日本酒ファンの皆さんこんにちは!
今回は、初めての茨城紹介となるお酒『森嶋 純米吟醸山田錦』です。
醸しているのは、日立市の海沿いにある森嶋酒造さん。 近年めきめきと酒質が向上し各コンテストは上位入賞で大人気となっています。
さて『森嶋 純米吟醸山田錦』、一体どんな味わいなんでしょうか?
『森嶋 純米吟醸山田錦』はフレッシュでキレよい綺麗な酒質
仕込みの井戸水は、ミネラルたっぷりな中硬水
『森嶋酒造』さんがあるのは、日立市北部の川尻海岸。 海岸までは30メートルと、日本でも有数の海近にある酒蔵さんです。
海近にある八戸港の『八戸酒造』さんや、境港の『千代むすび酒造』さんなどは、仕込み水を遠くから運んでいましたが、こちらはナント井戸から汲み上げています。
地下の砂地を掘り進めること100メートル、阿武隈山系の伏流水を汲み上げているとか。 水質は中硬水で、適度な鉱物質を含んでいるそうです。
《原料米》『山田錦』100%
《精米歩合》60%
《酵母》901酵母
《日本酒度》+2 《酸度》1.6
《アルコール度》15度
《造り》生詰め/原酒
《お値段》1800 ml 3355円
《製造》2023年5月
酒米は『山田錦』の60%精米で、酵母は9号酵母とクラシックな組み合わせ。
そして原酒ながらアルコール度を15度におさえた柔らかな仕上がりは、まさに食中酒にふさわしい造り。
1月の上槽後の瓶燗火入れでフレッシュさを閉じ込め、さらに低温でじっくりと寝かせた5月の出荷ですが、開栓後もしばらく発泡感が感じられます。
香りは穏やかですが、口に含むと山田錦らしい膨らみと華やかさが感じられ、綺麗な酸がシャープな味わいを演出していますね。
仕込み水の中硬水のミネラルが作用しているのか、やや辛の透明感のある味わい。 後口の辛みが程よく、派手さはなくも艶やかで伸びのある味わいは、どこか飛露喜のようなイメージだね。
『森嶋シリーズ』の紹介
初森嶋に気をよくして、ラインナップを調べてみました。
酒米は、雄町、ひたち錦、山田錦、美山錦の4種類のみ。 そして、精米歩合も50%、55%、60%、65%の4種類で、純米吟醸がメインです。
特徴的なのが糖度は1~1.3と大変低く、また酸度は1.7~1.9と比較的高めの数値。甘みは控えめで、爽やかなキレ良いお酒となっています。
銘柄と酒米 | 造りと特徴 |
森嶋 雄町 | 純米大吟醸、生詰め。艶々光る透明感のある軽快な口当たりと、雄町米のふっくらとした甘みを伴うボリューム感と旨味のフラッグシップモデルです。 |
森嶋 美山錦 | 純米吟醸、生詰め。控えめな吟醸香が上品に香り、透明感のあるクリアタッチな飲み口と軽快な旨味との絶妙なバランスです。 |
森嶋 ひたち錦 | 純米吟醸、生詰め。ひたち錦は茨城県の酒造好適米。森嶋ブランドの中で唯一の辛口で、透明感と瑞々しさも兼ね備えたバランスのいい味わいです。 |
富士大観 | 純米吟醸、生詰め。県産酒造好適米を100%使用したシャープなキレ味。地元流通の濃淳辛口酒。 |
『森嶋 山田錦』と今夜の肴
常磐沖は、黒潮に乗って北上してきた様々な魚が、親潮で発生したプランクトンを食べて大きくなる豊かな海。
そこから上がる『常磐もの』は、春は『シラウオ』夏は『カツオ』に『スズキ』。 秋は『ヒラメ』『サンマ』に、冬はご存じ『アンコウ』と『メヒカリ』。
そんな訳で、今日は『カツオの藁焼き』に鯛の刺身とスキっとした森嶋のお酒で、常磐をいただきます。
『森嶋酒造』の紹介
『森嶋酒造』さんの創業は1869年(明治2年)。 太平洋戦争の戦火で酒蔵が消失するも、その後耐火性に優れた大谷石で蔵が再建されます。
戦後酒造り再開時の酒名は『大観』。 4代目蔵元と親交があった水戸出身で日本画の巨匠、大酒豪の横山大観から提案があったそうだよ。
さて、そんな歴史ある北茨城の酒蔵を引っ張るのは、6代目専務蔵元杜氏を務める森嶋正一郎さんです。
現蔵元の5代目鎮一郎さんは明治大学で経営学を学びましたが、跡取りの正一郎さんには蔵の将来を考えて、進学先に東京農大を勧めます。
大学卒業後は滋賀県の池本酒造で修業し、1999年に帰蔵。 その頃蔵では南部杜氏のもとで、もっぱら普通酒を造っていました。
そんな酒蔵経営の在り方に正一郎さんは悩みながらも、蔵の方向性と酒造りを模索。 受験資格を得た2006年には、南部杜氏試験を一発合格で決めます。
そして酒造りは冷蔵が肝心と『冷蔵設備』を新設し、工程も見直してようやく酒質の向上を実感します。 が、そこに2011年の大震災が蔵を直撃したのです。
幸い浸水被害は軽く、被害が大きかったのは酒蔵の壁倒壊。 一気に廃業の危機に立たされますが、父子が出した結論は、この地での酒蔵再生でした。
正一郎さんはさらなる酒質改善にと搾り機や洗米機、麹室などを一新。 そして九州まで酒造りの指南を求めます。
これによって酒質は一段と向上し、2015年からは季節雇用から蔵元杜氏の下での社員醸造へと切り替えます。
10数年がかりの酒質改善策がようやく実を結び、2019年酒づくりにかける想いと覚悟を込めた新ブランド『森嶋』が誕生したのです。
まとめ
『森嶋』のラベル、高級感があり視認性の高いデザインがユニークですね。 この石片、大震災で崩れ落ちた石蔵の大谷石なんだそうです。
ブランド名の『森嶋』と『Morishima』は金箔押し、そして石片は透明の箔押し。 裏にはストーリー好きな酒飲みへのキャッチ『一石投じる一杯を』があります。
この森嶋ブランドの立ち上げは、ナント3年がかりでの地元酒販店とデザイン事務所との共創プロジェクトなんだそうです。
この地で酒造りを続ける不屈の精神と、これからも自分自身に一石を投じる姿勢を忘れずにいたいという想いが、飲み人の心にグサリと刻み込まれますね。
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。 今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。