日本酒ファンの皆さんこんにちは!
さて今回は、宮城県の小規模な酒蔵ながら、全国でも大人気ブランドとなった『宮寒梅 純米大吟醸』を紹介します。
実は昨年秋には、銘酒蔵探訪シリーズの『寒梅酒造』や宮城への酒旅でも紹介してますが、今回は仙台の『酒屋はくさん』で購入してのレビューとなります。
さて『宮寒梅 純米大吟醸』、その味わいはどう進化しているのでしょうか?
『宮寒梅 純米大吟醸』は、しっとり澄んだ甘みの奥に完熟した米の味わいが覗く
『寒梅酒造』はなんと造りの2割を自社田で酒米を栽培している
『寒梅酒造』さんは大崎市西古川駅の近郊にあって、酒蔵の前には広ーい自社田が広がっています。
蔵の裏手には鳴瀬川の支流・多田川が流れています。 蔵の仕込み水は、その鳴瀬川の伏流水が井戸から汲み上げられており、硬度50の軟水だとか。
この夏の集中豪雨で蔵の下流あたりが氾濫したようだけど、大丈夫だったかな? 今年は秋田の酒蔵さんも危なかったけど、災害リスクは頭の痛い課題だね。
《原料米》宮城県産『美山錦』100%
《精米歩合》45%
《酵母》-
《日本酒度》1.5 《酸度》+1
《アルコール度》15度
《造り》 純米大吟醸/火入れ
《お値段》720 ml 1870円
《製造》2022年8月
その昔大地主だった頃の田圃は、何処まであったのでしょうか? 今では県内でも稀な酒米づくりから醸造まで一貫して自前で行う『栽培醸造蔵』です。
田圃では『美山錦』『愛国』『ひより』『山田錦』を作付。 2割程が自社田栽培で、その他は契約農家さんの栽培、また醸造割合は以下の通りとなっています。
原料米名 | 醸造割合 |
美山錦 | 7割 |
愛国 | 0.5割 |
ひより | 0.5割 |
蔵の花 | 0.5割 |
山田錦 | 1.5割 |
さてこのお酒の酒米『美山錦』は、7割も醸している蔵の主力米です。 平成5年の大冷害の折、秋田湯沢の農家さんを頼り、『美山錦』の苗箱1箱を譲り受けて、自種にしたそうです。
そんな手塩に掛けた酒米で醸した酒の味わいは、あでやかな香りに加え、しっとり澄んだ甘みの奥に完熟した米の味わいがのぞきます。
『美山錦』らしい爽やかなキレ味が心地良く、香りと味わいのバランスが大変素晴らしい純米大吟醸ですね。
寒梅酒造のラインナップ紹介
ところで『寒梅酒造』さんのラインナップは多彩の一言につきます。 『人生を伴に歩む酒』よろしく、普段飲みからハレの日用まで揃っています。
勿論、小仕込みでコストが掛かっていながら、お値段もリーズナブルです。 取扱店が少なく、人気商品を中心に紹介しておきますので見かけたら即購入ですね!
シリーズ | 銘柄 | 特徴 |
EXSTRA | 吟髄 | 純米大吟醸19%s精米、宮寒梅の最高峰で、蔵元随一の特別酒。けがれ知らずの無垢な旨味と、冴え渡る清澄な喉越し。 |
〃 | 醇麗純香 | 純米大吟醸35%精米、凛とした綺麗な口当たり。熟れきった果実のような芳醇・濃密な酒の味わい。全国新酒鑑評会出品酒で、連続金賞受賞。 |
宮寒梅 | 純米大吟醸 | 美山錦45%精米。 豊かな香り、 米の旨みをふんだんにたたえ、 爽やかなキレが後味となっておとずれます。 |
〃 | 純米吟醸 | 美山錦55%精米。あでやかな香り。そしてしっとり澄んだ甘みの奥に、完熟した米の味わいが。 |
〃 | 純米吟醸おりがらみ | 10月、美山錦55%精米の新米新酒。 端々しく香りたつ、搾り立ての極上生酒。 |
〃 | Mr.Summer Time | 夏の季節商品。華やかな香りとほのかな酸味。 |
鶯咲 | 特別純米酒 | 愛国55%精米の純米酒。香りは控えめで、米の特質を最大限に引出し、繊維できめ細やかな味わいと程よい余韻を残す。 |
酒質向上の決め手は、冷房設備の導入かな。 仕込み蔵、商品倉庫、米蔵に至るまで冷蔵管理されている。 それと絞ってすぐに瓶詰めすることで鮮度が保たれている。
『宮寒梅 純米大吟醸』と今夜の肴
今年は桜も早ければ梅雨期の高温と、どこかしこも日本の季節感が喪失状態でしたね。 そして世界中が干上がって灼熱地獄の様です。
そんな暑いときには、やっぱり『豚しゃぶ』で栄養補給が一番です。
キンキンに『宮寒梅 』を冷やして、芳醇な味わいと爽やかなキレを楽しみましょう。
『寒梅酒造』の紹介
創業は1918年(大正7年)。 15町歩もの地主だった岩崎碩次郎氏が地代替わりの余った米で醸し、『岩崎酒造店』として『誉の高川』の銘柄で販売開始します。
しかし先の大戦中は、米不足から酒造りを休止。 ようやく1957年(昭和32年)に銘柄を『宮寒梅』とし、社名は『寒梅酒造』に改めて酒造りを再開します。
その後地酒ブームが訪れ、2代目の南部杜氏が純米酒造りに力を入れて、高級酒ブームに乗っていたそうです。
ミレニアムを超えるといよいよ日本酒離れが顕著となり、また重い酒質だったことなどから売り上げが低迷、過剰在庫の経営危機を迎えます。
そこで4代目蔵元岩崎隆聡さんは、長女の真奈さん・健弥さん夫婦を経営に加え、改革に着手。 若い2人を交え『宮寒梅らしい酒とは何か』をめぐり、経営ビジョンの検討を重ねます。
導き出した答えは『一杯で旨い酒』。 フルーティーな香りと米の旨味を十分に引出した商品にシフトし、さらに酒質向上のための冷蔵設備を導入、再スタートを切ります。
そんな矢先、2011年の東日本大震災により仕込蔵が全壊。 そこで復興ファンドや銀行からの借入で、同年12月に冷房設備付きの仕込み蔵を再建します。
再々のスタートに当たっては普通酒を全廃・全量純米蔵とし、さらに取扱酒販店をナント20店に絞り込みます。
そうして一新した酒造りの評判は上々、徐々に取扱店を戻して今では以前の売り上げを超えています。
復活が軌道に乗った2017年には、若い世代に経営をバトンタッチ。 新社長となった岩崎健弥さんは、早速温度センサー等のIoT機器やWiFi・クラウド等のシステムを導入。
『経験・勘+データ』を組合せた高品質の酒造りの方向性は、小さな酒蔵の生産性向上や売上向上に寄与しています。
そして今、『美味しい地酒は、美味しい米があってこそ』とばかりに会長さんも頑張っています。 産直農産品よろしく、造り手の顔や想いが見える酒造りに邁進されています。
さていよいよ実りの秋を迎えて、宮城の『栽培醸造蔵』はこれから忙しくなりそうです。
まとめ
酒名『宮寒梅』は、酒造りに欠かせない『宮水』と、春一番に花開き人の心を和ませる『寒梅』から、命名したとか。
そんな先人の思いは、いまの酒造りのコンセプト『こころに春を呼ぶお酒』につながっている気がしますね。
若い世代にバトンタッチして以来、酒質向上もさることながら経営が安定し、ブランド力向上を狙った商品デザインやホームページのリニューアルが繁盛に行われています。
SNSによる蔵元さんの米作りの発信や、初心者にも喜ばれる商品開発など、消費者のハートを見事に捉えているのではないでしょうか。
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。 今回も最後までお読みいただきありがとうございました。