日本酒ファンの皆さんこんにちは!
今回は北海道は札幌の『千歳鶴 冬ひぐま』を紹介します。
『千歳鶴』を醸しているのは、なんと大都会札幌で唯一の酒蔵『日本酒造』さんです。
さて『千歳鶴 冬ひぐま』、一体どんな味わいなんでしょうか?
澱が舞う『千歳鶴 冬ひぐま』は、ガス感と爽やかな酸味で意外にスッキリ
『ひぐま』シリーズの冬バージョンは、ふんわりした甘みがある
『日本酒造』さんの酒蔵があるのは札幌駅から車で8分、徒歩なら25分。 札幌市中心部を貫く豊平川のほとりにあります。
仕込水は札幌の母なる川・豊平川の伏流水。 100年以上の時をかけて染み込んだ藻岩山系からの水は、鉄分やマンガンが極めて少ない理想的な中硬水なんだとか。
地下150メートルから汲み上げられるその水温は約4度。 まるみのある穏やかな井戸水は、洗米や仕込み、さらにはタンクなどの洗浄に至るまで使われています。
実はこの井戸水、札幌市の災害用井戸にも指定されており、市内全域の飲料水をまかなうほどの規模を有しているそうです。
明治開拓期の1871~77年(明治10年)には、この水の豊かな創成川東側に官製のビール工場などが作られた。 まさに名水の地であり、外部の水を必要としないワインと立地面で違うところかな・・・
《原料米》北海道産『きたしずく』
《精米歩合》55%
《酵母》協会601号
《日本酒度》- 《酸度》-
《アルコール度》15度
《造り》うすにごり生酒
《お値段》720 ml 1590円
《製造》2023年11月
ほんのり澱が舞う薄にごり生酒は、ガス感と爽やかな酸味で意外にスッキリ。 爽やかな果実香と、ふんわりした旨味も感じられます。
千歳鶴らしい爽やかさを残した円やかな飲み口は、まさに冬の森に舞う雪を表現したのでしょうか?
『きたしずく』は独特のやさしさとまろやかさが特徴
さてこのお酒の酒米は、北海道で2014年に優良品種登録された『きたしずく』。
北海道の酒米と言えば、1998年の『初雫』と2000年デビューの『吟風』。 3番手『彗星』はそれらの交配種で2006年の登場。(詳しくは上川大雪を参照ください)
それぞれの酒味を端的に表現するならば、『吟風』が濃淳・甘口傾向、『彗星』は淡麗・辛口傾向、そして『きたしずく』は両者の中間でしょうか。
いうなれば、『きたしずく』は独特のやさしさとまろやかさが特徴のようですね。
そうした酒米の特徴を、薄濁りのフレッシュな生酒はほのかな甘みとまろやかさを生み出しています。
市澤杜氏の『千歳鶴』評を借りるならば、『薄化粧のお酒』は新蔵になって増々清らかになっているのではないでしょうか。
じつは同じ酒米で『夏ひぐま』も発売されてるね。 ただし、夏バージョンは火入れとなり、軽快な口当たりと後味のキレが特徴。 まさに爽快辛口!!
『千歳鶴 冬ひぐま』と今夜の肴
札幌へ旅行に行けば、必ず寄るのが直営の割烹『千歳鶴』とジンギスカン『だるま』。 最近はお店も増えて、立ち飲みもあるそうです。
直営店では蔵元限定の生酒があって、とても綺麗な透明感のある味わいが楽しめました。 東京でもようやく生酒や濁り酒が入手できるようになって、嬉しいですね!
そんな訳で、今夜のあてはチーズにハムそして肉鍋で、北海道の冬に思いを馳せながらいただきました。 甘味と酸味のバランスがよく食中酒としておすすめです!
『日本清酒(株)』の紹介
明治維新とともに北海道開拓が始り、石川県から渡ってきた柴田與次右衛門が、1872年札幌は創成川のほとりで造り酒屋『柴田酒造店』を開きます。
北海道の酒造りの先駆けとなった『柴田酒造店』は順調に事業を伸ばし、1896年(明治30年)に6つの酒造会社が合併し、『札幌酒造合名会社』となります。
その後1928年(昭和3年)に政府要請に応えて8企業からなる『日本清酒株式会社』となり、ここで『千歳鶴』を統一銘柄として据えるのです。
戦後は好景気に支えられ、1959年(昭和34年)には国内最大規模の『丹頂蔵』を竣工。 さらに帯広や函館、本州にも拠点を拡大していきます。
そして1982年(昭和57年)には、全国新酒鑑評会で14年連続で金賞受賞するなど、その名は全国に轟きます。
卓越した技で金字塔を打ち立てた名工は、新潟出身の4代目杜氏津村弥氏。 蒸かしに拘った酒造りの技は1998年『現代の名工』に選ばれ、伝説の杜氏とまで言われました。
しかしながら日本酒需要減退の波が訪れ、各地の醸造拠点は次々と閉鎖。 また北海道には国内や海外から多くの観光客が訪れますが、地酒は選ばれていませんでした。
ようやく酒米の進化と歩調を合わせて、酒造りも『北海道米で醸す北海道の酒』の探求をするようになり、2004年と2006年に『吟風』で全国新酒鑑評会で金賞を受賞します。
そして地酒蔵としての地位固めとして選ばれたのが、6代目杜氏・市澤智子さん。 市澤さんは、東京農大短期大学を卒業後、釧路市福司酒造の杜氏を経て、2015年に入社。
16年に杜氏となり、継承した高い醸造技術に新しいエッセンスを加え、翌17年の全国新酒鑑評会で早くも金賞を受賞します。
そして2021年の新酒鑑評会では、2014年に優良品種に選定された北海道産酒米『きたしずく』で金賞を受賞したのです。
戦後60年近く歴史を刻んできた丹頂蔵も、2022年の暮れには規模を半分にした新醸造棟へとバトンタッチ。 そして社員らと力を合わせた酒造りに励みます。
多くの酒蔵が取り組んでいるように、こちらでも大量生産ではなく少量で付加価値を高めた酒造りへと大きく舵を切っています。
まとめ
昨今の熊被害のニュースに触れるにつけ、さてこのネーミングの意味はどういうことか、取り上げるべきか暫く考え続けていました。
気候変動の影響は生態系を大きく変え、敵はどう猛だろうがとにかく共存するしかない現実と向き合うことにして、漸く記事化を決意しました。
調べてみれば、なんと2018年には合同酒精さんが迫力のあるヒグマラベルで『純米 北の誉 北海羆』を発売しているではないですか。
つまりは、北海道を象徴するってこと? それともヒグマの棲む水源の森をイメージしたのでしょうか?
さてこちらのラベルデザインは、旭川在住で旭川動物園のカップ酒のイラストも担当されたイラストレーターさんによるもの。
しんしんと降り積もる雪、北海道らしさ、素朴さをイメージしたデザインは、まさに女性杜氏を迎え入れた新生『千歳鶴』を象徴しているかのようです。
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。 今回も最後までお読みいただき有難うございます。