皆さんこんにちは!
今日は、香川県は観音寺の川鶴酒造、130周年記念酒『KAWATSURU SINCE1891 ~知新~』を紹介します。
皆さんは、香川県のお酒って飲まれたことありますか? あると答えた方は四国在住か、日本酒オタクの人に違いありません。
何故なら、香川県は日本で一番小さな県、人口は百万人を割ります。 酒蔵は6蔵しかありません。 でも、酒造りの歴史も伝統も他の県に負けていません。
さて『KAWATSURU SINCE1891 ~知新~』 一体どんな味わいなんでしょうか?
『川鶴130周年記念酒/知新』は、生酛造りにチャレンジ
蛍飛び交う清流の伏流水、中硬水の仕込み水は力強い味わいを生んでいる
『川鶴酒造』さんがあるのは讃岐の観音寺市、 蔵の裏手には蛍が飛び交う清流宝田川が流れています。
実は『川鶴』の酒名は、初代蔵元川人清造さんがこの財田川に鶴が舞い降りる夢を見たことに由来しているとか。
蔵の仕込み水は、蔵の井戸で組み上げた讃岐山脈からの地下伏流水で、ミネラル成分がほどよく含まれている硬度100の中硬水です。
そのため発酵促進効果が高く、栄養分も多く含まれているので川鶴の酒は力強く、そして旨みと深みのある味わいに仕上がるそうです。
酒米は『山田錦』で、標高約200mの最適な環境に恵まれた田野々地区の契約田や、また2007年から蔵の隣の自社田でも栽培が行われています。
《原料米》香川県産『山田錦』
《精米歩合》65%
《酵母》さぬきオリーブ酵母
《日本酒度》-3 《酸度》2.5
《アルコール度》15度
《造り》生酛造り/純米生
《お値段》720 ml 1891円
《製造》2021年9月
香川のオリーブ酵母は軽快な酸味とビターな味わいで、豊饒なワインのよう
さてこの創業130周年記念酒には2種類あって、第1弾は『ー温故』の名称で、スペックは酒米が香川産山田錦・精米歩合50%・酵母が協会701号です。
なんといってもこの第2弾が特徴的なのは、最近開発されたばかりの『オリーブ酵母』が使われていることです。
この酵母は、オリーブの実から4年の歳月をかけて選抜されたもので、去年商品化されたもの。 マスカットのような上品な香り、フレッシュで軽快な酸味とキレが特徴なんだそうです。
まさにぶどうやライムのような爽やかな香りに、軽快な酸味とともに少し苦味が効いて、白ワインのような瑞々しさがあって、バランスも抜群ですね。
実は筆者が仕入れたのは生酒で、なじみの地酒店のみの仕様だそうです。 それ故にジューシーな米の旨味と、舌先を刺激するガス感があります。
最近白麹の造りのお酒を多く飲んできたけど、それを上回るかのような抒情的な深い味わいで、参った! 限定600本らしいけど、もっと造って欲しいね。
香川の日本酒『川鶴130周年記念酒/知新』と今夜の肴
天然の生簀と呼ばれるほど水産物が豊富な瀬戸内海。 春のサワラ、夏のマナガツオ、秋から冬が旬のハマチ、牡蠣、蛸と新鮮な魚貝料理が楽しめます。
実は香川県はハマチ養殖発祥の地なんだそうです。 また、伊吹いりこ(カタクチイワシ)が有名で、川鶴酒造さんでは、超熱燗専用酒として『炙りいりこ酒』を開発しています。
さて、イリコの晩酌では寂しいので、今夜はイワシ。 イワシも漁獲量が落ち込んいましたが、温暖化のせいでしょうか、最近は秋刀魚と入れ替わって豊漁です。
寄生虫に注意しながらも、脂乗りした刺身の味と日本酒は堪りませんね!
『川鶴酒造』の紹介
『川鶴酒造』さんは明治24年(1891年)に創業。 もともと徳島県で染物業を営んいましたが、酒造免許取得を契機に、良水を求めて観音寺に蔵を構えます。
川鶴酒造さんは全盛期には9600石にも上る出荷量を誇っていましたが、そこがピークで販売量は年々減少します。
1988年に瀬戸大橋が繋がると物流経済が大きく変動し、灘など本州の酒が一気に入ってきます。 橋の開通前、香川にあった約30の酒蔵はわずか20年で半数以上が廃業。
川鶴酒造の6代目社長川人裕一郎さんは、東京農業大学醸造学科を卒業後アサヒビール広島支社で修行。 その後醸造研修所で2年間学び、全国の酒蔵の次世代と繋がりを築きます。
そして28歳となった1996年に帰蔵しますが、変りばえしない酒の味と酒蔵のスタイルがそこにありました。
交通網の近代化で、ローカル鉄道や連絡船などの衰退がクローズアップされてきたけど、地方経済は中央資本の進出で商店街は寂れ、色んな意味で地方色が色褪せてしまった・・・これからは郷土文化の柱となる酒蔵に、もっと引っ張って欲しいね!
裕一郎さんが蔵元を引き継いだのは2004年で35歳。 そこでようやく普通酒の酒造りから特定名称酒に、『品質重視』の酒造りへと方針転換します。
生産石数は1200石からさらに減少したものの、2010年には裕一郎さんはブランドをリニューアルし、大都市の地酒店へ自ら売り込みに回ります。
また同年、イチゴや桃、ココアと日本酒を合わせたリキュールや『炙りいりこ酒』などの新製品を、矢継ぎ早に投入します。
さらに2012年に入社した福岡美樹さんが、濁り酒でアルコール度数が6度の日本酒『 讃岐くらうでぃ 』を開発。 するとこれが大人気を博します。
白麹を使った酸味がたくさん造られる乳酸飲料のような味わいは、いまや大黒柱的存在となっています。
そして2016年には杜氏制から社員醸造制度への移行を断行。 藤岡美樹さんを醸造責任者に抜擢し、翌年鑑評会では見事金賞を受賞。 そしてさらに洗練された酒質に醸し上げていきます。
藤岡さんは今は長州酒造に移籍。 後を祐一郎さんが社員全員を引っ張り、力強い米の味わいを売りにして、大都市圏での増進と輸出の増加で、見事に復活を遂げます。
まとめ
いま『川鶴酒造』さんでは、6人で酒造りをしているそうです。 息を合わせ力を合わせ、ときに意見が違えばぶつけ合い、ワンチームで力を合わせ酒を醸しているとか。
そして酒造りは言うに及ばず、蔵の隣りの田んぼを使って社員全員での田植え、草刈り、収穫までの米作りを行って、もう20年以上経つそうです。
これまで多くのテロワール酒蔵を紹介してきましたが、社員醸造する酒蔵は必然的に、夏は米造りですね。
さらに、多くの酒米を使う日本酒造りは地元農業を支えます。 これからの課題は若い人の就農でしょうが、なんとお爺さんの後を継いで酒米造りをする高校生もいるそうです。
まさに新しい酒造り体制を目指して、ベテランも若手もフラットに引っ張る川人社長さんです。
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。