皆さんこんにちは!
今回は、会津坂下の『曙酒造』が醸す『天明中取り零号』。 1年前には夏酒の『天明初夏の生セメ』を紹介していますね。
今年の夏には会津坂下の酒蔵を訪問。 残念ながら酒造りはお休み、蔵の写真だけを収めてきました。
さて酒米の収穫を終えて、秋一番の新酒『天明中取り零号』、一体どんな味わいなんでしょうか?
『天明中取り零号』は 蔵の代名詞天明中取りシリーズのトップランナー
なんといっても透明感のある米の甘旨みと酸のバランスは抜群
《原料米》会津産『瑞穂黄金』
《精米歩合》65%
《酵母》協会9号、自社酵母、うつくしま夢f701
《日本酒度》- 《酸度》-
《アルコール度》16度
《造り》純米/おりがらみ生原酒
《お値段》1800 ml 2860円
《製造》2021年11月
このシリーズ1番バッターの酒米は食米の超早生品種の『瑞穂黄金』。 造りは、おりがみ生原酒ですので、円やかな甘旨みが膨らみます。
酵母には、なんと協会9号、自社酵母、そしてうつくしま夢酵母の3種類が使われています。
その味わいは、もちろんピチピチの微発泡のガスにのって、甘さの中にも新酒らしい若々しい苦味が利いていますね。
全体的にバランスがうまく取られて、ほんわりと円やかな透明感のある味わいが実現されています。
酒米『瑞穂黄金』は極早生ゆえに、トップバッター抜擢は必然
『瑞穂黄金』は、福島というよりは東北で一番早く収穫される食用米なんだとか。
でもこの『瑞穂黄金』は食用米のせいなのか、旨甘を追及する曙酒造さんがほぼ手の内とし、あまり他の蔵の醸造は聞きません。
実はこの米は、冷害だった平成5年に坂下町の猪俣徳一商店さんが、ほの青いひとめぼれの水田の中に黄金色に実った稲穂を発見し、大切に育てて平成14年に新種登録されたもの。
曙酒造さんでは、地元の酒造好適米研究会の協力による有機栽培米を用いて、毎年の出来具合を確かめながら、個性ある自然な酒造りをされていますね。
この前訪問した『寒梅酒造』の岩崎会長も言ってたけど、平成5年の冷害はまったく米がとれなくて、どこも苦労したみたいだ! そんな不作の年の田圃の中で発見された稲穂は、ホント仏様みたいに黄金色に輝いていたに違いないね!
瑞穂黄金で醸すもう一つの代表銘柄は、ヨーグルトリキュールの『snowdrop』
曙酒造さんでは、日本酒が苦手な人にも向けて色々な酒造りにチャレンジされていますが、なんといっても誰もが驚くお酒があります。
それは地元米の瑞穂黄金と、同じ町内の『会津中央乳業』さんのヨーグルトを使った日本酒ベースのヨーグルトリキュール。
アルコール度は6度で、お酒と言われなければ本当にヨーグルトと思えるくらい、その濃さが利いていますよ。
地元の希少な酒米と、これまた地元の有名な酪農品とのコラボでの旨い商品づくりは、ホント見事ですね。
実はこのお酒、あの東日本大震災をきっかけに開発されたそうで、なんでもヨーグルトと日本酒が合うことを発見したのは、近所の五ノ井酒店さんだそうだ。 地元の皆さんとうまくコラボ出来ているね! 五ノ井さんへ行くとウェルカム酒は、このお酒だったよ!
『天明中取り零号』と今夜の肴
今年の秋は、サケやサンマが不漁だったとか。 日本の水産業はこれからどうなるのでしょうか?
日本酒には何といっても魚ですからね。
そんなわけで、今回は北海道のホッケ焼きで迫ってみました。 脂の乗りは最高です。 天明の甘旨い膨らみといい、堪りませんね!
『曙酒造』の紹介
『曙酒造』さんの6代目蔵元鈴木孝一さんは27歳で杜氏を継ぎ、この10年間で生産量を400石から1200石に増やしてきました。
実はご両親の病気で酒蔵に帰ってきたのですが、その後東日本大震災が発生し蔵は半壊、大きな痛手を負います。
そこで孝一さんは、もう一度この地で酒造りすることの意味を問いただし、腹を決めて酒造りをリスタートさせたのです。
2011年冬から杜氏となって酒質改革を進めようとしますが、多くの蔵人は去っていきます。 さらには資金繰りにも苦労したそうです。
そこで清酒だけでなく、ユーザー層を広げるためにリキュール酒を開発します。 それが見事に当たり、その資金で設備投資をすすめ酒質改善につながったのです。
まずは製麹室を改修し、更には仕込み蔵や搾り部屋の冷蔵化、サーマルタンクの増設など少しずつ投資をすすめていきました。
順調な経営回復で、昨年は地元銀行と私募債発行にこぎつけているね! 最近の酒蔵経営では珍しい資金調達だけど、これも良好な業績評価を受けてのことだ。
一方酒造りのスタイルは、透明感のある清らかなうま味、甘味、酸味のバランスを整えること。 地元産の酒米や果実を使い、評価も上がっていきました。
さらに造りは徹底した温度管理やクリーンな手仕事を行い、そしてデータの集積や作業の標準化をすすめて、美酒の再現性を高めたのです。
まとめ
『天明』は、現蔵元の孝一さんの母鈴木明美さんが、2001年に小規模ながら品質を重視して全国の酒好きに向けて開発されたのだそうです。
その酒名には、『曙』と同じく夜明け前の様子が表されており、伝統を守りながらも新しいものに挑戦する気概が込められているとか。
母上はご夫婦で全国を駆け回りながら酒造りを模索。 その息子の孝一さんも母の手ほどきを受けることなく、ひたすら出かけて飲んでは酒造りの求道をしたそうです。
ところで裏書のラべルにあるコメントは長文で、少々ウザったいでしょうか? でもそれは蔵元の自信でもあるのでしょう。
その証拠にうざいコメントがあるお酒の味わいは、どれも間違いなくエクセレントですから!
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。