都市景観大賞を受賞。 道路に融雪水を流し電柱も埋設した風情は、綺麗すぎてどこか浮世離れしています。

さて当蔵の歴史を紐解けば、1717年青木家初代の平野屋源左エ門が酒造業『平野屋』をおこしたのが始まり。

その後、江戸後期に『北越雪譜』を著わした鈴木牧之(ぼくし)の次男弥八が7代目を継ぎ、酒名『鶴齢』は牧之が命名したと伝わります。

雁木で守られた青木酒造玄関口、平野屋の屋号も見える

そして1998年、永らく社長を務めた11代目青木進氏が逝去し、娘方の孫青木貴史氏が12代目に就任します。  

東京生まれ東京育ちの新蔵元は弱冠25歳。 時あたかもバブル崩壊後、日本酒業界は変革期を迎えていました。

そんな低迷状況にあって貴史氏は当時の新保杜氏と相談し、差別化を図るため蔵の特徴を出した『淡麗旨口』の商品戦略を打ち出します。

鶴齢 特別純米/美山錦

それが、新潟でもいち早い無濾過生原酒への取組でした。 しかし、当時の新潟は『端麗辛口』が当たり前、当然批判の嵐となります。

しかし新保杜氏は、ひるまず無濾過生原酒を造り続けます。 やがて、飛露喜をはじめ多くの蔵が無濾過生原酒を発売し、業界でブームとなります。

かくして鶴齢の米由来のしっかりしたボデイ、太めの酸と米の旨味の『淡麗旨口』は、新潟の酒のイメージを変えたのです

 『青木酒造』の概要
  • 1717年(享保2年)に創業、300年余の古い歴史。12代目蔵元は青木貴史氏。杜氏は樋口宗由氏。9月から翌6月までの3季醸造で3200石を醸す。 豪雪地帯ならではの雪室熟成を生かした造りが特徴。
  • 新潟人ならではの『耐え忍ぶ精神』と『助けあう心』の『和合の精神』で、すべて手仕事の寒造りで仕込む。代表銘柄は『鶴齢』『雪男』。
  • IWC2023は純米酒部門で銅賞を受賞 Kura Master2023、2022純米酒部門金賞受賞
  • 2022年第93回関東信越国税局酒類鑑評会吟醸酒の部、純米酒の部で優秀賞
  • 直売所あり。

まとめ

『われの住む魚沼郡は日本第一に雪の深く降るなり…』と著わした鈴木牧之の『北越雪譜』は、魚沼の雪国の生活を描写したもの。

10数年前この地を旅すれば、大雪となり列車は運休。 やむなく、塩沢の駅を降りてしばし雪国の街を散策したことがあります。

あいにく『鈴木牧之記念館』は休館で、千年の歴史を持つ織物を展示する『塩沢つむぎ記念館』にて雪国の暮らしを伺いました。

そして最後に土産を購入するために酒蔵へ立ち寄れば、雪で染まった色白の蔵元の母上が、鶴が舞うかのように奥から出て来られました

大雪の中客は誰かと諫めることもなく、その落ち着いた丁寧なおもてなしに感服した思いがあります。

雪深い塩沢の郷で、いつまでも悠久の時を刻む『うまい酒造り』に邁進する酒蔵さんであって欲しいなと願っています

それでは皆さん、今回はこれで失礼します。  今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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