日本酒ファンの皆さん こんにちは!
今回は広島県は呉市、相原酒造さんの醸す『UGO IRIS』を紹介します。
『相原酒造』さんと言えば、4年ぶりに開催された『SAKE COMPETITION』で、ナント3部門でトップテンを果たした酒蔵さん。
広島吟醸酒を引っ張る『相原酒造』さんのメインブランドは『雨後の月』。 そして今回紹介するのは、新ブランドとなる『UGO』シリーズのお酒です。
さて『UGO IRIS』、一体どんな味わいなんでしょうか?
『UGO IRIS』は余韻にかけて果実の香りのような膨らみがいい!
仕込み水は、自然豊かな野呂山の超軟水を使用
『相原酒造』さんがあるのは、海上自衛隊基地や造船所群がある呉市街から離れた東方の仁方(にがた)町。
ここ仁方から三原までの土壌は花崗岩質なので、その伏流水は超軟水となります。 安芸津の偉人三浦仙三郎氏が、その水質を克服した『軟水醸造法』を確立したのは120年前。
町の南方には多島美の瀬戸内海が広がり、その北側は標高839mの野呂山があり、豊富で清らかな伏流水を仕込み水としています。
灘の北に位置する六甲山は931m。 呉の北に聳える野呂山は、瀬戸内2番目の高峰。ともに花崗岩質の構造ながら、灘の宮水は硬水で、こちらは超軟水… でも高峰ゆえ鉄砲水に注意だね。
《原料米》兵庫県産『山田錦』
《精米歩合》麹米50%、掛米60%
《酵母》UGO-1
《日本酒度》- 《酸度》-
《アルコール度》14度
《造り》 原酒
《お値段》720 ml 1870円
《製造》2023年3月
このお酒の酵母は『UGO-1』、9号系のようですが蔵内採取の酵母なんでしょうか?
酒米は最高峰の兵庫県産山田錦・特上米です。 とにかく相原酒造さんの酒米調達力は天下一品。 現在の取り扱い品種は17種類にも上るそうです。
そしてアルコール度は14度、とても飲みやすい度数に設定されて、するすると何杯も入ります。
『雨後の月』ブランドの特徴である『上品・きれい・透明感』はそのままに、飲み口は穏やか。
特徴的な山田錦の膨らみが余韻に広がり、スーッと綺麗に流れていきます。 上品な甘みと苦みのバランス、とても綺麗な味わいです。
『雨後の月』は、香り高くてあとは綺麗にキレるイメージだったけど、この『UGO-IRIS』は飲み飽きしない、余韻が綺麗にまとまった感じ、お洒落だね。
『UGO』シリーズ、5代目の自由な感性を生かした新作が早くも入賞!
『相原酒造』さんの造りの信条は ①全品を大吟醸造りで醸す ②全品を冷蔵保存する ③最上の原材料を使うこと、なんだそうです。
この『UGO』シリーズは、数年前から5代目蔵元の相原章吾さんが立ち上げたもの。 気づいたら一本空けてしまう様なお酒・日常的な食卓シーンをテーマにしたのだとか。
スタイリッシュなデザインを纏い、神秘的な雰囲気を醸していますね。
まだ全部は飲んでいませんがラインの特徴を以下に紹介しますので、ご参考になさってください。
銘柄 | 造り | 特徴 |
雨後の月 純米吟醸 | 山田錦 | 2023SAKE CONPETITION 純米吟醸第1位。華やかで爽やかな香り、程よいボリュームのある甘味と旨味、後味のキレ良さは食事との相性も抜群。 |
雨後の月 純米大吟醸 | 愛山50%精米 | 2023SAKE CONPETITION 純米大吟醸第2位。穏やかで上品な香りに、口当たり滑らかな甘みと適度な酸があります。 |
UGO IRIS | 山田錦:麹米50%、掛米60% | IRISは虹や虹彩・レンズの絞りなどを意味。青みがかった吟香に、余韻にかけて熟成した果実の香りのような膨らみがあります。 |
UGO AURORA | 麹米・山田錦 掛米・八反錦 | 2023SAKE CONPETITION 純米酒部門7位。瑞々しくて透明感のある飲み心地。飲んでいくごとに味が膨らんでいくような味わいです。 |
UGO NIMBUS | 千本錦60%精米 | 冬空の薄明光線・日暈(ひがさ)のような透明感をイメージしたお酒です。 |
『UGO IRIS』と今夜の肴
『UGO IRIS』は、メインブランド『雨後の月』と同様に、山田錦の香り高くほんのりと甘い味わいが特徴です。
余韻は甘味を残しつつも、シャープで綺麗な余韻が続くので飲み飽きせず、様々な料理にも合いますね。
旅先の旅館で、お造りに天ぷらの料理にお肉と、なんでもピッタリのお酒は、会話も弾んでいい宴となりました。
『相原酒造』の紹介
相原酒造さんは、広島県呉市仁方町で1875年(明治8年)に創業した酒蔵さん。
この町の酒蔵は現在2蔵。 明治期には9蔵もあったといいますから、西条のような恵まれた銘醸地であったことが伺えます。
さて、相原酒造さんの蔵元は4代目、相原準一郎さんです。 大学卒業後一旦は就職するも、父上亡き後の母上を助けるため、1980年蔵に戻られます。
蔵を継ぐ覚悟を決めたものの、膨大な借金を前に佇むばかり。 そんな状況でありながらも、新酒鑑評会で金賞受賞をしたのです。
そして幸か不幸か翌年も操業を続けると、なんとまた金賞受賞をします。 しかしその頃は日本酒低迷の時代で、金賞だけで借金が返済できる訳がありません。
そんな状況の中でも、純一郎さんは1982年には大吟醸酒を発売し、1984年には貯蔵用冷蔵庫を装備。 1988年には品質第一を徹底し、吟醸蔵へとなっています。
そしてここから、相原酒造さんの酒造りのストーリーが始まります。
安芸津町といえば、仁方から車で30分の距離。 ここに、素晴らしい感性を備えた若き蔵元杜氏がいました。
杜氏になって1年目で早くも金賞を受賞し、翌年も金賞。 その後も入賞・金賞を繰り返すも、残念ながら1998年に廃業となります。
そこで準一郎さんは早速彼をリクルート、1999年の秋から相原酒造で酒造りに加わってもらいます。 その人こそ、相原酒造の味わいを司る杜氏の堀本敦志さんです。
彼の造りは、普通酒だろうが出品酒だろうがすべて同じ手法。 酒米は小ロットの手洗いに、少ない量で麹米を盛る蓋麹などの丁寧な手仕事でした。
そんな高品質な酒造りに蔵元も呼応して、搾り工程の冷蔵化や麹室の増設、仕込みタンクの小型化と矢継ぎ早に設備を整えます。
一段と品質に磨きがかかりますが、2010年には麹臭のトラブルに見舞われます。 そこに堀本さんが体調を崩し、蔵元がピンチヒッターで麹造りに入ります。
どうやら原因らしき、麹の乾燥を探り当てます。 以前見学先の『亀の井酒造』で導入していた自動製麹機で、温度・湿度・風向きなどの調整をすることにしたのです。
麹臭は皆無となり、しかも破精落ちもなくなり、酵素力のある麹が安定的に作れるようになったのです。 粕歩合が減りお酒の量も増えて、経営的にも大正解の投資でした。
『すべての酒を吟醸酒と同じ造り』とする堀本杜氏の酒造り哲学と、適切な設備投資による蔵元の経営判断力のベクトルは、その後見事な冠を射止めます。
2013SAKE COMPETITION純米酒部門で見事1位を仕留め、世間の注目を集めたのです。
そして10年後、今度は5代目の若き蔵元を造り手に加えて、2023同コンペでは、3つの部門で1位、2位、7位と再び世間を感服させたのです。
まとめ
蔵の大看板『雨後の月』は、徳富蘆花の随筆『自然と人生』の短編題より、二代目相原格氏が命名。
『雨上がりの空に、冴え冴え月が周りを明るく照らす』とのイメージから、澄み切った酒を目指しているそうです。
ところで、『UGO IRIS』のラベル。 ダイヤモンドのようなお洒落なデザインは、傘を閉じたところなんだとか。 つまりは『雨後』・・・
もうすぐ梅雨明けなんでしょうか? 開けた日には盃に朝顔の花をラッパにして、『UGO』の香りと透明感のある余韻を楽しみたいですね。
SAKE COMPETITION2023 3つの部門で1位、2位、7位と見事な受賞、本当におめでとうございました!!
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。 今回も最後までお読みいただき有難うございました。