日本酒フアンの皆様こんにちは!
ここのところ既存のお酒飲みが多くて、なかなか新規飲みが少なかったのでブログ投稿が少なくなってしまいました。
さて今回は、巷で大人気の栃木県さくら市の『仙禽』を紹介します。
2月に飲んだ『モダン仙禽無垢』は多忙で掲載できなかったので、今回花見酒で飲んだ『仙禽さくら OHANAMI』と合わせて紹介します。
さて『モダン仙禽無垢』『仙禽 さくら OHANAMI』、一体どんな味わいなんでしょうか?
『モダン仙禽 無垢』は、ますます綺麗な酸味に進化している
アル14度で飲みやすく、誰にも親しまれる洗練された味わい
『せんきん』の仕込み水は、近くを流れる鬼怒川水系の地下水が使われています。 水質は超軟水なんだそうです。
『ドメーヌさくら』とはさくら市産米のこと。 同じ水脈で作付けされたお米だけを原料米とする拘りを表現しているそうです。
酒米は『山田錦』ですが、意外と香りは控えめで味わいも爽やか。 ワインのようなフレッシュな味わいが、華やかな含み香とともに口中に広がります。
アルコール度は今はやりの14度で、とても飲みやすく、甘酸っぱくもスッキリとしたやや辛口の味わいでキレよく仕上がっています。
《原料米》ドメーヌさくら『山田錦』100%
《精米歩合》麹米50%、掛米60%
《酵母》-
《日本酒度》- 《酸度》-
《アルコール度》14度
《造り》無濾過生原酒
《お値段》720 ml 1600円
《製造》2022年1月
久しぶりの仙禽だったけど、クリーンで優しくなり、新政と似通った味わいになっているね。 生酛・木桶造りではなくとも、優しい味わいだな。 いや、参った!
『仙禽 さくら OHANAMI』は春の限定商品、口中に柔らかな酸味が広がる
さて、こちらの『仙禽 さくら OHANAMI』のスペックは、造りがうす濁りとなっている以外は『モダン仙禽 無垢』と同じです。
瓶底にうっすらと滓がありますが、栓が飛ぶほどではありません。 せんきんのマークをあしらった王冠がオシャレですね!
《原料米》ドメーヌさくら『山田錦』100%
《精米歩合》麹米50%、掛米60%
《酵母》-
《日本酒度》- 《酸度》-
《アルコール度》14度
《造り》無濾過生原酒、うすにごり
《お値段》1800 ml 3600円
《製造》2022年3月
季節限定商品としては一番最後にラインナップした『さくら OHANAMI』ですが、冬の『雪だるま』が活性濁りならば、こちらはうす濁り。
桜のように軽やかな仕上がり、まるで摘みたての果実のようです。 爽快な酸味が口中に広がり、うすにごりのやわらかい甘みとキレの苦味が抜群のバランスですね。
春はうす濁りの季節なのか泡っぽい酒に飽きてきてたけど、このお酒はスッキリ酸味。 さすが『仙禽』だね、やわらかい甘みとすこしの苦味が旨く調和してる!
『仙禽』は4つのシリーズでブランド価値向上をめざす
仙禽は『モダン仙禽』『クラシック仙禽』『仙禽ナチュール』『プレミアム仙禽』の4つのシリーズで展開されており、ここでは概略を紹介しておきます。
なお酒米は先にも紹介しましたが、地元さくら市産の『亀の尾(金)』『雄町(銀)』『山田錦(無垢)』が使われています。
中でも『亀の尾』は仙禽を代表する酒米となっており、全国新酒鑑評会で金賞を受賞しています。
シリーズ名 | 特 徴 |
モダン仙禽 | モダンシリーズは速醸酒母での造りで、リンゴ酸の甘酸溢れるジューシー感が特徴でエレガントな味わい。 |
クラシック仙禽 | クラシックシリーズは生酛酒母・木桶仕込みの造り。 生酛による乳酸が奥行・味幅を表現しつつ、ライトでスマートな味わいです。 |
仙禽ナチュール | ナチュールシリーズは無農薬米、生酛酒母、酵母無添加、木桶仕込みの古典回帰の造り。 毎回仕上がりが異なる魅力があり、90%精米のワイルドな酸味が特徴。 |
プレミアム仙禽 | 精米歩合20%の『仙禽醸』はブレンド酒で、SAKE COPRTITION2018のプレミア酒部門1位となるなど頂点を極めている。『仙禽一肇』は山田錦で精米歩合35%。 |
『モダン仙禽 無垢』『仙禽 さくら OHANAMI』と今夜の肴
栃木県さくら市は、氏家町と喜連川町が合併してできた市です。 『さくら』の市名は市内に多くの桜名所があり、市民に桜が親しまれてきたことから選定されたのだとか。
市内唯一の酒蔵である『せんきん』さんですが、その桜へのひとしおな思いで『仙禽 さくら OHANAMI』と命名されたのでしょうか?
さて透明なラベルにパステルで描かれた桜の花びらは、うす濁りの液体に優しく溶け込んでいますね!
海のないさくら市ですが、夏はアユがよく取れるそうです。 でも今夜はなぜか北海道の氷下魚。 優しい甘みの味が、せんきんの甘酸っぱさとよくマッチしています。
『株式会社せんきん』の紹介
栃木県さくら市(旧氏家町)にある『せんきん』、11代目蔵元を担う薄井一樹さんは1980年生まれ。
大学では経営学を学ぶも意に合わず中退し、世界一の称号を獲得した田崎氏が主宰する日本ソムリエスクールに入学します。
そして卒業後は同校で講師を務めていましたが、ある時ソムリエの先輩に、実家の酒を持参しながらある天ぷら屋に連れられて行きます。
そこで店主に、薄利多売の蔵酒と『飛露喜』の飲み比べを進められ、目から鱗の日本酒に打ちのめされると同時に、実家の酒造りの未来に暗澹としたのです。
2004年、一樹さんは経営再建のために実家の『仙禽酒造』に入社します。 早速新たな酒の開発に着手しますが、そのコンセプトは『酸味』。
ソムリエである一樹さんは、和食、洋食、中華なんでもありの日本の食文化に合う日本酒には、従来タブー視されてきた『酸味』が必要だと考えていました。
そこで、一樹さんはソムリエの利き酒能力を活かして酒質を設計し、先代から働く従業員は造りの試行を重ねていきます。
幸運だったのは、流行の日本酒を摸倣しなかったこと。 2007年に甘酸っぱい味の日本酒開発に成功し、若年層や女性に人気が広がります。
いやーお酒の設計図を書いて利酒する力は、さすがソムリエ蔵元ならではだね。 それにしても、その味わいを作り上げた蔵人も大したもんです!
ところが2008年、もっぱら普通酒と桶売りをしていた『仙禽酒造』は経営難で清算。
山梨で修行していた弟の真人さんを杜氏に向かえ、兄弟2人で『株式会社せんきん』で再スタートをきり、新たなブランディング構築へと進みます。
まずは、2011年にドメーヌ化に取り組み2014年には完結。 契約農家さんからは、亀ノ尾をはじめ山田錦や雄町などを作って貰い、最近はオーガニック米を増やしています。
また、造りの変革でも酵母無添加で自然酵母の発酵力を活かした『生酛づくり』を敢行、そして木桶で仕込んでいます。
酒造りの特徴が伝統製法・古典への回帰ならば、一方販売は特約店向けに特化して、宣伝も講演会のみと専ら消費者の口コミでファンを引き込んでいきます。
目指す経営スタイルは、生産量拡大ではなく希少価値を重視したオンリーワン戦略。 そして世界を見据えたプレミア酒で勝負する上澄み戦略を展開しています。
まとめ
甘酸っぱい『仙禽』の味わいは、当初専門家や年配者から酷評されたそうですが、イベントでは女性から絶賛されたそうです。
その酸度の数値は2.0~2.3と高く、全国平均は1.38(純米酒:国税庁全国市販酒類調査R2年度)。
日本酒度(甘辛度)に至っては-2~-3で、全国平均は+3.3ですから、甘酸っぱさが際立っていますね。
ソムリエの知見をもとに、敢えて料理との相性で切り込んだ一樹さんの逆張りはあたり、日本酒に親しんでこなかった層や外国人を見事に捉えています。
仙禽とは、仙界に住む鶴の別称なんだとか。 王冠やラベルにアイコン化された鶴は正にSAKEのシンボルと化して、世界へ向けて飛翔する予感がしますね。
それでは日本酒フアンの皆さん、今回はこれで失礼します。 最後までお読みいただきありがとうございました。