日本酒ファンの皆さんこんにちは!
さて今年の夏はエルニーニョとかで6月の末から全国的に高温となり、かってない猛暑となるかも知れません!
そこで今回はロックでもお燗でも美味しく飲める日本酒、英国人杜氏の研ぎ澄まされた感覚で醸す『玉川 Ice Breaker』を紹介します。
このお酒を醸すのは、フィリップ・ハーパーさん。 今や誰もが知る革命的なお酒を世に出し、近年の日本酒業界をぐいぐいと引っ張て来たリーダーの一人。
さて『玉川 Ice Breaker』、一体どんな味わいなんでしょうか?
『玉川 Ice Breaker』は氷でしめた清涼感とほんのりとした吟醸の旨みがイイ
濃密な旨みと、じんわりと湧き上る酸味のバランスが素晴らしい
銘柄の『玉川』は蔵の隣に流れる川上谷川という川が、玉砂利を敷き詰めたようにとても美しい川であったことからの命名だそうです。
その『玉川』の仕込み水は、裏山の『城山』の湧き水を使用しています。
酒米は食用の滋賀県産『日本晴れ』。 1970年代は作付面積1位でしたが、その座はコシヒカリに奪われ、今では滋賀、福井、山口などで栽培されています。
そう言えば、その昔山口の親父も棚田で日本晴れを作ってたのを追い出した。 腹空きの青春時代を支えてくれたお米が、今は飲んべ爺さんの舌を喜ばせてくれている! ああ、ありがたや、ゞ・・・
《原料米》滋賀県産『日本晴れ』
《精米歩合》60%
《酵母》-
《日本酒度》- 《酸度》-
《アルコール度》17~18度
《造り》純米吟醸/無濾過生原酒
《お値段》500 ml 1210円
《製造》2022年5月
『玉川 Ice Breaker』は、2009年に発売され、はや13年の歳月がたちました。 今年のお酒は酒販店さんからも『いい味に仕上がっていますよ』とのコメント。
まさに『日本酒ロック』の元祖、火付け役と言っていいでしょう。 玉川らしい濃厚な味わいは健在、でも定番の山廃よりは少し円やかでしょうか。
ロックでいただけば、思わず氷でしめた清涼感が後口を締め、ほんのりとした吟醸の旨みがでてきます。
伝統への回帰を果たし、今また熟成酒に取り組む
ハーパーさんの酒造りの特徴の一つ目は、時間軸と温度帯で変わる味の変化を日本酒の魅力ととらえ、『熟成に耐えうる丈夫な酒』を作り込んでいます。
そして2つ目は、味の軸を『旨み』においています。 つまり食中酒として幅広い料理と相性がよく、料理の魅力を引き出す力があります。
3つ目は、『燗酒』にむいていることです。 それも『飛び切り燗』(55度)を超えて、しっかり熱くして、冷めながら変化する味を楽しむことを推奨しています。
つまり要約すると無濾過の濃いお酒で、米をよく溶かして旨み成分を多くしたお酒と言えるでしょう。
幅広い温度帯で飲めるのは日本酒にしかない魅力だと、ハーパーさんは言っているね! また料理に合わせやすいのも日本酒の特徴。 暑い夏を乗り切るには、ロックでも燗酒でもかな?
『玉川 Ice Breaker』と今夜の肴
京丹後と言えば、何といっても蟹の本場。 でも夏は地魚中心の海鮮系でしょうか。
チョット話がそれますが、京都の誇る名料亭『和久傳』はこの久美浜が出身地。 恩返しの思いで10年の歳月をかけて『和久傳の森』が造られています。
そこには、安藤忠雄氏設計の美術館に安野光雅画伯の作品が並び、そして工房とレストラン&ショップがあります。
『和久傳』の『鯛の黒寿し』は、先の京都・奈良の酒旅で美味しくいただきましたが、酒蔵にお出かけの際は、お腹だけでなく目も楽しませてはいかがでしょうか?
さてグラスに注がれた『Ice Breaker』は、ほんのりイエローの色調を帯びているでしょうか。
今夜は氷を入れないで生のままの味わいを楽しみ、『玉川』らしい濃密さに合わせるため熱々の『餃子』でいただきました。
『木下酒造』の紹介
『木下酒造』さんがあるのは京都府の北部、夏は真っ青な海も冬はどんよりとした鉛色の空となる京丹後市久美浜にあります。
そんな鄙びた町のお酒が世にでるキッカケは、2006年に長きに勤めた杜氏さんの逝去。 また同時に副杜氏さんもお辞めになり、蔵は廃業の危機に立たされます。
そこに業者さんの紹介でやって来たのが、イギリス生まれのフィリップ・ハーパーさん。
名門オックスフォード大学を卒業後、日本の英語教師派遣プログラムで1988年に来日しました。 ところが滞在中に日本酒の魅力に憑りつかれ、日本酒の世界に入ることとなります。
まずは梅の宿酒造で蔵人として働き始めますが、就労ビザが下りず入管に何度も掛け合って、ようやく文化活動ビザがおります。
梅乃宿酒造では但馬流と南部流の造りの経験を積み、2001年には南部杜氏資格試験に合格。 業界初の外国人杜氏として歩み始め、2007年に木下酒造に杜氏として迎えられます。
蔵元から『新生玉川』の酒造りを任されますが、課題は『得意先の新規開拓』と『商品開発』という中小企業のもっともなテーマでした。
そこでハーパーさんは、江戸時代から建つ酒蔵を一目見て、建物に付着している自然の酵母を使う酒造りを決意します。
早速取り組んだのが、『生酛造り』と『自然仕込山廃』でした。 そして蔵人にも経験のない江戸時代の酒造りを再現した『タイムマシン』で世間をあっと言わせます。
もともと『酒風味のアイス』は人気商品でありましたが、夏に売れるお酒がありませんでした。 そこで夏用のお酒として開発されたのです。
そして、初年度にして全国新酒鑑評会で金賞を受賞し、なんと史上初の外国人杜氏受賞を果たしたのです。
また近年取り組むのが『熟成酒』で、2015年までに熟成用の冷蔵コンテナと冷蔵庫を設置しています。 もっともハーパーさんが進めるのは、常温など異なる温度帯での『たくましい熟成』です。
今は3年、5年ものが中心ですが、今後は10年ものの長期熟成に挑戦中です。 最初の師匠は但馬杜氏、深い旨みを持つ熟成向けの力強い酒を、ハーパーさんは受継いでいるのです。
酒蔵だけではなく、家庭内での『マイ熟成』も提唱しているね! 『金雀』や前回の『神亀』もそうだけど、新しいトレンドは本気度の『熟成』かもしれないな・・
まとめ
2009年に誕生した『玉川 Ice Breaker』は、ペンギン親子のデザインラベルで、ボトルは500mlという規格。 しかも英語文字!
そんな奇抜なデザインに驚かされ、誰もがリピした『 Ice Breaker』の味わいに酔い、今更ながら日本酒の伝統を問い直します。
『Ice Breaker』とは砕氷船のこと。 転じて緊張感をほぐし座を和ませるとの意。 熟成された力強い味わいがロックでも味が崩れないのは、英国人の中に流れるウィスキー文化を彷彿させます。
フィリップ・ハーパーさんがひたむきな情熱を傾けた日本酒、ライフワークと心に決めたその『JAPANISE SAKE』は、今一筋の道を刻んでいます。
それは細くも長く、いまや多くの人を招き入れ、国や人種の垣根を超えた太い道を成しつつあるのでしょうか。
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。 今回も最後までお読みいただきありがとうございます。