皆さん、こんにちわ!
今回は、徳島県は那賀町の『旭若松 雄町』を紹介します。
那賀町って、徳島のどのあたりにあるかですって? 車で約1時間南に行きますが、もうそれ以上説明できません。
実は、那賀酒造さんは家族で酒造りを行っている小さな老舗蔵元さんながら、知る人ぞ知る阿波徳島の人気地酒なんです。
さて、『旭若松 雄町』はどんな味わいなのでしょうか?
それでは早速ご紹介しましょう。
『旭若松 雄町』は最後の地酒か、古来の秘伝で醸す純米無濾過の熟成酒
自社田の雄町麹米の濃醇な旨みを、豊かな酸味と高アルコールで締める
徳島県の川と言えば四国三郎こと吉野川ですが、こちらは剣山を源とする2番目に大きい那珂川。 酒蔵は、水質がよいことで知られる鷲敷(わしき)ラインに立地しています。
とはいえ川が大きく蛇行する山間の町は、最近は台風や集中豪雨による浸水被害が増加しており、酒蔵の浸水は心配になります。
《原料米》『雄町』100%
《精米歩合》70%/自家精米
《酵母》10号系
《日本酒度》+8 《酸度》2.2
《アルコール度》20度
《造り》無濾過生原酒
《お値段》720 ml 2448円
《製造》2021年3月
『那賀酒造』さんは、雄町米を自社田で有機栽培して麹米に使用しているそうです。 また掛米は、岡山県産の雄町と、とにかくも雄町に拘っています。
そして酵母は10号系の蔵付き酵母を使用した速醸仕込み、温度管理はしていないそうです。 暖冬だと酵母が糖分を食うので辛口へ、寒いと甘めになるらしいです。
その味わいはと言えば、少し熟成した香りで、口に含みますと米の旨みがドッときますが、引きの辛みと苦味が後口を締めます。
ちょっと光栄菊みたいに酸が多めに感じたけど、酸味が少ない10号系酵母を使っているのは意外だったね。 日本酒度は+8、高アルコールの辛みで旨みが引き算されたかな? ホント、濃旨な独特な味わいだね。
『旭若松 雄町』は古来の秘伝で醸す純米無濾過の熟成酒
『旭若松 雄町』の造りの特徴は、純米造りの無濾過生原酒です。 と、ここまではよくある話。 米の味わいを追求するため、濾過する場合は最低限の炭濾過だとか。
搾りは小袋に入れた搾りで、1ヶ月ほどおいて瓶詰貯蔵されます。 蔵元さんは、『酒本来の旨さは熟成で造られる』との考えから、熟成期間や出荷時期の判断をしているそうです。
この熟成によってお酒の旨みが円やかに醸成されて、かどの取れた味わいは雄町米の深い余韻を呼び込んでいます。
そして生原酒なのになんと冷蔵せずに保存してあるとか。 アル度20の強いお酒に仕上げてあるんですね。 飲んだお酒は今年の造りでしたが、3年ものの熟成生原酒もあるそうです。
手造りで自分たちの出来る範囲で仕込むのは、タンク3本分あまり。 冷え込みが強くなる1月辺りから仕込が行われるそうです。
余計な香りは求めず、雄町のふくよかな味わいを引き立てた飲みごたえのある濃い味わいは、力強くシャープな辛さをまとい、伸びやかな余韻が楽しめます。
最近飲んだ雄町では、そのワイルドな味わいを感じたのは、このお酒が一番かな。まいりました!
さて、温度管理はしないために仕込みごとに味わいが違うそうですが、無濾過生原酒、火入原酒、加水火入酒の特徴をまとめてみました。
銘柄/種類 | 特 徴 |
旭若松 純米無ろ過生雄町100% 緑ビン | 旨味たっぷりで、押しの強いタイプ。まったりとした芳醇な飲み口ですが、不思議と後口は綺麗に切れていきます。 |
旭若松 純米無ろ過生雄町100% 茶ビン | 旨味はありますが、白ラベルより輪郭くっきりとシャープなイメージです。後口に感じる程よい苦・渋みが良いアクセントになって全体を引き締めています。 |
旭若松 純米火入原酒 | キャラメルのような熟成香にドッシリとした濃厚な旨みです。熱燗で最高なうまさです。 |
旭若松 純米加水火入 | 加水火入した燗向きの、やわらかな味わいのお酒です。 |
徳島の日本酒『旭若松』と今夜の肴
徳島の日本酒は、山間部は三好の軟水仕込みのフルーティなお酒と、鳴門の海鮮ものに合わせた円やかな辛口のお酒に二分されます。
そしてこの県南の『旭若松』は、なんと濃淳旨口のワイルドな味わい。 そんな強いインパクトのお酒には、濃厚なチーズピザで合わせてみました。
『那賀酒造』の紹介
『那賀酒造』さんは江戸中期、1725年の創業。 江戸中期の時代は、藩が発行した『造酒札』を持っていなければ酒造りができない時代。 その荷札が現在も掲げられています。
明治期には『松齢』や『若松』の酒名で酒造りがなさたそうです。
戦後には組織を有限会社化して、高度成長期では1000石を醸して、灘へ桶売りしていたとか。 その後桶売りをやめ全量純米酒づくりとしますが、90年代は僅か40石余りとなります。
そして少し前までは、東京農大卒業の娘さんらご家族3人で60石までに復活。 しかし、娘さんが結婚されて今はご夫婦のみで醸されているそうです。
那賀酒造さんは、大正の伝書を元にした酒造り。 温度管理によらない味わいのコントロールのために同じ味わいの酒はできず、また毎年その味わいが大きく変わります。
それゆえに、全国の地酒マニアの心をとらえて離さないのです。
まとめ
徳島の日本酒、初飲みでした。 前に紹介した香川の『悦凱陣』ともどもとても濃淳な味わいで、かの地の風土や食文化に育まれたのでしょうか。
四国は険しい山地に多くの雨が降るかとおもえば、全く降らない渇水の季節や年もあります。 また山からの湧水に恵まれる地もあれば、ため池に頼る地もあります。
そんな厳しい自然の掟に晒された処ゆえに、有名なお大師さまがお生まれになったのかも。 那賀酒造さんの傍らの山には、遍路道の難所で有名な21番札所の太龍寺がありますね。
学生時代にお遍路さんの添乗アルバイトをしたことがあり、その頃はロープウェイもなく険しい山道を駆け上ったのでしょうか?
険しい山中の宿坊に泊まることもあり、『般若湯(僧侶の隠語でお酒の意)』のお接待を頂いたこともあって、今では懐かしい思い出です。
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。