日本酒フアンの皆さんこんにちは!
さて今回は、会津若松市の『会津中将 初しぼり 生純米原酒』を紹介します。
酒どころ会津若松にはいくつもの酒蔵さんがありますが、このお酒を醸す『鶴乃江酒造』さんは、レトロな大正時代の名残を残す町並みにあります。
でもその味わいは、近年各地のコンテストで多くの上位入賞を果たしているのです。 特にブラインドジャッジ評価のコンテストでは抜群の成績です。
さて『会津中将 初しぼり 生純米原酒』は 、一体どんな味わいなんでしょうか?
『会津中将 初しぼり 生純米原酒』は爽やかな香りと柔らかくて綺麗な甘み
槽搾り無濾過生のフレッシュさに加え、バランスのいい柔らかな飲み口
《原料米》会津産『五百万石』100%
《精米歩合》60%
《酵母》-
《日本酒度》+3 《酸度》1.6
《アルコール度》17度
《造り》純米酒/無濾過生原酒
《お値段》1800 ml 3080円
《製造》2021年12月
このお酒の酒米は会津産の『五百万石』が100%使用され、また仕込み水には磐梯山の伏流水が使われています。
『鶴乃江酒造』さんで特徴的なのは、昔ながらの酒造方法が踏襲されており、搾りはヤブタではなく全てのお酒が槽で搾られています。
またこのお酒は上澄みをつめた無濾過生原酒でしかもアル度は17度となっていますが、特にきつさは感じません。
柔らかく爽やかな甘みと芳醇な香りがあって、綺麗な甘味が舌の上に広がり、五百万石らしいやや辛口の味わいが後口を締めます。
そしてお米のふくらみが感じられ、華やかさの中にも芯のある味わいがバランスよく、飲み飽きしない仕上がりですね!
久しぶりに飲んだけど、酒質が柔らかくなって飲みやすいね。 杯を重ねていくと、五百万石らしいやや辛口の輪郭がでてきた。 さすがタイトルハンターらしい、飲みやすく綺麗な味わいだ!
福島の日本酒『会津中将 初しぼり 生純米原酒』と今夜の肴
会津若松の観光なら、お城や酒蔵巡りもいいですね。 そしてお酒の試飲で物足らなくなったら、会津の郷土料理でしょう。
只見線の七日町駅をおりてすぐ、郷土料理の『渋川問屋』さんでいただいた郷土料理が、とても美味しくて印象に残っています。
中でも、『鰊の山椒漬け』と『鰊の昆布巻き』は雪国の伝統を感じた料理でした。 濃すぎない味付けも、うすにごりのお酒にピッタリでした。
そして線路を渡った肉屋さん『肉の庄治郎』や『馬刺の鈴静』で、赤身ロースの『馬刺し』をお土産にして、『会津中将』と合わせると至福の時間が訪れますよ。
『鶴乃江酒造』の紹介
会津若松市七日町には、今なお大正時代の文化財的な建物が多く並びます。『鶴乃江酒造』さんの建物も、大正時代の建物と昭和の時代の建増しが繋がっています。
蔵元の林家は、藩祖保科公とともに会津入りしたお侍で、その後会津藩御用商人となります。 1794年に『永宝屋』として分家創業後、当主は代々平八郎を襲名してきたそうです。
その後明治初期に、鶴ヶ城の『鶴』と猪苗代湖を表す『江』を使った『鶴乃江』に屋号を改め、昭和52年には、酒名『会津中将』が生まれます。
さて、現在の『鶴乃江酒造』さんの酒造りを担っているのは、7代目の長女ゆりさんと夫の向井洋年さん。
ゆりさんは、家業のお役に立てばと父上と同じ東京農大醸造学科に進学、1996年卒業後は『鶴乃江酒造』に入社します。
早くも1年目に、『女性が造る女性向けのお酒』をコンセプトとしたお酒を造る機会が巡ってきます。 そのテイストは、初心者向けの甘口を目指したとか。
酒米は五百万石、酵母を夢酵母で仕込み、出来上がったお酒は意に反して辛口だったそうです。 父上の命名は、なんと大胆にも娘の名前。 『ゆり』として売り出すと、大ヒットします。
でもまだまだ実力不足。 母の恵子さんも学んだ県清酒アカデミー職業能力開発校に入学し、その後蔵人として働きながら酒造1級技能士を取得します。
全国でも珍しい母娘の杜氏とは、恐れいったね! 全国には、女性蔵元・娘杜氏の酒蔵もあって、女人禁制はもう死語だね。 女性ならではの繊細な手作業、衛生管理、分析・利き酒、商品開発力などを活かした道や立ち位置はまだまだある筈だ。
その後ゆりさんは、共に蔵で働いていた向井洋年さんと2003年に結婚、千葉に移り住むことになります。 でも、『ゆり』の仕込時期になると毎年蔵に舞い戻っていたそうです。
でもそんな生活は4年余り、後継ぎの弟さんが酒造業以外の仕事に就いたことから、2008年には再び会津若松に戻り、二人三脚で再び酒造りを始めることに。
実は、洋年さんは大学の時の同級生。 なあーんだってことなんですが、二人で力を合わせて少しずつ蔵の改革を進めます。
人件費や宣伝費に事欠く経営状況の中で、洋年さんが取り組んだのはまず貯蔵設備の改修だったとか。 これにより酒質の向上を図ります。
ところで今でこそ、大手の酒販店や飲食店で『会津中将』を見かけますが、ほんの少し前までは百貨店の試飲販売がメインで、知名度の向上や販路開拓が課題でした。
その後、震災復興支援物産展などのイベントでようやく評判となり、お酒が出回り始めます。 さらに知名度向上策として、コンテストでの上位入賞を狙います。
そして少しずつ上位入賞を果たしてきた仙台日本酒サミット2014では、『会津中将・純米吟醸夢の香』がついに1位となります。 さらに2015年も1位となります。
その勢いで、2015 SAKE COMPETITION 純米大吟醸の部でも、見事1位に輝きます。 こうしてきれいな甘みのある優しい口当たりが、漸く世界に認められたのです。
まとめ
『会津中将』は、会津藩祖・保科正行の官位にちなんだ酒名。 さすがと言いますか、会津藩御用達頭取としての誇りと歴史を感じますね。
ところで、ゆりさんの酒造りのモットーは『和醸良酒』だとか。 和は良酒を醸す、いや良酒は和を醸すですか・・・
実は以前に紹介した『会津男山・わ』を醸す小林靖さんは、お爺さんの酒蔵を復活させるにあたり、こちら鶴乃江酒造さんで修行されたとか。
小林さんが惜しげもなく酒造り教えて貰えたのは、会津の地にアカデミーを中心とした人の和と、何よりも郷土愛や義の心があるからに違いありません。
雪深き郷に暮らす会津の人々、優しくてとても温かいですね!
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。