日本酒ファンの皆さんこんにちは!
今回は島根県は安来市の吉田酒造さん、『裏月山 縁(えにし)』を紹介します。
前回紹介しました『勝山 縁(えん)』は、皆さまとの素敵なご縁の願いが込められていましたが、こちらはさらに加えて、縁結びの神様との『縁』がイメージされてます。
ところで安来市と言えば安来節! 昭和の時代は宴会芸で踊られた『ドジョウすくい』で有名でしたが、もう今の世は宴会もなし・・・
さてこのお酒は蔵の隠し酒なんでしょうか、ナント裏ラベル。 『裏月山 縁』一体どんな味わいなんでしょうか?
『裏月山 縁』は、生酒のフレッシュな芳醇な香りと米の旨みが見事!
硬度0.3の日本一の超軟水で、華やかな香りと米の旨みを引き出している
このお酒の仕込み水は、かって歴代藩主が茶道に使った名水『お茶の水井戸』を復元し、1.5キロ離れた山からパイプで引き込んでいるそうです。
何と硬度は0.3の超軟水、日本一と言ってもいい柔らかい水です。 以前紹介した長野県の『鼎』に使われる『黒曜の水』が0.95ですから、これを抜いていますね!
ミネラル分が少ないことで糖化発酵がゆっくりとなり、当然のことながら醪の仕込み日数は多くなり、温度コントロールも細やかさが求められます。
鼎を醸す信州銘醸さんでも、超軟水の仕込み水をものにするためかなり苦労したみたいで、大吟醸並みの手が掛かるようだ。
《原料米》島根県産酒造好適米100%
《精米歩合》60%
《酵母》-
《日本酒度》- 《酸度》-
《アルコール度》16度
《造り》無濾過生原酒/純米吟醸
《お値段》720 ml 1548円
《製造》2022年7月
さて酒米は非開示ながら、地元の契約農家でつくる『佐香錦』『五百万石』『神の舞』を玄米の状態で仕入れ、自社精米しているとか。
酵母も非開示ながら、泡ありの協会9号や14号などが使われていますが、泡なしの協会1801号も最近使われています。 華やかな香りはこの辺りからでしょうか。
それにしても柔らかな口当たりに加えて、生酒のフレッシュな芳醇な香りと米の旨みが見事に引き出されていますね。
華があり透き通るような味わいは、超軟水の仕込み水由来でしょうか。 無濾過の米の旨味が濃厚に感じられ、かつキレ良くスイスイいけます。
『月山』のラインナップ紹介
さて、近年酒質がメキメキ向上している『月山』ですが、今年も多くの銘柄が受賞していますので、下表に代表的な銘柄を纏めました。
銘柄名 | 特徴 |
月山 スパークリング CLOUD | シャンパーニュと同じ手間がかかる瓶内二次発酵を採用。 とてもキメ細かい泡に、上品でおだやかな吟醸香が立ち昇ります。KuraMaster2022及びIWC2022スパークリング部門金賞。 |
月山 純米吟醸 | 佐香錦・改良雄町等の55%精米。 上品な旨味と香り、透き通る味わい、全てがバランス良く調和した純米吟醸です。 広島国税局清酒鑑評会『味を主たる特徴とする清酒』部門で優等賞連続受賞。 |
月山 特別純米 | 特別純米酒で精米歩合は60%、スッキリとした味わい。 料理を選ばない万能食中酒です。KuraMaster2022純米酒部門プラチナ受賞。 |
月山 芳醇辛口純米 | 酒米は五百万石等で70%精米の定番純米酒。 辛口なのに芳醇なバランスの取れた味わいで、後口にはキレが感じられます。 |
『裏月山 縁』と今夜の肴
『どじょうすくい踊り』で知られる安来節。 寝台特急・サンライズ出雲で駅に降り立てば、『どじょうすくい出迎え隊』が待っています。
安来市は全国屈指のどじょうの養殖地で、どじょうは臭みがなくて、市内のお食事処で柳川鍋や天ぷらなどで味わうことができるそうです。
でも残念ながら安来訪問では時間がなくて、もう一つの名産『出雲そば』を松江城の畔でいただきました。
さて暑い夏の夜は、芳醇旨口の『裏月山』と豆の味わい濃い『だだ枝豆』でキリッと決めてみました。
『吉田酒造(株)』の紹介
酒蔵からも見える月山富田城跡は、戦国大名尼子氏が山陰・山陽制覇の拠点とし、毛利氏との幾多の戦いを潜り抜けた難攻不落の要害でした。
和睦により毛利氏の所有となりますが、関ケ原の戦以降に統治の拠点は松江城に移り、その後城は廃城となったそうです。
さて、『吉田酒造』さんは1743年(寛保3年)に広瀬藩家臣の鈴木家が藩公特許による酒造館として創業。 江戸末期に、吉田清兵衛氏が蔵を引き継いで現在に至ります。
また、旧家は遡ること1730年(享保15年)に『安屋坂店』として酒造りを始めていたそうですから、合わせると300年近い酒造りの歴史があります。
さて5代目蔵元の吉田智則さんは、1998年法政大学は工学部を卒業。 飛行機マニアが高じて全日空商事に勤め、航空機部品の調達をしていたそうです。
2003年に蔵元に戻り、広島の酒類総合研究所で酒造りを学びます。
酒蔵に戻っての新たな酒造りの方針は『間口の広い日本酒』。 それまでの蔵が造っていたお酒は『超濃淳』で、それを誰もが親しめるような日本酒を目指します。
でも、島根の味は『甘濃い醤油』が決めています。 なので、それと合わせるために旨味がしっかりありながら後味がさらりと飲める『芳醇』な酒へと、舵が切られます。
奥様が担当するモダンなラベルデザインは、世代交代した出雲杜氏が醸す芳醇な香りと透き通る味わいと、見事にリンクしているね!
また近年は、新たに開発したスパークリング日本酒を含め海外のコンテストも数多く受賞。 生産量は十数年前の約3倍にまで伸びているそうです。
まとめ
酒名『月山』とはその年の一番良い仕上がりの酒を指し、月山富田城の領地を治める殿様へ献上していた歴史があるそうです。
そんな最高の酒を常に造りつづけることを目指して、蔵元さんは酒名『月山』を命名されたとか。
ところで出雲は、『古事記』のヤマタノオロチに酒を飲ませて退治した逸話や、『出雲国風土記』の神様たちの酒造りなどから、日本酒発祥の地とも呼ばれます。
そんな歴史を今に受継ぐ島根の酒蔵は、人口66万人に対しその数27(2021年9月現在)と多く、なんと1人当たり清酒消費量は西日本ではトップ、全国7位です。(2020年度国税庁調査)。
昔も今も日本酒をこよなく愛する島根・出雲の国。 これからの出雲酒の進化に大いに期待したいところですね。
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。 今回も、最後までお読みいただきありがとうございました。