皆さん、こんにちわ!
今回は、神奈川県は愛川町の大矢孝酒造さんの『残草蓬莱 四六式』を紹介します。
大矢孝酒造さんと言えば、地元神奈川から全国へと人気を広げている酒蔵さん。
それでは早速ご紹介しましょう。 大矢孝酒造さんの『残草蓬莱 四六式』どんな味わいなのでしょうか?
『残草蓬莱 四六式』は甘酸っぱさとピチピチとはじけるガス感が爽快
特徴1 酵母は適度なアミノ酸バランスを生む7号酵母のみ
『大矢孝酒造』さんのある愛川町田代は、丹沢山系の東側に位置。 近くの首都圏最大の水がめ『宮ケ瀬ダム』は蔵の傍を流れる中津川へ清流をそそいでいます。
酒蔵の仕込み水は、その豊富な丹沢水系の伏流水を使用しています。
冬冷え込む山間の盆地にあって、酒造りには最適なロケーションといえるでしょう。 それでも最近は温暖化の影響が大きく、冷房設備が必要なんだそうです。
《原料米》長野県産『美山錦』100%
《精米歩合》60%
《酵母》7号酵母 《麹》白麹
《日本酒度》 ±0 《酸度》3.3
《アルコール度》17度
《造り》特別純米 槽場直詰無濾過生原酒
《お値段》720 ml 1650円(税込)
《製造》2021年4月
このお酒の酒米は、長野県産美山錦。 スッキリとした味わいを演出しています。
蔵元の大矢さんは、米造りは農家さんに任せて買い支える考えで3年契約しています。 年に3回は田んぼに視察に行き、米の育成状況や出来を確認しに行くそうです。
そして特徴的なのが、醸すお酒の酵母はすべて7号酵母のみとしています。 色々な酵母を試した結果、7号酵母はアミノ酸を適度なバランスで含んでいるからだそうです。
特徴2 白麹がつくるエッジのきいた酸と柔らかい旨みでガス感が爽快
ところで、この酒名『 四六式』の意味するところは、シロー、つまり白麹を使っているところ。 白麹は焼酎用麹なのでクエン酸を多く産み出します。
『精米歩合46%』の意味表示ではないので、間違えないようにお願いします。
スペックは槽場直詰で無濾過生原酒、アルコール度17度とキツメなのですが、酸度は3.3と通常の倍に高めてあり、以外とスッキリに仕上がっていますね。
香りは控えめながら、口に含みますと口の中いっぱいに酸っぱさ、コク、さらには苦味や渋みまでが感じられます。
しかし意外や後口はスッキリです。 これって酸度を高めている仕業なのでしょうか。
これまで色々と飲んできた中では、白麹は『新政/ 亜麻猫』と『五橋/ ファイブ・イエロー』が双璧。 この『残草蓬莱 四六式』もなかなかの出来かな。
神奈川の日本酒『残草蓬莱 四六式』と今夜の肴
丹沢の山々はもうすっかり緑に覆われてきましたね。 山菜取りのシーズンももうおわりでしょうか?
今夜は、長野以北でとれる『コシアブラ』『タケノコ』『たらのめ』の天ぷらです。 実は、角館の酒旅で仕入てきました。 旅のレポは追ってアップしたいと思います。
酸味溢れる残草蓬莱が、山菜の苦味と『春山のハーモニー』を奏でています。
大矢孝酒造の紹介
『大矢孝酒造』さんのご先祖、大矢家初代は北条家の騎馬隊長。 この地での合戦後武器を置き、養蚕などを営みながらこの地を発展させてきたそうです。
その後酒造りを始め、当代8代目の蔵元、大矢俊介さんが蔵を継いだのは24歳。 平成12年、先代が倒れてのバトンタッチでした。
俊介さんは酒蔵を継ぐ考えもなく、醸造学科ではなく応用化学を履修。 が、酒造りを担っていた杜氏集団も高齢化し、自ら酒蔵の仕事に携わることになります。
蔵に帰った当時の造りは、9割が普通酒と本醸造酒だったとか。 そんな中、巡り合ったお酒が埼玉の『神亀』。 蔵元の小川原良征社長に出会って、純米酒へと徐々に舵を切ります。
そして普通酒や本醸造酒の需要減少がすすみ、2009年に全量純米酒造りに切り替えたそうです。
その後は、生酛造りや白麹を使った酒造り、低アルや熟成にも挑戦。 今では『昇龍蓬莱』を生酛ブランド、『残草蓬莱』を速醸酒ブランドとして区分しています。
ところで、その『生酛造り』は『速醸酛』に比べて雑菌による汚染を受けやすく、より清潔な環境で酒造りを行う必要があります。
そのためオゾン水による洗浄や、貯蔵用冷蔵庫内のオゾン殺菌で、雑菌による汚染が起こりにくい環境を整備しています。
また、作業工程でも蒸米や麹には素手で触らず、使い捨ての手袋をして清潔な酒造りを実践し、綺麗な酒質に仕上げているそうです。
さすが元エンジニアだけあって、酒造りの環境衛生には一段と気を遣っているな。 甑の釜土には藁と泥を塗りつけて火の温度を均一化するなど、古来の術もちゃんと取り入れている。
まとめ
『残草蓬莱』は大矢孝酒造さんの創業以来の銘柄。 その『残草(ざるそう)』とはこの辺りの古い地名で、そして仙人が住む『蓬莱山』を掛け合わせたとか。
酒蔵の入口には樹齢400年の大ケヤキが2本林立しています。 初代は北条家家臣の大矢家、その20代続く名家の栄華を見守ってきたのでしょうか。
今は、首都圏最大級のダムが出来て道も広くなってますが、大矢孝酒造さんへは中津川を渡って旧道に入らなければなりません。 静かな山間の町と言うより、村と言った方がいいかもしれません。
ダムが出来る前に、その上流の早戸川でキャンプしたことがあります。 GWでも朝方は冷え込んで0度近くだった気がします。
最近はそんな冷気に恵まれない気候ですが、神奈川でも稀有な酒造りの環境で頑張る大矢さんを、これからも応援したいと思います。
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。