日本酒ファンの皆さんこんにちは!
今回は、山口県は周南市の『中島屋 純米吟醸』を紹介します。
周南市といえば創業200年を超える『原田』(はつもみじ)を以前紹介しましたが、こちらの『中島屋酒造場』さんも創業200年の古豪です。
さて『中島屋 純米吟醸』、一体どんな味わいなんでしょうか?
『中島屋 純米吟醸』は無濾過生の瑞々しい飲み口
山田錦らしい上品な吟醸香と滑らかな口当たりがいい
『中島屋酒造場』さんの酒蔵は、南に周南コンビナートの煙突を望む永源山の麓、神代川と富田川の合流地点にあります。
周南市最北部の鹿野町を源流とする錦川は、北へ大きく蛇行しながら岩国に下ります。 そちらは軟水となりますが、ひと山隔てた周南に下る富田川の水は中硬水となります。
そんな地理的構造にある中島屋酒造場さんは良質な中硬水を仕込水として、力強い酒質を生み出しています。
《原料米》山口県産『山田錦』100%
《精米歩合》50%
《酵母》-
《日本酒度》-2 《酸度》1.5
《アルコール度》16度
《造り》無濾過生原酒/純米吟醸
《お値段》720 ml 1980円
《製造》2024年1月
このお酒の造りは無濾過生原酒。 そんなお酒ならではの豊かな旨みと、新酒らしいガス感が調和した瑞々しい飲み口となっています。
そして山田錦らしい上品な吟醸香と滑らかな口当たり、旨味と酸味のバランスが絶妙な逸品へと仕上がっています。
酒米は全国屈指の生産を誇る山口県産山田錦を使用
さて、酒米は山口県産山田錦を使用しています。 さすがに、本家の兵庫県は断トツの一位ですが、山口県の山田錦生産量は全国トップクラス。
今回は、その山田錦の最近の生産状況を詳しく見てみましょう。
令和5年度『酒造好適米の農産物検査数量』の分析をすれば、酒米生産は新型コロナ禍からの回復需要を見込んで、ようやく生産量が戻りつつあるのが見てとれます。
酒米銘柄 | 令和元年 | 令和5年 | R5シェア | R5/R1 |
山田錦 | 34,644 | 34,891 | 37.6% | +0.7% |
五百万石 | 19,767 | 17,332 | 18.7% | -12.3% |
美山錦 | 6,475 | 4,478 | 4.8% | -30.8% |
雄町 | 2,932 | 3,152 | 3.4% | +7.5% |
その他 | 32,620 | 32,834 | 35.4% | +0.7% |
合計 | 96,438 | 92,687 | 100.0% | -3.9% |
さらに銘柄別でみると、山田錦や雄町は微増で、百万石と美山錦の生産は減少しています。
山田錦生産県 | 令和元年 | 令和5年 | R5シェア | R5/R1 |
兵庫県 | 20,542 | 19,045 | 54.6% | -7.3% |
岡山県 | 2,926 | 3,480 | 10.0% | +18.9% |
山口県 | 2,337 | 2,433 | 7.0% | +2.4% |
福岡県 | 1,169 | 1,568 | 4.5% | +41.1% |
栃木県 | 770 | 1,477 | 4.2% | +91.8% |
その他 | 6,900 | 6,888 | 19.7% | -0.2% |
合計 | 34,644 | 34,891 | 100.0% | +0.7% |
さて、山田錦の生産地の推移を見てみますと、兵庫県の過半数シェアは変わらないものの上位他県の生産数量が増加しています。
岡山県、福岡県と栃木県は旭酒造さんの調達量増加に伴い生産量を伸ばしているのでしょうか。 山口県は生産銘柄の90%が山田錦なので、のびしろは少ないですね。
山口県では、山口市を筆頭に、下関市、萩市、柳井市、周南市などの中山間地で生産されているね。
『中島屋 純米吟醸』と今夜の肴
山口県は、荒海の日本海と波穏やかな瀬戸内海に囲まれた処。
アマダイ、瀬つきアジ、鱧、剣先イカ、マダコ、トラフグ、車エビ、ヒラメなど違った味わいの海の幸を数多く味わえます。
さて、今夜はフレッシュな純米吟醸の香りと和らかな旨味に合わせて、新鮮な魚を手巻き寿司で楽しみました。
『中島屋酒造場』の紹介
山口県周南市は、徳山市、新南陽市、熊毛町、鹿野町の2市2町が2003年に合併。 『中島屋酒造場』さんは、新南陽市の旧市街の北側にあります。
この辺りは中世豪族大内氏の家臣団が住んだ武家町。 そして酒蔵の主屋は、かっての賑わいを残す旧街道沿いにあります。
さて当蔵の創業は1823(文政6)年で、江戸時代末期に建てられた主屋のほか、明治から大正時代にかけて建てられた5棟からなります。
その内明治期に建てられた2棟を近年曳家移転し耐震強化を行い、麹室の改修や大型タンクはすべて廃棄して全量小仕込み化するなど、造りの現場が刷新されています。
さて、そんな歴史ある酒蔵を引っ張ってきたのは、11代目の中村佑治郎さん。 1996年に11代目として就任します。
まさに『十四代』を始めとして蔵元自らが酒造りをする時代をむかえ、佑治郎さんは蔵元杜氏として屋号を冠した『中島屋』を発売します。
しかしながら2000年前後は、イモ焼酎などの本格焼酎が大ブーム。 そこで2005年に、出荷量低下の打開策として『カネナカ』を発売。
この『カネナカ』は、伝統的な生酛造りを復活させた深みのある濃口の酒で、今どきのモダンフルーティとは違う逆張り商品で勝負に出ます。
さて、今12代目を継承したのは息子の中村信博さん。 東京農大醸造科にて酒造りを学び、酒田酒造で2年間修業を積んだ後2013年に帰郷しました。
入社後信博さんは、父・佑治郎さんと共にひたすら酒造りに没頭します。
そんな努力がIWC2019で『カネナカ純米酒』が金賞を射止め、さらには2020は最高賞のトロフィー、2021は古酒で地域トロフィー賞を受賞したのです。
こうして2020年父・中村佑治郎さんの後継として、信博さんは12代目当主に就任したのです。
まとめ
主力銘柄の『中島屋』『カネナカ』とも、いかにも古い歴史を物語る名称ですが、今回ラベルが刷新されました。
瀬戸内の空なのか、それとも風光明媚な砂浜から海へのグラデーションなのでしょうか?
そんな清々しい青色は、まさに現場も綺麗になり酒質の向上がみられる『中島屋酒造場』さんを、見事に象徴していますね。
それでは皆さん、今回はこれで失礼します。 今回も最後までお読みいただき有難うございます。