日本酒ファンの皆さんこんにちは!
今回は山形県は酒田市、東北銘醸さんの『初孫 しおさい』を紹介します。
かっては『西の堺、東の酒田』といわれ北前船の寄港地として繁栄を誇った酒田。 江戸時代の豪商本間家が栄えた地でもあります。
そんな歴史文化、食の街で醸される『初孫 しおさい』、一体どんな味わいなんでしょうか?
『初孫 しおさい』は松林を吹き渡る涼風のような穏やか、スッキリ味
『初孫 しおさい』は生酛らしい綺麗な米の旨みがある
酒田はその昔『砂潟』と書かれ、山形の母なる川・最上川の河口に開けた港町。 その気象の特徴は海洋性気候で多雨多湿、冬は季節風が吹き荒れます。
ちなみに気象データをひもとけば、年間強風日数が89日(1991~2020年。10分平均風速が10m以上)と日本有数の強風地帯なんです。 本間様の砂丘植林の話はつとに有名ですね。
酒蔵はその庄内砂丘にあって、仕込み水は海からのミネラルを幾分か含んでいるのでしょうか。 庄内のお酒は辛口が多いのも頷けます。
またここ十里塚地区は、酒田の酒造りを支えてきた『十里塚杜氏』の里でもあるのです。 今では杜氏集団もなくなりましたが、二足の草鞋の農家さんはいらっしゃるそうです。
《原料米》山形県産『美山錦』
《精米歩合》50%
《酵母》自社酵母
《日本酒度》+3 《酸度》1.4
《アルコール度》15.5度
《造り》純米大吟醸
《お値段》1800 ml 2970円
《製造》2022年5月
さて酒米は山形県産『美山錦』で、とてもスッキリした味わいに仕上げられています。
キリッと冷やしてとありますが、旨みは温度が上がると出てきますので、味わいを求めるならば冷やし過ぎない方が良いでしょう。
2019IWCトロフィーの『冬のカノン』は美山錦55%精米で、透明感の中にも米の旨みがあった。 こちら『しおさい』は50%なので夏向きにスッキリかな。
全国でも稀な全量生酛造りで、豊かな旨みとスッキリ後味を醸す
『東北銘醸』さんの酒造りの特徴は、すべての酒を創業以来の伝統技法『生酛造り』で醸していることです。 全国でも数社しかないそうです。
生酛造りは、空気中の天然の乳酸菌を呼び込んで雑菌の繁殖を抑え、酵母を安全かつ確実に増やす伝統技術です。
生酛酒母では、最初に硝酸還元菌、次に乳酸菌、そして最後に酵母と、有用微生物の遷移が順序正しく行われ、25日間かけてようやく酒母が完成します。
一方こうした伝統的手法は堅持されながら、計量や温度管理、工程制御などは先進技術で機械化されています。
東北銘醸さんで特徴的なのは、大規模な調温自動製麹装置が完備されていることです。 もちろん出品酒や大吟醸等の高品質酒は麹室で手作業が行われています。
山形の日本酒『初孫 しおさい』と今夜の肴
酒田市は最上川の河口に開けた港町。 そして広大な庄内平野は日本有数の米どころ。
つまり食材豊富な地にあって、それらに合うお酒として酒質が磨き込まれたのが生酛造りの『初孫』なんです。
そのコクのある味わいは世界が認めた酒質で、食中酒としてガンガン飲めますね。
そこで今回は、旨みとコクのある料理『夏野菜とアジのフライ』で合わせてみました。
『東北銘醸』の紹介
蔵の創業は1893年(明治26年)、酒田市本町で回船問屋を営んでいた初代佐藤久吉が藩主酒井家より酒造技術を学び、『金久』の銘柄で酒造りを始めます。
その後昭和のはじめに2代目当主に長男が誕生し、多くの人に愛される酒にしたいと酒名を『初孫』と改めます。
話を聞けば、そのご長男は蔵元を継がずに、映画や料理の世界へと進まれたとか。 世の親御さんに親しまれる『初孫』の名称は全国に知られ、贈答品や赤ちゃんの名入れラベルのセットが大ヒットしている!
3代目社長の長助氏は先代の早逝で家業を継ぎ、先の大戦では2度も徴兵をされながらも生き延び、戦後の農地解放など時の荒波を乗り越えてこられたとか。
そして1960年(昭和35年)に社名を金久酒造から『初孫酒造』に変更。 さらに1963年に『東北銘醸』へとなります。
その後1994年(平成6年)近代的でより高品質な酒を造るために、市街地の手狭な敷地から良質の水源に恵まれた最上川南岸の十里塚に新築移転します。
実は本町と十里塚はともに海岸線に近く、地下水の性質が似ているとのこと。 移転に際しては20年以上もの間、十里塚の地下水を本町に運んで試験醸造を繰り返したそうです。
さて、何事も全力で取り組む父の背中をみてきた4代目の淳司氏。 東京農大大学院を卒業後、関連会社の酒蔵をへて37歳で当社製造部長となり、1995年に社長に就任します。
乳酸菌研究の第一人者北原教授のもとで学んだ酒造りのポリシーは『生酛造り』。
その技術が評価されたのが近年のコンテスト受賞歴です。 特にIWC2018では6部門で金メダルを獲得し、史上初の快挙を成し遂げました。
そして何といっても年間最優秀酒蔵賞受賞は、そうした前例のない傑出した成績と、さらにその土台にある優れた酒造技術が認められた証と言えるでしょう。
まとめ
庄内は第2の故郷、かっては毎年のように鶴岡酒田にでかけては、美味しいお酒と料理をいただいてきました。
一昨年冬に酒田を訪問しました。 目的は『日本海寒だらまつり』と『酒田の酒祭り』。
暖冬で雪のない庄内はチョット引き締まらない景色でしたが、冬の味覚『寒だら汁』のみそ仕立ての白子と、キリッと締まった『初孫 冬のカノン』はもう夢世界でした!
酒田・遊佐には9つの酒蔵があって、市内各地に分散してそれぞれに個性的な味わいを醸しています。
ところで全国の市名で『酒』の名前がつくのは酒田市のみなんだそうです。 そんなご縁なのでしょうか、酒祭りには千葉県の酒々井町などの酒蔵さんが出店されていましたよ!
コロナが収まりつつある来年こそは、是非とも開催を期待したいですね。
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。 今回も最後までご覧いただきありがとうございます。