日本酒ファンの皆さんこんにちは!
今回は、春の大和路への酒旅で飲んだ『KURAMOTO ym64 +REBREW』を紹介します。
このお酒を造る『倉本酒造』さんは、奈良市と言えども古都からは離れた厳冬の山間地で、自社田で酒米を育て、そして自社の山から水を汲んで酒を醸しています。
さて『KURAMOTO ym64 +REBREW』、一体どんな味わいなんでしょうか?
『KURAMOTO ym64 +REBREW』は瑞々しく甘く爽やかな味わい
特徴的な『麹四段仕込』ですこし複雑な味わいをみせる
『倉本酒造』さんの自慢は、なんといっても質の良い仕込み水。 裏山の地層で濾過された柔らかな山水(軟水)が使われています。
この辺りは流紋岩やデイサイト、火砕流堆積物の地層なんだそうで、カルシュームの湧出が多いそうです。
そのカルシュームは酵母の増殖にあまり寄与しないために、時間をかけてじっくりと醸されているそうです。
《原料米》『山田錦』+酒粕
《精米歩合》64%
《酵母》協会7号酵母
《日本酒度》±0 《酸度》2.2
《アルコール度》16度
《造り》 酒粕4段仕込、無濾過生原酒
《お値段》720 ml 1650円
《製造》2022年3月
蔵は奈良市の南東部・大和高原の標高500mの山間にありますが、この辺りは寒暖の差が大きくて、良質の酒米が育つそうです。
ドメーヌ蔵の生産米は『夢山水』。 6代目蔵元の倉本嘉文さんは酒蔵の前に広がる6反の棚田で、『酒造りは米から』を実践しています。
自社田米は純米酒『倉本』などに使われていますが、このお酒は『山田錦』の64%精米で仕込まれています。
そして特徴的なのは通常の三段仕込を行い、さらに四段目に別のシリーズ『KURAMOTO SE』の酒粕を加えて仕上げられていることです。
『SE』はまさに白ワインのような香りが特徴。 その香気成分『4MMP』を引き出した風味が大人気となっています。
そんな吟醸香を有する酒粕を利用して、香り付けと酒化率の向上を図っているようです。 甘く爽やかな味わいで、酒粕由来と考えられる味の複雑さが感じられますね。
四段仕込は通常の酒米やもち米などがあるけど、酒粕とは驚いた。 爽やかな香りと、少し深みのある味わいはワインのようでもあるね!
『KURAMOTO』には『スタンダード』とチャレンジタイプの『ビットライン』がある
2018BYからスタートした『KURAMOTO』は、専務で杜氏を務める倉本隆司さんがおこしたもの。
『スタンダードライン』とシンプル&チャレンジングな『ビットライン』の展開は洗練された魅力的な味わいで、奈良酒の新しい流れに違いありません。
ここでは同社のホームページから商品ラインの特徴を紹介します。
ライン | 商品名 | 特 徴 |
スタンダード | KURAMOTO SE | 「4MMP」と呼ばれる、白ワインのソービニヨンブランなどに含まれている、キリっと爽やかな青い香りが特徴。爽やかな酸味とバランスのよい甘さが口の中に広がりつつ、後口はスッとキレています。 |
〃 R1 | 菩提酛のそやし水に使用している正暦寺乳酸菌を用い、独自のFLaP製法により醸されています。口に含むと、乳酸菌由来のまろやかな酸味とバランスの良い甘みが広がります。 | |
ビットライン | KURAMOTO64 山田錦 GENERAL | “山田錦”を64%に精米し、低温醪で長期発酵で醸されています。トロピカルなふくよかな味わいの後、しっかりとした 酸味により爽やかなキレを感じさせてくれます。 |
KURAMOTO64 夢山水 GENERAL | 自家田で栽培した酒米“夢山水”を64%に精米し、夢山水の特徴であるスッキリさを表現し、寄り添えるお酒をコンセプトにドライな仕上げ。 | |
KURAMOTO Ym64 SAKE-TEN | 山田錦64%精米で醸したお酒に弊社の辛口清酒を加えて絞ったお酒。 深みとボリュームを感じられる後口です。 |
奈良の日本酒『KURAMOTO ym64 +REBREW』と今夜の肴
深い味わいのする『KURAMOTO ym64 +REBREW』。 その爽やかな香りとその瑞々しい味わいに、今回はサーモンのカルパッチョを合わせてみました。
本場イタリアでは生の牛肉を使うのがスタンダードだそうですが、やはり日本酒にはお魚で見た目も鮮やかなオレンジ色のサーモンを綺麗に盛り付けました。
ところで、北海道ではサーモンの不漁につづき玉ねぎも不作のようで、値上げが心配になりますよね。
『倉本酒造』の紹介
『倉本酒造』の若き杜氏・倉本隆司さんは、東京農業大学を2004年に卒業後、森永乳業に入社し11年間勤務します。
実は大学卒業時に、蔵元から酒蔵は継がなくていいと言われ、ならば菩提酛につながる乳酸菌の探究の道を選択することに。
実家を離れた会社員生活のある日、先輩の日本酒イベントで『寫楽』の旨さに驚かされます。 と同時に、閉ざしてきた酒造りへの思いがにわかに疼いてきたのです。
父の嘉文さんは、昨今のアルコール離れや日本酒離れで蔵の存続に危惧をおぼえ、息子の酒造りにはもちろん反対を表明。
しかし、2015年隆司さんは両親に相談もなく会社を退職し、醸造研究所で酒造りを一から学び直します。
実家での酒造りを手伝う隆司さんの本気度を感じた蔵元は、そこで蔵内の設備を更新し始めます。
そして隆司さんは3年目に杜氏に就任し、翌年には早くも自身のブランド『KURAMOTO』を立ち上げ、蔵の再生を見事に果たしたのです。
まとめ
『KURAMOTO』の英語表記は、父が立ち上げた『倉本』とは違う自分の個性を表現したかったそうです。
ファミコン世代らしいデザイン・ネーミングの『bit』は、コンピュータなどでは0と1のいずれかを取る二進数の一桁として表されます。
つまり2のn乗を進めていくと、2の2乗=4、2の3乗=8・・・2の6乗=64。 『Ym64』とは山田錦で64%の磨きを表わしています。
この前飲んだ『風の森』は65%精米+7号酵母なので『657』! もう、奈良の酒はなんだかついていけてません。
それでも蔵じまいの危機から再生し、新しい大和の酒造りに挑む『倉本酒造』さんの進化に大いに期待したいですね!!
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。 今回も最後までお読みいただきありがとうございます。